第6回 暴風雨、背徳の初夜
「開けろ! アルス! 何をしている、この不届き者がッ!」
分厚いオーク材の扉が、旧勇者の剛腕によって激しく叩かれ、悲鳴を上げる。
だが、その怒声も、窓の外を叩きつける凄まじい暴風雨と、部屋を支配する濃密な静寂の前では、どこか遠い世界の出来事のように聞こえた。
「……フフ。お父様、随分とお怒りね。せっかく連れてきた『新しい女』に、いいところを見せられないのが、そんなに悔しいのかしら」
薄暗いダイニングの奥。
元聖女エルセは、震える指先でワイングラスを弄びながら、蕩けたような笑みを浮かべた。
彼女の目の前には、見習い聖職者であるカイルが、跪くようにして座っている。
「……あんな男の声、聞かなくていいんです。エルセさん。今のあなたには、僕の鼓動だけを聞いていてほしい」
カイルの手が、エルセの太ももをゆっくりと、しかし確かな領有の意志を持って撫で上げる。
ジュブ……。
汗ばんだ掌が、絹のような肌に吸い付き、卑猥な水音を立てる。
エルセは「あ……っ」と短い喘ぎを漏らし、背筋を反らせた。
「カイル君、そんな……っ。扉の向こうに、あの人がいるのに……っ。息子も、すぐ前に……っ」
「いいじゃないですか。……あいつらが、あなたを蔑ろにしていた時間の分だけ、僕があなたを『女』にしてあげます」
一方、その傍らでは。
大魔導師ミリアが、アルスの強靭な腕の中に閉じ込められていた。
アルスの手には、先ほど資料室で見つけた、あの『赤い魔石のペンダント』が握られている。
「……ミリア先生。この石の熱、あんたの肌に伝わってるか? 母さんとあんたが、ずっと隠してきた『本当の愛』の重さだよ」
「アルス、君……。貴方、なんて残酷なことを……。あの日、私たちが夢見た理想を……よりによって、貴方が叶えに来るなんて……っ」
ミリアの理知的な瞳が、熱い涙で潤む。
彼女の白い法衣は、先ほど溢れたワインによって無惨に濡れ、肌に透けて張り付いていた。
透けて見える、伝説の大魔導師の、熟れきった肉体の曲線。
アルスはその光景に、喉を鳴らして欲望を剥き出しにする。
「先生。……理屈はもういいだろ。……もう、こんなに身体が、俺を求めて震えてるのに」
「……認めるわ。アルス、あなたが……欲しい」
二人の母親は、扉の向こうの夫たちを「拒絶」し、目の前の少年の「侵略」を受け入れることを、魂の底から選択した。
ピシャァァァァァァァァァンッ!!
巨大な雷鳴が、屋敷を震わせた。
その光に照らし出されたのは、絡み合う二組の影。
アルスがミリアの唇を強引に奪い、カイルがエルセの法衣を乱暴に捲くり上げる。
衣擦れの音が、聖女の純潔の終わりを告げた。
「ああぁっ!? カイル君っ、だ、だめっ。あ、ああっ……♥」
エルセの声が、暴風雨にかき消される。
カイルの指が、聖女の「最深部」へと容赦なく踏み込んだ。
ジュルッ、ジュブ、ズブブブッ……!!
粘りつくような愛液の音が、静寂なダイニングに響き渡る。
エルセの秘所からは、長年の渇きを癒やすかのように、溢れんばかりの蜜が迸った。
「……エルセさん。最高だ。……聖女様が、親友の母さんが、僕の指を、こんなに卑しく締め付けるなんて……っ」
「あ、ああ……っ。あ、あの人には……夫からは、一度も……っ! ミリアの息子に抱かれるのが……こんなに、こんなに……幸せだなんて……っ!!」
背徳の告白が、さらに快楽の火を燃え上がらせる。
ミリアもまた、アルスの猛烈な愛撫に、賢者の仮面を完全にかなぐり捨てていた。
「アルス君っ……アルス! あ、ああぁっ♥ そんな……っ、そんな奥まで……っ、私の魔力回路が、めちゃくちゃに……っ!!」
「先生。……いや、ミリア。……あんたの全部、俺が飲み込んでやる。だから、全部、おれにくれ!」
アルスが、ミリアの細い腰をグイと引き寄せ、己の剛直をあてがう。
ズボォォォォォォンッ!!
「んぎいぃぃぃぃぃぃっ!?!?!?♥」
ミリアののけぞる顔が、月光に照らされる。
伝説の賢者の深淵を、親友の息子が、暴力的なまでの熱量で埋め尽くしていく。
むせ返るような、発情した雌たちの匂い。
それは、どんな強化魔法よりも強力に、少年たちの本能を突き動かした。
二組の親子が、二組の恋人へと、完全に入れ替わった瞬間だった。
「カイル……っ。俺の母さん、どうだ?」
「ああ。……最高だよ。……お前の母さん、俺の名前を呼びながら、歓喜の涙を流してる」
少年二人の冷酷なまでの実況が、母親たちの羞恥心を極限まで高め、それが反比例して絶頂へと導く。
「あ、あああぁぁぁっ! ミリア、見て……っ! 私、カイル君に……こんなに汚されて……っ♥ あああああぁぁぁぁっ!!」
「私、も……っ! エルセ、見て……っ! アルス君の……っ、こんなに熱いの……っ!!」
限界だった。
二人の母親は、扉の向こうで夫たちが扉を破壊しようとする振動を、まるで自分たちへの快楽の振動として受け入れ、同時に絶頂の深淵へと突き落とされた。
ビシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
エルセとミリア。
世界を救った二人の英雄から、過去最大量の潮が、同時に、そして盛大に噴き出した。
それは濡れた法衣をさらに重くし、ダイニングの床を愛液の海へと変えていく。
「「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ……♥ ♥ ♥ ♥」」
四人の咆哮が、一つの巨大な絶頂となって、暴風雨の夜を支配した。
ドクン、ドクン、ドクン……。
アルスとカイルの精液が、それぞれの「親友の母」の胎内へと、容赦なく流し込まれる。
それは、新しい命の予感であり、旧世代への完全な勝利の証だった。
やがて、静寂が戻る。
賢者の眼鏡は床に落ち、聖女の法衣はボロ布のように散らばっている。
抱き合ったまま、激しい呼吸を繰り返す四人。
だが、その至福の時間を、無慈悲な破壊音が打ち砕いた。
――バゴォォォォォォンッ!!
ついに扉が粉砕され、怒髪天を突いた旧勇者が、室内に踏み込んできた。
「貴様らぁぁっ! こんなところで何を……っ!?」
旧勇者の瞳に映ったのは、事切れたように少年に抱かれ、淫らな雌の顔をした妻の姿。
だが、旧勇者は気づいていなかった。
自分の背後に立つ旧戦士が、血の気の引いた顔で、自分の手元を凝視していることに。
「おい……勇者、待て……。お前の妻の首に、何がかかっている……?」
旧勇者が目を凝らす。
エルセの首にかかっていたのは、かつて勇者が「安物の石」と切り捨てた、あの青い魔石のペンダント。
そして。
その石は今、かつてないほどの禍々しくも美しい、漆黒の光を放ち始めていた。
(第7回へ続く)




