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キメラ  作者: 甲羅に籠る亀


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3/12

3話

 まずは手に取ったスライムの核から口に入れる。


 スライム核の表面は飴の様に固かく、表面が割れると内部の組織がドロッと口の中に広がった。


 土臭い様な、泥臭い様な臭いが口の中に広がる。


 吐き気を我慢して吐きそうになりながらも俺はスライム核を飲み込んだ。


 「お、美味しくない……。気持ち悪い吐きそう。」


 背負い袋の中の水筒を取り出して口の中を濯いでから水を飲んだ。


 食道を通して胃の中のスライム核から臭いが出てくる感じがして気持ち悪くて仕方がないが、俺は残りのスライムゼリーとスライムゼリーを包み込んでいたスライムの皮を食べていく。


 手を突っ込んだ穴からスライムゼリーを手で掬って口の中に入れて飲み干す。


 口に含めばスライムゼリーも生臭い臭いがする。


 口に入れなければ臭いなんてそこまでしないのに、なんで口に入れればこんなに臭いのだろうか?


 吐き気を我慢しながらようやく半分近く食べ終わると、スライムの皮を手に持って近くの小川でスライムの皮を洗うと口に入れる。


 「これが一番マシだ。普通に食える。」


 スライムの皮はクラゲのようなコリコリとした食感がする。


 洗い切れていないスライムゼリーの臭いが残っているが、それでもスライムの皮は食べやすい。


 ようやくスライムの皮を食べ切った時に発動したのか【捕食変異】のスキルが反応した。


 「こうすれば良いんだな。」


 俺は手を見ながら変異しろと念じた。


 すると、手の形はそのままに手はスライムへと変化した。


 「おお、こんな風に変わるんだ。」


 関節もないスライムの手はグネグネと指を動かせるし、手を大きく広げる様にイメージすれば手が何倍も大きく変化した。


 「それにこれは凄いぞ。」


 普通の人間が動かせない様な動かし方をスライムの手はしているのだが、俺の思考を補助しているのが俺の手の甲にあるスライム核だ。


 もう一つ分思考が増えた様な感じがして、頭が一つ増えたみたいだ。


 スライムの手を動かす分の思考を手の甲のスライム核が大半を行なってくれているからこそ動かせるのだろう。


 「でもこれならもしかしたら……試してみるか。」


 スライムの手を広げて、まだ残っているスライムゼリーを包み込んだ。


 スライムの手で覆い隠したスライムゼリーを捕食するイメージで握り込んでいく。


 消化スピードはそこまで早くはないがそれでも俺が直接嫌々食べるくらいのスピードくらいには早い。


 残っていたスライムゼリーはスライムの手に吸収されてしまった。


 しかもここで【栄養貯蓄】も発動した様でスライムの手で吸収したスライムゼリーは栄養になったみたいだ。


 「直接俺が食べなくてもこのスライムの手で食べればスキルは発動するんじゃないか?」


 臭いスライムを食べた事でこれからは俺が直接食べなくても良くなったかもしれない。


 頑張って食べてよかった。そう思いながら俺は依頼の為にスライムとヒール草を探し始める。


 小川の近くにそれなりにスライムはいる。


 探すと言っても移動するだけでスライムは見つかるからこそ、スライムの元に向かうまでの間にヒール草がないかを見ながら歩いた。


 「気が付いてるっぽいな。」


 狙っていたスライムは俺のことを気付いている様にプルプルと震えている。


 先手を取ってスライムの核を抜き取って倒したかったところだが、今回はそうは行かなさそうだ。


 攻撃を誘発させてから反撃でスライム核を抜き取ることにした。


 出来るだけ無防備に見える様にスライムに近寄って行く。


 スライムがグッと力を溜めるみたいな行動を取ると、俺に向かって飛び跳ねてきた。


 肉体が強化される【無手剛体】は視力も強化されているのか、俺に向かって飛び跳ねてきたスライムがゆっくりと跳んでいる様に見える。


 これ行けるんじゃ。


 そう思った俺は空中で跳んで向かって来ているスライムの横を通り過ぎながら、そのスライムの体に手を突っ込んでスライム核を引き抜いてしまえた。


 「おお!漫画みたいなことが出来たよ!」


 背後に回った暗殺者が心臓を抜き取るかの様なことが出来たことに興奮しながら地面にドシャと落ちたスライムの方を確認する。


 綺麗にスライム核を抜き取った穴からスライムゼリーを流しながらスライムは身動き一つしなかった。


 スライムが死んでいることを確認した俺はスライム核を袋に入れて考える。


 「スライムも売れるんだよなあ。」


 少しでもお金が欲しい。スライムゼリーもスライムの皮も冒険者ギルドで買取りしてくれる素材だ。


 これから倒したスライムを背負って活動するのはどうだろうか。


 かなり重たい荷物を背負って行動することになるだろうことを考えると悩んでしまう。


 「スライムゼリーは捨てていくか。」


 スライムの皮だけなら荷物としてもそこまでの重さはない。


 それに倒したスライムは綺麗な倒し方をしたからスライムの皮としたら高値で売れる気がする。


 俺は片手サイズの穴が空いたスライムの中からスライムゼリーを出し切ると、スライムの皮を丁寧に折り畳んで背負い袋の中から取り出した袋の中に仕舞った。


 それかれ俺は小川付近を歩きながら見つけたスライムから核を引き抜いて倒し、ヒール草を見つけたら採取すると言う行動を繰り返した。


 「流石にもう帰らないとな。」


 空にあった太陽がだいぶ傾いてきた。


 街の門までそれなりに距離があるし、なるべく早く移動した方がいいだろう。


 早足で街を目指しながら移動して行き、門の前で並ぶ頃には空がオレンジ色になって来ていた。


 俺は門を通ったら真っ直ぐに冒険者ギルドに向かった。


 夕方の時間帯は多くの冒険者が街に帰ってくる時間帯だからか混んでいた。


 冒険者ギルドの解体場に向かう。


 そこも混んでいたが列に並びながら背負い袋から依頼書と一緒に今回手に入れた素材を取り出せる様にしておいた。


 「次の方どうぞー。」


 まずは依頼書をテーブルに置いた。


 解体場の受付をしている男性職員が依頼書を確認している間に俺は背負い袋の中のスライム核とヒール草の束に他にも手に入れた植物素材やスライムの皮をテーブルに置いた。


 「これで全部ですか?」


 「はい。」


 「それでは番号を呼ばれたら受付に来てください。」


 俺は番号の書かれた木札を受け取ると解体場の受付から離れて壁際の空いている椅子に座って番号が呼ばれるまでの間、時間を潰す為に今日の活動のことを思い浮かべながら過ごしていた。

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