0094:決着?
「いや、やっと片付いたね」
「ホントですわ」
そう言って、フロード氏の用意した紅茶のカップを手にする。
あまり馴染みの無い香りと共に、ソレを飲み、一息。
ふう、なんて息を吐きながら、長かったアレコレに思考を飛ばす。
…あれから翌日。
学園長…元・学園長か? が捕まり、例の暗殺未遂事件は幕を閉じた。
ソレからは安全のためとモロモロの理由でもって、学園での授業は見合わせ。
更に捕縛した刺客の引渡しと、その時の報告書の作成と受け渡し。
当然俺とアルバート氏の、賢者達相手の授業も当然無し。
自宅と書斎での待機が言い渡される事になった。
やっとの休みでワッショイである。
ただしテレーザのみ、事実確認の為に召集された為お仕事。
元ネタの顔で、向こうでゆっくりしていってね! と煽ってやった。
何か知らないけどむかつく顔だよソレ、と言われたの巻。
テヘペロ☆
…で、今は自然公園の一角にあるテラス。
日の当たる静かな場所で、ティーカップ片手にノンビリ優雅。
これ、フロード氏に誘われてお茶会、といった形です。
場所も自然公園内なので、モンスターが闊歩してる物の、その全てが安全な奴ばかり。
その為か、イーリスに付いてきた大福も、安心して机の上の茶菓子の欠片をつつきまわってる。
ついでに、以前居た人懐っこい狼と、子供組みが遊んで走り回ってますね。
お前ホントに狼か。
そう思いつつ、一緒に誘われた俺とあやめは、揃って紅茶を飲み干す。
ふぅ、なんて揃って一息つくと、大変だったあの日々が懐かしくなってくる。
「…思った以上にサックリ終わったよねー」
「リアルなんてそんなもんでしょ」
そう、ポケッとしながらそう呟いた。
元・学園長も、あの後抵抗らしい抵抗も、杖奪われた次点で無かったし。
杖なし魔術方なんてのも、授業がまだ途中で語ってなかったし。
証拠や証言なんてのも、直に聞いてた閣下が居るから、即アウトでおしまいだろうし……
こういうの聞くと、やっぱり民主主義じゃないんだなぁ、なんて思わざる終えない。
後ろ盾探しにシャルリア様動かしてて正解だよ。
…いやホントに。
「もっとこう…なんていうの?
抵抗してラスボスチックに魔法で変身してさ…」
「③現実は普通である」
「デスヨネー」
そう、何か納得いかないあやめを他所に、カップをソーサーに戻した。
んな主人公みたいな展開あらへんがな、なんて思いつつ。
そんな中、背後からの足音を聞き取った大福が視線を移す。
それに釣られるように、俺たちもそちらへと振り返った。
「よう、ユウマ殿」
「ただ今戻りました」
「戻ったよぉー…」
「お帰りさん2人とも、それとお久しぶりですライオ氏」
「うむ!」
そう言って、テレーザとその付き添いのシャルリア様。
そして、代理として新しい学園長に就任したライオ氏が姿を見せた。
色々と長かったのもあって、テレーザは既にグロッキー状態。
ふよふよと飛んできたかと思えば、礼儀も何も無くお茶菓子を真っ先に手にしてかぶりついた。
そら延々と証言確認の為に、元・学園長の思考読みまくればそうもなるわな。
「判決はどうなりました?」
「うむ、あ奴は犯罪奴隷として海獣船行きだそうだ。
おぅ不死身の、私にも茶を」
「はいはい…」
あやめの問いに、ライオ氏はそう答えると、どっかりと空いた椅子へと座った。
同時にその注文に、フロード氏は苦笑いしつつ、用意を始める。
…というか、何? 海獣船?
「その…海獣船ってのは?」
「おぉ、そういえばお主等はここいらを知らんかったか。
海獣船はその名の通り、海に居るバケモノを駆る為にある船だ」
「海獣は放置してると、本都市の漁の海域に入ってきます。
ソレを押さえ込むべくあるのが海獣船なんです」
ほーん…?
わかるような、わからんような?
そんな俺の表情を見てか、フロード氏は続けて解説してくれた。
曰く、海獣とは言った物の、その大部分は海に住む巨大なモンスターの事らしい。
そいつらはエサと縄張り拡大の為に、大陸付近にまで足を延ばす事があるそうな。
ソレを生身と犯罪奴隷達を使って押さえ込むのが、件の海獣船。
大体がクラーケン、深き海の主、メガロシャーク、船食い、etc…
そのどれかだとか。
いや多いわ。
しかも揃って笑いながら、何日ぐらい持つかね?なんて賭けてるし。
良くて3ヶ月(1ヶ月半)ぐらいですかね、じゃねーから。
怖ぇーよ。
「…で、お主達はこの後はどうするつもりかな?」
「んー…悠馬の授業が終わり次第…また道楽旅、かなぁ」
「今度は大陸中心部に行きたいです!」
ライオ氏の問いにそう2人で答える。
が、それに意外といった表情をするフロード氏。
「ふむ、私はてっきり海の方に行くと思ったんですが……」
「さっきの話聞いて、どーすればその回答になるか、教えてもらってもいいですかね」
「ははは、知ってますか? 海の向こうには雲の上に島々があるそうですよ?
70年ほど前に流れ着いた漂着者を治療した事がありましてね……」
傷が原因で一月持たずに亡くなられましたが…なんて続ける氏。
いや、たとえそんな場所あろうと行きませんがな。
流石に、海から、離れたいです!
…と、そんな中。
グロッキーなテレーザと大福を撫でてたシャルリア様が、ふと呟く。
「…それにしても、判決が速く出て助かりました。
これでようやく安心できますね」
「こちら、紅茶です」
さらり、と紅茶をだしたフロードに、彼女はありがとう、とソレを口につける。
確かに助かるなぁ、なんて思う中、ピクリと反応したテレーザは、思い出したかのように言葉を発した。
「…そういえば、変な事があってさー」
「変な事って何さー。
アイツが変態趣味でそういった余罪があったとかかー?」
「いや、そういうのじゃなくてさ……
…毒入りの食べ物とか、暗殺者騒ぎあったじゃない?」
そう呟く彼女に、おぅ、なんて空返事しつつ茶菓子をモグる。
あ、こいつウメェ。
「聞!け!この!野郎!」
「聞くから頭皮へのストンピングを止めるのだ!」
止めれ禿げる!
…とりあえず落ち着いてくれた様子で。
あーイテテ…
「…ったく……で、アイツ、あれやこれやと余罪が多すぎて、全部確認する前に終わったんだ」
「あぁ、それでこんなに早く帰ってこれたんだ」
「そうなんだけど…どうにも、元々麻痺や睡眠毒とかで動けなくして攫う気だったみたい。
ただ、最後に致死毒入りの奴ともう1人の…女の暗殺者だっけ?その話もちょっと出たんだけどさ……
アイツ、それに関しては本気で困惑してて……」
「…ん?何で?」
「いや…何か本当に知らなかったみたいでさぁ……」
…?
……!?
真実は大体1つ!




