2話
「これ全部で銀貨5枚だ。」
「銀貨5枚ですか……。」
悩む。ここで銀貨5枚出したら残りの銀貨は3枚だ。防具を買うのは難しい。悩む、けど必要になる道具だ。
「分かりました。買います。」
冒険者道具の初心者セットを購入することに決めた俺は銀貨5枚を支払うと、購入した様々な道具の入った背負い袋を背負って道具屋を出た。
あと1泊泊まったら銀貨1枚になる。別のもっと安い大部屋の宿屋にするしかない。大部屋の宿屋は多くの冒険者が泊まることの多い宿屋だが、そんな安い宿屋だからこそ周りの冒険者を警戒しないといけなくて休まらないだろう。
少しでもお金が欲しいので冒険者ギルドで何かしらの依頼を受けられないか確認することにした。
冒険者ギルドにはまだ冒険者になる為の登録受付に列が並んでいるのが確認できるが、依頼一覧が貼ってあるボードの前の人集りは少し少なくなっていた。
ボードが見える位置まで移動した俺はボードの中から俺の冒険者ランクであるFランクの依頼を確認する。
Fランクの依頼は街中での依頼の方が多いが、街の外に出る依頼も少ないがある様だ。
安全性を考えるのなら街中の依頼を受けるべきなのだろうが、俺のスキルである【捕食変異】を使える様にする為にも街の外に出る依頼を受けるべきだろう。
依頼の中で街の外に出る依頼の中でも弱いモンスターであるスライム討伐の依頼とヒール草の採取の依頼を受けることにした。
依頼ボードから依頼紙を取った俺は依頼受付をする受付に向かった。
朝の時間帯から少しずれている事もあって少し並んで俺の番がやってくる。
「この依頼を受けたいです。」
「Fランク、初心者さんですか。スライム討伐とヒール草の採取ですね。スライムの討伐証明はスライムの核です。ヒール草は10本1束からです。構わないですか?」
「はい、分かりました。」
依頼を受理して貰うと、依頼を受けたという証明書を受け取った。その後に初心者だからか確認としてスライムの核とヒール草の見本を見せて貰うことになった。
スライムの核は汚れを吸い取る事もあって掃除道具としても使われるし、ヒール草も民間でちょっとした薬としても使わられる。
孤児院でもスライム核もヒール草も使われているので知っているが、ここは一応確認だけしておく事にした。
スライム核は赤い色をした球体でヒール草は葉っぱがハートの形をしており、どちらもこれまでの生活で何度も見ている見慣れた物だ。
「それではお気を付けて。」
「はい。」
俺は冒険者ギルドを出ると真っ直ぐに街の外に向かい、街を出る際に冒険者ギルドカードを門番の兵士に見せてから門を出る。
「スライムを探しながらヒール草も探すか。街から離れない様にしないとな。」
なるべく街の近くで活動しようと考えながら街の周りの草原を探索する。
草原には俺と同じ冒険者だろう姿が見えるが、街から離れた位置の冒険者たちは同じFランク依頼のラビットか大鼠の討伐でも受けているのではないかと思う。
遠目からだが戦っている姿が見える。でもラビットなのか大鼠なのかまでは確認は出来なかった。
周りの事は置いておいて俺は俺の依頼のことを考えてスライムとヒール草を探そう。
「あった!」
街の門から離れた壁の外周付近にハートの形をした草であるヒール草が数本密集する様にして生えていた。
1束分のヒール草ではないが幸先が良いな、と思いながら早速背負い袋の中から取り出した採取道具で採取して採取用の袋の中に縛って入れた。
それから1束分のヒール草が溜まるまでスライムとは遭遇しなかったが、ようやくスライムと遭遇することになる。
街から少し離れた位置にある小川付近にプルプルと震えている水饅頭型の青色に核が赤いスライムだ。
孤児院時代に冒険者になった孤児の先輩冒険者からスライムの話を聞いている。
スライムの攻撃手段は体当たりと顔を覆う攻撃だ。体当たりも成人したてくらいの年齢の女性に殴られるくらいには強いし、なにより顔を覆って窒息死させてくるのは凶悪だ。
でも余程の油断でもしない限りは窒息死までは滅多にないらしいので、俺も油断せずにスライムの核を引き抜いて殺すことにした。
スライムがこちらに気が付いているのかいないのか分からないが、俺は一気に全速力でスライムに駆け寄った。
「えっ……あ、喰らえ!」
全力で走って気が付いた。俺が思ったよりも早くスライムとの距離を縮めたことに驚きを感じながらも、俺はスライムの体内に手を突っ込んでそのままスライム核を手を引き抜いて取り出した。
「か、簡単に倒せた……。」
苦戦はしないだろうとは思っていたが、スライムの体内は柔らかくてまるでプリンみたいに簡単に貫けたのには唖然とした。
「これってやっぱりそう言うこと?」
【無手剛体】の効果により肉体の性能が段違いに上がっている。そのお陰で走るのも、スライムの体内に手が簡単に入ったんだろう。
「武器がなくても余裕なんじゃないか?これ……。」
ここまで身体能力が高まっているのなら、モンスターの討伐の依頼を多く受けてお金の心配をしないで済むかもしれない。
「これを、どうするかだよ。どうしたもんかなぁ。」
手元にあるスライム核と核を失ったスライムゼリーが目の前にある。
依頼の達成の条件にあるスライム核をここで【捕食変異】の為に食べるのか、それとも依頼達成の為に使うのかだ。
「ん〜〜〜……やっぱり、ここは食べよう。」
どの様に身体を変異させるのかも気になるし、何よりまだスライムは距離があるがちらほらと姿が見える。
ここはスキルを確かめる為にもスライムを食べる事にした。
「でも、これを全部食べるのはキツイだろ。」
【捕食変異】の発動条件は捕食する対象の重要部位と肉体の半分以上の捕食で、ようやく肉体の変異が可能になる。
目の前のスライムは50センチくらいはある。これを全部食べるのは時間が掛かる。更に条件の分を食べ終える頃には満腹感で凄いことになりそうだ。
「食べよう。」
【捕食変異】以外にも食べる系のスキルである【栄養貯蓄】もある。【栄養貯蓄】は栄養やエネルギーを蓄えるだけじゃなくて消化機能を高める効果も含まれているからキツイだろうが、それでも食べ切れるはずだ。




