0095:外へ
生垣の端に腰を下ろし、あやめと揃って缶を傾ける。
中に入っているジュースの甘味と、炭酸の刺激を感じながら、一息。
ぷはぁ、と喉へと下し、互いにため息をついた。
「…私らには、こういうのが一番だよね」
「だな」
そう言って、対岸の埠頭に停泊している貨物船やフェリーを見やる。
今日も元気に輸送業をしてるのか、遠目で見ても作業員が働いているのが見える。
「…何たそがれてんの?」
「いんにゃぁ、そんな気分なだけさね」
そう、背後に居たタクトにそう返した。
…例の正体不明の暗殺犯の存在が更に出てきた数日前。
また別の犯人に怯えないといかんのか!となり、相談する事にした。
その相手こそ、あの場に居た仮学園長のライオ氏とフロード氏。
詳細を話した所、安全策を立ててもらった。
その安全策こそが、魔術都市からの脱出である。
だが、下手をすれば相手から追われるかもしれない、と思い聞いてみた。
すると、彼らから安心できる答えを貰った。
…曰く、毒入りの食べ物は殺意を感じるが、毒が一般的過ぎる。
何せ例のデスデニアンパンジーは、メジャーすぎて解毒薬や無毒化薬が一般に出回っている。
その為、裏市場に少しでも入れば、捨て値でゴロゴロ転がってる安物だそうだ。
さらに直接殺しに来た女の刺客は、俺からの装備や格好の証言から格は低いと判断された。
どうにも、例の暗殺手口が教科書通りすぎる点と、逃げに入った思い切りの良さ。
特に逃げ足に関しては、腕の悪い連中は大体すぐに逃げるそうだ。
はした金故にしっかりした仕事をせず、割に合わなければサッサと逃げる。
そういった三流盗賊職は、以外にまで沢山存在しているそうだ。
恐らく雇われたのはその三流。
さらに毒はいくらでも安く手に入る品。
そこから考えて、恐らくそこまで資金的余裕が無いのでは?といった意見であった。
殺意があるのであれば、姿を消せばいい。
居なくなった相手を追うのであれば、莫大な金を積む必要がある。
もしはした金で雇った連中であれば、恐らく追いかける事をせずに懐に入れて姿を消すだろう。
…というのが2人の統一意見。
ならば、と翌日に魔術都市からの脱出を画策。
…正確には、一部のお世話になった人たちに挨拶した後、普通に都市から出るだけ。
こうして脱出して数日。
GWも終わった、次の土日。
連休中は一切出かけなかったな、なんて思い立ち、全員で出かけようとなった。
まさかの自身含め総勢12名+1羽!
車で行くには多すぎる量なので、流石にバスを乗り継ぎ、全員で遊びにやってきた。
場所は県内の埠頭。
正確には、埠頭付近にある複合施設。
元々埠頭だった場所を改修した為、機械遺産としてクレーン(テルファーだっけ?)が残された場所。
ショッピング・映画・グルメ・イベントが楽しめるベイエリア。
ファッション、雑貨、食料品。
レストラン、カフェ、すし横丁。
ミュージアム、シネマ、アミューズメントと多岐に渡るこの場所。
食事に買い物に、と全員で楽しんでおります。
…因みに、全員にお小遣いも渡してあります。
あやめは帰る前に、例の誕生日プレゼントと称してのゲーム機を買うと決めてるそうだが…もう何も言わんわ。
…とりあえず、全員で映画を見て、レストラン行って、そして今の自由時間。
例の訓練が役に立ってるのかはわからないが、皆思い思いに楽しんでる様子。
「…来たかいがありましたなぁ」
「思った以上に面白かったよなぁ…」
映画は例のVRゲームの超大作のアレ。
元ネタ知ってる連中でギャーギャー楽しんで……
「…タクトはあの映画、理解できた?」
「それなりにー」
「さよかー」
楽しめたのならよかとです。
…で、レストランに寄って昼食。
すしは、生ものってのもあって全員えっ…みたいな顔してたからパス。
今度美味い刺身でも買ってやるか……
あ、レストランでの飯は普通に美味しかったです。
「…そういやイーリスは?」
「まだあのアイスの店、シャルリアが付いて並んでる」
「あー…甘味かぁ…」
そう言いつつ、立ち上がる。
まだ今日は時間があるが、それでもここでじっとし続けるのは勿体無い。
「…そういや次何処行く?」
「ゲーセンもありだけども…んー、ショッピング?」
「ここじゃのうて」
「あぁアッチか」
そう言って異世界へと意識を向ける。
…正直、目的地も目標も決まってない。
とりあえず今度は内陸部に行こうか、程度にしか考えとりませぬ。
流石にバケモノのいる海は勘弁しちくりー。
「とりあえずは以前の…レイスティア公国のルスティ…だっけ?
あそこに戻って…ぬー……」
「…どうするのさ」
その問いに、一度首をかしげ、諦めて笑みを浮かべて見直す。
「…ま、道すがら考えるさね」
「雑ゥ!」
「いや、だって時間はまだ山ほどあるし…」
「…だね、それもそうか」
そう言いながら、残ったジュースを飲みきる。
空き缶は握り潰す!…なんて事しないで、普通にゴミ箱へシュゥゥゥゥ!
「超!エキサイティン!」
「アレまだ家にあった気がする」
「マジで!?」
あやめのその一言に驚きつつ、とりあえず中へと戻る。
今後の旅に、期待を寄せながら……
3D!アクション!ゲーム!




