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キメラ  作者: 甲羅に籠る亀


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5/12

5話

 朝早くから街を出た俺は真っ直ぐに小川に向かった。あそこはスライムが生息しているからだ。


 小川までの間の途中で発見した依頼の植物系素材を採取しながら小川にたどり着いた。


 「今日も居るな。けど、あれは水を飲みに来たのか?」


 小川の近くには今日もスライムがそこそこ居たのだが、今は小川に水を飲みに来た大鼠が1匹だけいた。


 大鼠がいるのは俺から見て小川の対岸だ。


 小川を通らないといけない。のだが、俺のスキル【無手剛体】の効果で上がった身体能力なら飛び越える事だって出来ると思う。


 「やってみるか。」


 ストレッチをしながら大鼠を観察する。


 俺に大鼠だって気が付いている。


 それなのに大鼠は呑気に小川の水を飲んでいて逃げ出す気配すらない。


 大鼠は俺が小川を越えて向かって来るなんて思ってもいないのだろう。


 きっと俺が小川を飛び越えてやって来れば驚いてリアクションをするはず。


 驚いて動きを止めている内に攻撃を仕掛ければ攻撃だって命中すると思う。


 「さてと、準備は出来た。やりますか!」


 ストレッチが終わって温まった肉体の力を余さずに使うことを意識して駆け出すと、俺は小川の縁の手前で地面を蹴った。


 「とッ!逃がさない!!」


 案の定、大鼠は俺が小川を飛び越えてきた事に驚いたリアクションを見せて動きを止めていたが、それもすぐに止めて尻尾を巻いて逃げ出そうとした。


 そんな大鼠に一気に接近して近寄ると、俺は全力でサッカーボールを蹴るかの様に大鼠を蹴り上げた。


 大鼠を蹴った足から骨が折れて内臓が潰れたのではないかという感触を感じる中で、地面を転がっていく大鼠に向かって駆け出した。


 「まだ生きてるけど、これはもうダメだな。」


 ギリギリのところで生きている状態の大鼠の首を掴んで全力で握る。骨が折れる音がしたのでトドメを刺しただろう。


 「これで大鼠は倒せた。さて、どうするか……いや、どうするもないよな。」


 俺は両手をスライムの手に変えて両腕を使って大鼠の死骸を包み込んで消化していく。


 スライムを使った消化は味覚がないので味がしないのが幸いだな。これで味なんてしたら大変な事になっていた。


 時間が掛かったが大鼠の捕食に成功した。


 本当に朝の時間帯で良かった。


 これが他にも冒険者がいる様な時間帯ならスライムの手を使って大鼠を捕食する姿を見られてしまったかもしれない。


 とりあえずこれで大鼠の捕食は終わった。


 大鼠を捕食して得られた力は大鼠への変化時は病気耐性、気配の察知能力、あと何故か学習能力が高くなる様だ。


 「病気とか、気配察知は分かるけど学習能力が高くなるのは不思議だな。まあ、あれだな。体の一部だけでも変えてみるか。」


 俺は大鼠に変異する。人間の姿は変わらずに俺の遺伝子か何かに追加する様に大鼠の要素がプラスされた。


 これで大鼠から得られる要素を得られただろうか?【捕食変異】スキルの情報通りならなっているはずだ。


 試してみたい事があるので大鼠+状態のままでスライム化は出来るだろうか?


 試してみた。結果としては出来るけど【捕食変異】を制御するのが大変だった。


 でも2つ同時に変異するのは出来る。あとは2つ同時に変異する時間を延ばすだけだ。


 今だと5分も待たずに両方の変異が解けてしまうだろう。もっと時間を延ばしたい。長時間の維持をする練習をすればいいだろう。


 それに長時間【捕食変異】での変異もそこまで長く持たないと思う。


 外見は変わっていないが、今も大鼠で変異をしているけど、この変異をどれだけ持たせられるのかを試すべきだ。


 「戻るか。」


 小川をジャンプして戻った。


 若干だけど身体能力が上がっているのは変異しているからだろうか?


 気にしない程度にしか上がっていない身体能力だったし、俺はスライムを探しながら植物系素材の採取を行なっていく。


 感覚的に変異を維持して30分も経っていないくらいだろうか、大鼠への変異が途切れてしまった。


 「スキルを使い始めて2日目で持った方なのかな?スライム討伐頑張ろう。」


 変異の維持を意識していて集中力も落ちていたから、ここからは集中してやって行こう。


 俺は変異が切れる前に狙っていたスライムの元まで駆け出した。


 手の指を揃えてスライムの中に突き入れてスライム核を引き抜いた。


 いつも通りのスライムの倒し方でスライムを倒してスライム核を袋の中に入れる。


 スライム核のなくなったスライムの残骸。スライムの中身であるスライムゼリーをスライムの手に変えた手を使って捕食して綺麗にスライムの皮を残して食べていく。


 スライムゼリーは俺の体を作る栄養やエネルギーに変わり【栄養貯蓄】に貯まることだろう。


 スライムゼリーが一切付いていないスライムの皮を折り畳んで背負い袋の中に入れ、スライムや採取依頼の植物系素材を探しに向かう。


 大鼠の要素をプラスした変異を維持しなくて済んだから意識が他に向かう様になった。


 スライム核を引き抜いて、スライムゼリーを捕食し、スライムの皮を回収しては探索し、採取依頼の植物系素材を採取しては移動する。


 太陽も上がってお昼くらいになっても俺の動きは変わらない。


 スライムゼリーを捕食したのが昼ごはんの代わりになっているからこそ、休憩するくらいで動きは止まらず。


 1時間に5〜10分ぐらい休憩を取るだけで常に動き続けた。


 「どうする?」


 小川付近を移動している時にこちら側の川で水を飲む大鼠の姿を確認した。


 こちら側で大鼠を見ることはあった。距離が離れていたりして戦わなかったが。


 「大鼠を倒してから帰る……うん、そうしよう。」


 俺は水を飲み終わって小川から離れようとする大鼠を逃がさない様に駆け出した。


 大鼠は走り寄ってきた俺に気が付いて逃げ出さずに向かってきた。


 目で追える動きを大鼠はしている。


 大鼠の狙いは俺の足の脛を噛み付くことだと思う。


 予想を付けて大鼠が噛み付きやすい様に足を出したのと同時に大鼠は予想通りに噛み付いてこようとした。


 狙わせた足を引く。


 大鼠は噛み付きを外してバランスを崩す。


 チャンスだ。


 バランスを崩した大鼠の頭部を狙って全力で蹴りを入れる。


 骨の折れる音が消えながら大鼠は蹴り飛ばされて動かなくなる。


 大鼠を倒した俺は大鼠を背負い袋の中にあった大きな袋の中に入れて街に帰る事にした。


 それからは何事もなく冒険者ギルドで今回の依頼や手に入れた素材を売却して宿屋に帰った。

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