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キメラ  作者: 甲羅に籠る亀


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10/12

10話

 ラビットの聴覚、ウルフの嗅覚と交互に強化しながら森の中を進んでいく。


 「あ、またウルフか?」


 こちらに近寄って来ているモンスターの群れ。そのモンスターの臭いはウルフと酷似している臭いがしている。


 臭いがしている数は全部で6ヶ所あるから6匹のウルフがこちらに来ているのだろう。


 今回のウルフは俺を囲んで来ている訳ではない様だ。


 一方向から集団で襲いに来るのだと思われるウルフの群れに対処する為に全力で戦える様に準備しておこう。


 ガサガサガサと茂みから音がして一気にウルフの群れが集団で飛び出て来た。


 俺は瞬時にスライム、ラビット、ウルフの要素を変異する。


 足、腕、首、胴体とそれぞれが別々の場所を狙って攻撃を仕掛けてくるウルフの群れ。


 聴覚と嗅覚で感じ取ったウルフの位置を元にして俺はウルフの群れの迎撃を行なっていく。


 足を狙うウルフたちを蹴りを入れて拳を振るいながら、身体の体勢を変えて迫るウルフたちを手や身体を使って受け流し捌いていった。


 それでもウルフの爪が身体に当たって皮膚に傷が付いてしまうが、そんな痛みに我慢しながら拳や手刀でウルフを迎撃する。


 拳や足での迎撃にウルフは数を減らしながらも、1匹のウルフが俺にのしかかろうとして来た。


 飛び掛かって来るウルフの腹側へと身体を滑り込ませてウルフの胸の毛皮を掴んで別のウルフに投げ付ける。


 今の生きているウルフは3匹だけ。


 俺はこちらを警戒しているウルフを無視して、先ほど投げ付けたダメージですぐには動けない2匹のウルフから仕留めに掛かった。


 下から掬い上げる様な蹴りをウルフの顎に打ち付けて首の骨をへし折ると、蹴りで使った足を地面に振り下ろした勢いを乗せて拳を振り下ろして地面に転がって起き上がろうとしている最中のウルフの頭部を砕く。


 これで残りは1匹のウルフだけ。


 そう思いウルフを見てみたらウルフは尻尾を股に挟んで怯えている様な仕草で逃げ出そうとしていた。


 「逃すか!」


 咄嗟に地面に落ちていた石ころを拾った俺は全力で逃げ出したウルフに投擲。


 「キャイン!?」


 石ころが命中して悲鳴を上げるウルフを追い掛けて行く。


 当たりどころが良かったからか、石ころを頭部に受けてふらふらしているウルフの元まで追い付いた俺はウルフに蹴りを叩き込んだ。


 木に叩き付けられるウルフはまだ生きている様だが、こんな状態のウルフがどうにか出来る訳もなく倒されるのだった。


 合計6匹のウルフの群れを倒した俺は傷付いた箇所をスライムに変えてから下級のポーションで傷を癒していく。


 「治ったな。」


 スライムからの変異を解いて先ほど傷を負っていた場所を見ればツルツルで怪我をした様な痕跡は一切見受けられない。


 傷の回復に使った栄養やエネルギーの回復の為にも倒したばかりのウルフの群れの捕食を行なっていく。


 6匹のウルフの捕食を終わらせればまた森の街道を休まずに歩いて行くことになる。


 歩きながら俺は先ほどのウルフの群れとの戦闘の反省をする。


 あの時はその場に止まってウルフの群れの迎撃を行なっていたが、そうじゃなくて動きながら迎撃をしていれば怪我をせずにウルフの群れを倒せていたのではないかと今は思ってしまう。


 それにその場に留まるとしても地面を蹴って土を浴びせるなりすれば、ウルフの群れの勢いが落ちてもっと対処は楽だったかもしれない。


 反省会をしながら歩いていると前方の森の茂みから街道に出て来るモンスターが現れた。


 鹿のモンスターの角鹿と言う名前のモンスターだ。


 確か情報では角がかなりの硬さで革鎧くらいなら角に貫かれるらしい。


 なかなか危険なモンスターである角鹿なのだが、街道の真ん中で止まって俺の方を警戒する様に見つめている。


 来るのか!と警戒しているのだがどうもこちらに向かって来る気配がない。


 なんなんだと思いながら、俺は他に角鹿以外のモンスターが迫って来ている可能性もあるからとラビットの聴覚を使ったり、ウルフの嗅覚を使ったりしているがモンスターは目の前の角鹿だけしかいない。


 向かって来ないなら見逃すのも手だろうがまだ俺は角鹿を捕食したことがない。


 ここで角鹿を捕食してあの角を武器として使える様にしたい。角鹿を捕食すれば刺突武器が手に入る。


 とりあえず向かって来ないのならと俺の方から角鹿に向かって行くことにした。


 足をラビットに変異させて一気に距離を詰めて行く俺に角鹿は一瞬驚いた顔をしてから角を俺に向けて駆け出してきた。


 あの角に貫かれたらかなり痛いだろうし、今の手持ちのポーションだと傷を治し切れないだろう。


 いや、スライムに変異すればもしかしたら治るかもしれないが。スライムにはそれだけのポテンシャルがある。


 実際に戦ったらスライムなんてあんなに弱いのに。


 今は角鹿だ。


 タイミングを測る。角鹿の角を向けた突進を避ける為に。


 まだ。まだ。まだ。まだ。まだ。まだ。


 ギリギリまで待って。


 「いまだ!」


 俺は角鹿の角が当たるギリギリのところまで待ってからジャンプする。


 しかもその際に角鹿の角を掴み取ってジャンプした俺は身体を回転させながら角鹿の体の上に跨った。


 「このまま締め殺す!」


 俺は角鹿が首を振って自慢の角で自身の上に乗る俺を攻撃しない様に首を固定させながら力の限り締め上げていく。


 首からミシミシと音がしてパキッバギンッと音がした時に角鹿から力が抜けて行くのを感じ取る。


 首の骨をへし折っても呼吸はまだ続いている角鹿の呼吸を完全に止まるまで首を締め上げ続けた。


 「呼吸もしてない。ふぅ、倒した。」


 角鹿に勝利した俺は捕食を開始する。


 周囲には人もモンスターも居ない中でスライムへと変えた手で俺よりも巨体の角鹿を覆って捕食していく。


 じわりじわりとスライムの手で捕食されていく角鹿の状態に目を背けながら骨まで含めて完全に消化が終わるまで30分以上もの時間が掛かった。


 「ギリギリだったな。」


 ラビットの聴覚で捉えているのだがこちらに向かって来ている集団が森の街道の先から来ている。


 ハマルーンから俺が出て来た街マナルに向かっている集団だが、とりあえず捕食の光景は目撃されずに済んだ。


 まだ距離はあるから今のうちに捕食した角鹿から変異で得られたものを確認した。


 脚力強化、筋力強化、瞬発力強化の3つを強化が可能で、更に手の指を角鹿の角へと変えたり、頭から角鹿の立派な角を生やすなんてことも出来る様になった。

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