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扉開けたら即異世界 -ぶらり異世界冒険記-  作者: 神風 翼
閑話:魔術学園暗殺未遂事件!
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0098:姫の昔 復讐鬼の今


とつとつ、と唐突に振り出した雨。

そんな中、少女はただ1人、被ったローブが濡れる事構わずに道を歩む。


周りでは、降り出した雨に傘や合羽を用意する者。

近場の木々を傘代わりに雨宿りする者。

目的地は直ぐそこだと駆け出す者。


そんな中、一切の動きの変わらないままに、歩みを止めずに居る。



王位を持った父と母に、彼らを取り囲む貴族達。

そんな中、かつての王城にて、愛され祝福されて生まれた。


すくすくと育ち、いい物を食べ、上流階級での生活を恙無く続けていた。

…だがある時、周囲の環境に疑問を持つようになった。


―どうして呼ばれた王城より、自分達の城は小さいんだろう。

―どうして他の国の王族より、自分達は慎ましくしなければいけないんだろう。

―どうしてこの国の領土より、周りの木っ端の方が大きいんだろう。


成長を続け、知識を蓄えていく内に、彼女の内に芽生えた違和感……

教育を受ける内に芽生えた疑問と、そのあまりにも未熟な、そして動物的な解決方法。



その為に、彼女自らの意思でもって、王であり親である自らの両親を、暗躍の元に謀殺した。



―何故今までの歴史や慣習に従わなければならない。

―何故周りの連中に気を使わなければならない。

―何故力で示さない。


彼女は常々疑問に思っていた。

何故力でもって制圧し、自らの物にしてしまわないのかと。

何故自らの力による地位ではなく、過去の栄光による序列が一番なのかと。


本来、文化と知能のある、人間的な行為。

しかし彼女にとっては、そんな上下関係と無駄な慣習こそ不要であり無駄。

それこそ人間的文化こそ、意味不明な物であったのだろう。


昔ではなく、今の力を見せるべきだ。

過去に引きずられる必要は無い。

力こそ、最高の言語ランゲージなのだ。


彼女は、そう考えたのだ。



だが、そんな思考を持ちながらも、純粋な動物ではない。

寧ろ思考パターンこそ、純然たる狡猾な人間その物。


親を謀殺した時の暗躍も。

悠馬に積み状態にされた時の涙も。

戦争拡大の原因が自分に無い様に、そして他の貴族が原因であるように見せたのも。


全てが彼女の思惑通り。



残忍であり、力で捻じ伏せて屈服する、蛮族思想。

狡猾であり、知能と策略で逃げ隠れする、犯罪思考。


そんなハイブリットな存在こそが、旧エルイーザ王国元姫君。

エルイーザ・ティス・エルミナート。



そんな彼女が、何故こんな場所に居るのか。

何故悠馬達をいまだに追いかけているのか。


…それは遡る事、約一ヶ月(三十日)前。


本来、エルイーザが共同管理都市へとなった時点で、既に彼女の身はとある商人に売られていた。

元々は労働奴隷として落ちた物の、市民受けが悪く他都市へと連れて行かれた。

その際に名乗り上げたのが、いい噂を聞かない悪徳商人。


そんな奴が、彼女を引きつれたどり着いた場所が、レイスティア公国の貿易集積所であった隣村のルスティ。


その町で暫くの間、その商人の元で様々な事を経験した。

姫のやるべき事以外の事…それこそ、街娘がするような雑用と、下民のような生活。

挙句はその商人の相手として、娼婦のような事をして純潔を散らすまでした。


こうして精神はささくれ、世界全てを怨む様になって数日。


ふとした偶然か、はたまた必然か。

シャルリアと共に魔術都市への道を進む、悠馬達の姿を見かけたのだ。


その傍らには、かつての自分と同等な位に上等な貴族、公爵家当主の姿。

イーリス・ティア・フロンタリア。


上等な服に綺麗な格好。

十分な食事にちゃんとした環境。


何故こうまでして、差が出来てしまったのか。

何故あの異世界人と、さも当然のように生活しているのか。


何故、何故、何故……


思考が回る中、涙と怒り、悔しさと妬み、そうした環状の坩堝の底。

混ざり合って生まれた復讐心が、彼女の感情を埋め尽くした。


―例え血反吐を吐いて苦しもうとも。

―例え道半ばで行き倒れ、その身朽ち果てようと。

―この怨みを返すまでは、絶対に死なない。


生まれて初めて、血涙を流しながら、そう決意した。


そこからの行動は実に早い。

逃走経路、脱出手段、金銭の確保、etc etc……

即座に思考を回し、使える手段を全て使って実行に移した。


その日の夜。

彼女の体を、再び全て(ねぶ)り尽くそうとした商人の一物を噛み千切り、そ奴の金をひったくりながら飛び出した。


逃げるのではなく、ただただ、復讐を遂げる為に。




…そうして今現在。


雨の中の道を進み切った先。

道の間にある小さな農村の外。


入る為の入村金すら馬鹿にならないと、近場の木蔭の中へと入って行く。

身を売るのも手だが、今は相手も場所も悪い、と思いながら。


ボロボロになった服とローブを枝に掛け、薄汚れた体を雨で洗い流す。

だが、殆どの汚れは落ちない。

こびり付いた汚れは、もはや一朝一夕では無理だろう。


軽く流した後、また濡れている服を着なおし、村の近くへ。

村の外にあるゴミ場になら、まだ残飯があるやも、と赴いた。


…が、結局拾えたのは薄汚れたパンが一欠片。


今まで着ていた美しいドレスは、今や小汚いボロの服。

美しくも美麗なその容姿は、薄汚れた奴隷同様。

食事など、散々食べきれずに捨ててきたパンが、今や汚れた一欠片のみ。



ただ静かにソレを飲み込み、木を背に体を震わせながら眠りに付いたのだった……



「んもー、新しい傘が嬉しいからって、態々雨に出て行かないの!

夕飯もう直ぐだから風呂入ってきなさいな!」

「はーい!」

「イーリスー、今日の夕飯はハンバーグだからねー」

「わかった!すぐ入ってくるー!」

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