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『最後の春、君と見た空』  作者: 優貴(Yukky)


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第40話『恋人らしいこと』

夏祭りの翌日。

朝。

朝倉幸太郎は寝不足だった。

原因は明白。

昨夜。

駅前。

別れ際。

陽菜の――

「大好き」

その一言。

思い出す。

顔が熱くなる。

忘れようとしても無理だった。

朝から三回は思い出している。

「……最悪だ」

ベッドの上で呟く。

全然最悪じゃない。

むしろ逆だった。

だから困る。

同じ頃。

水瀬陽菜。

ベッドに顔を埋めていた。

枕を抱き締める。

足をばたばたさせる。

完全に悶絶中だった。

「なんで言ったの私ぃぃ……!」

昨夜の自分を思い出す。

耳元。

大好き。

逃走。

完璧に勢いだった。

思い返すだけで恥ずかしい。

でも。

幸太郎の驚いた顔を思い出すと。

少しだけ嬉しい。

「うぅ……」

再び枕へ顔を埋めた。

月曜日。

学校。

教室。

幸太郎が席に座る。

すると。

後ろから声。

「おはよう」

陽菜だった。

いつも通り。

……のはずだった。

目が合う。

二人とも固まる。

昨夜を思い出した。

同時だった。

「お、おう」

「お、おはよう」

ぎこちない。

異常にぎこちない。

その様子を見ていた人物がいた。

西園寺颯太。

数秒観察。

そして確信する。

「何かあったな」

即答だった。

昼休み。

屋上。

幸太郎と陽菜。

そして何故か颯太。

「帰れ」

「嫌だ」

「帰れ」

「嫌だ」

陽菜が笑う。

颯太は腕を組む。

「で?」

「何があった」

幸太郎が目を逸らす。

陽菜も逸らす。

怪しすぎた。

颯太はニヤリと笑う。

「なるほど」

「何も聞かなくても分かった」

「分かるな」

「分かる」

幸太郎が眉を寄せる。

「何が」

「恋人イベント発生したな」

二人同時に固まる。

図星だった。

颯太は爆笑した。

「分かりやす!」

「うるさい」

「青春してんなぁ」

「帰れ」

「無理」

しばらくして。

颯太が帰った後。

陽菜が小さく呟く。

「ねえ」

「ん」

「恋人らしいことって何だろうね」

幸太郎が考える。

確かに。

付き合っている。

好き同士。

でも。

普通の恋人が何をしているのかよく分からない。

「知らん」

「だよね」

陽菜も苦笑した。

放課後。

二人で帰る道。

陽菜がスマホを見ながら言う。

「恋人らしいことランキング」

「調べるな」

「気になるもん」

画面を見る。

手を繋ぐ

ペアグッズ

写真を撮る

お揃い

デート

陽菜が言う。

「意外とやってないね」

確かに。

手を繋いだのは祭りだけ。

写真も少ない。

お揃いもない。

陽菜は少し考える。

そして。

「写真撮ろう」

「今?」

「今」

即決だった。

公園。

夕暮れ。

ベンチ。

陽菜がスマホを構える。

幸太郎が嫌そうな顔をする。

「その顔やめて」

「無理」

「笑って」

「無理」

「ほら」

陽菜が肩を寄せる。

近い。

近すぎる。

シャッター音。

パシャ。

撮れた。

陽菜が確認する。

そして笑った。

「いい写真」

幸太郎も見る。

確かに。

自然だった。

二人とも。

少しだけ笑っていた。

陽菜はその写真を見つめる。

そして静かに言う。

「増やしていこうね」

幸太郎が見る。

「何を」

陽菜は微笑んだ。

「今の私との思い出」

夕陽が二人を照らす。

過去の記憶は大切。

でも。

これから作る思い出も同じくらい大切。

いや。

もしかしたらもっと。

幸太郎は小さく頷いた。

「そうだな」

陽菜は嬉しそうに笑う。

その笑顔を見て。

幸太郎も少しだけ笑った。

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