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扉開けたら即異世界 -ぶらり異世界冒険記-  作者: 神風 翼
閑話:魔術学園暗殺未遂事件!
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0097:真犯人


「犯人は、彼ら全員が毒で死んでいいといった行動に出ている。

これは、逆説的に言えば利益を求めた行為とは思えない」


フロードは、そう淡々とライオに語りかける。

手に持った筆ペンを、インク壺を鳴らすようにトントンと動かしながら。


「彼は新理論の為に賢者連中に理論を語っていた。

コレを理解できる物なら、その知識だけでも十二分な価値となる」

「…いや、だが理解できない阿呆だったらどうするんだ」

「阿呆でも、流石にそんな短期的な行動には出ないさ」


そう、彼は自信満々に語る。


「何せ実践と称して、物質を宝石へと変える光景を見せたそうじゃないか。

知識以外でも益を得る為ならば、こんな無作為な殺しをする訳が無い」

「…そう言われればそうか」

「阿呆が居ないとは思うけどもね」


彼の言葉に、ライオは納得するように頷いた。



もし彼の持つ力や知識が欲しいのならば、殺すという行動は間違いなく悪手。

逆に利益を得る為ならば、彼の授業を受け続ける事が一番の利益だろう。


悠馬が実演して見せた宝石練成は、つまり知識があれば出来る事といった証明。

知識さえ付けば作れると言う証左。


そんな物を前に、この学園に住む者ならば、そんな単極的なことはしない。

…それ以前に、そんな阿呆はこの学園に在学させないだろう。


何せある程度の知識や知性が必要な魔術学園。

しかもその学園の賢者ともいえる連中が、そんな阿呆なはずが無い。


…という思考に至るライオ。


彼としては、そういった願望が無い訳でもないだろう。

何せ新学園長として、そういった輩は居て欲しくないのだから。



それはそれとして。



では、彼らを殺そうとしたのは一体どういった思考の持ち主なのか。


「考えられるのは2つ。

一つは単純な嫉妬、もう一つは彼らへの恨み、かな」

「嫉妬か、恨み?」

「まぁ可能性としては嫉妬の方を、私は押すけどね」


フロードはそう言い切り、今一度紅茶へと口をつけた。

それを前にしたライオは、その理由を脳内でしっかりと構築し、理解へと至る。


「…そうか、あ奴らは確かここらに来る事自体が初めてと言っていたな」

「そう、ここにくる事自体が初めて。

この周辺での行動自体、日が浅いんだよ」


そう言いながら、彼は学園エントランスで、受付でアルバートが居ない事に落胆していた事を思い出す。


悠馬曰く、恩返しのような物。

そんな事の為に、態々海辺近くのこんな辺境地にある魔術学園に来た。


魔術を学びに来た訳でもなく、観光に来た訳でもない。

この地に関して、一切の予備知識など持ち合わせていなかった。

そんな日の浅い連中が、この地で恨みを買うか?


答えは、否である。


「この地で恨まれるような事をした様子は無い。

彼らの語った新理論で、学科が追い込まれたといったの無い。

それ所か、寧ろ新理論で新たな境地へと至った者も多い。

…ほら、何処に恨まれる原因がある?」

「ぬ…確かに、言われてみれば」


2人が見た中では、彼らがそういった恨まれるような行動をした様子は無い。


理論解説では、判らなければ親切丁寧に何度でも応対した。

聞かれればちゃんと返したし、どこか一方を眉唾にした様子は無い。

新学園長を争いあっていた派閥でも、どこか一方に肩入れする事無く、最後まで中立でもあった。


一度、アルバートを邪険に扱い、邪険に扱われトールとエールの兄妹に闇討ちされた者も居た。

だが残念な事に、ここでは日常茶飯事であり、寧ろあの程度で恨むというのもおかしい。

それ以前に周囲からも自業自得だと、逆に彼らにとっての地雷をよく見つけてくれた、と喜ばれてたそうだ。


「ならば恨まれて、といった点は間違いなく無い。

寧ろ妬みでそんな単極的行動に出た奴が居た事を嘆くべきだよ」


そうなると消去法で妬みから、といった点に決着する。

嫉妬と言う点も、少々怪しい部分もあるが、仕方が無い、といった風に顔をしかめた。


「そうか…いや、そうか?」

「ん?」


が、彼のその推理に唐突に思いついたライオ。


「いや、もし外部から彼らを狙っていた奴が居たのならば……」

「ははは!それこそありえないさ!」


だが、その発言を彼は一笑した。


「いつ何処であった事の為に、わざわざ追いかけて恨み晴らすなんて……

実にナンセンスだよ」

「いやしかし、恨み辛みは永遠物だぞ?」

「確かにそうかもしれないが、この広い世界で見つける事自体が困難さ。

外部犯なんて考え出したら、きりがない」

「不死身だからそんな言葉が言えるんだ」


そうかもしれないね、とフロードは答えて、再度紅茶をカップへと注いだ。




 ~~~




その日、魔術都市の正門から1人、不思議な少女が出発した。


手荷物は少なく、武器の類も無い。

あるのはただただ、ごく僅かしか入っていないであろう小銭袋。

その姿は、薄汚れたフードに、汚くなったローブを羽織り、顔を殆ど見せないようにして。


だがその少女を見た門番は、全員が全員、恐ろしいような負の感情を見た。


それがどんな感情なのか、どんな事があったのか。

それを知る由は、彼ら一介の門番には、理解は出来なかった。



「絶対に…逃がさない……!」



彼女の名は、エルイーザ・ティス・エルミナート。

かつて、国土拡大を自らの意思で示し、戦線を拡大した大戦犯。



…そして、悠馬達を利用するべく、この世界に召喚した張本人。



恨み辛みの逆恨み。

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