0067:血
高所をはたいて埃を落とす。
落とした埃を掃除機で吸う。
角を綺麗に、重点的に掃除を続ける。
ロボット掃除機君は丸いからね、角は掃除しきれないからね。
仕方ないね。
1階を周り清掃を続け、途中寝てる双子とイーリスをどかして拭き掃除。
イーリスは掃除を終えた場所に移し、猫共は横向きで寝てたので手足を持って反対側に反す。
うにゃうにゃ言ってたが知ったことかい。
そんな光景を後に、1階を終え2階へと掃除の場所を移す。
先程と同様に掃除を続け、途中個人の部屋も掃除する。
1階同様、こっちも埃と角汚れを重点的に。
ドランの部屋はまだそんなに散らかってなかった。
…というより、清潔綺麗に整頓されててギャップにしかめっ面した俺達だった。
俺達大分失礼ね!
…で、その後に掃除のためにイーリスの私室へ入る。
元俺の部屋の面影は今だ色濃く残ってるが、机の上が大分ファンシー。
買い物の際に定期的に買ってあげてる諸々が、元俺の机に張られている光景。
何とも言えない気分になりつつも、卓上の埃をササッと掃き落とす。
…少年漫画系のキャラのシールの上に、フリフリな女の子のシールというのに、ちょっと何とも言えない環状を覚える今日この頃。
ついでに、イーリスの私物の横にある大福の寝床と化したバスケット内を、ひっくり返して掃除しておく。
フクロウの羽って、向こうで筆ペンとして需要あるのかななんて思いつつ。
まぁ何もありませんでしたけどね!
…とりあえず、最後の要塞と化した2階リビングへ向かう。
あやめ共々、ちょっと覚悟を決めて開け放ち…ちょっと引いた。
何処だココ。
理科室か。
「学校思い出すね」
「自宅にこんな光景があるのが不思議でならない」
むしろ研究室と化したリビングという光景に眩暈すら覚える。
確かに研究用と嬉々として俺も買ったけどさ。
世間一般の、一介の自宅にフラスコや試験管は置いてネーよ。
とりあえず反応実験として使用したであろう物を横目に、軽く掃除を続ける。
足の踏み場が無いという訳ではないのが、救いではあるが。
「…で、屋根裏は?」
「…俺行かなきゃダメか?」
…そんな中、屋根裏部屋へと上がるはしごの先から、鬼気迫る気配を感じる。
後屋根裏だけなんだけども…何とも行きづらい空気。
あやめに促され、俺だけスッと頭を出し、屋根裏を確認。
ナイア嬢の私室と化してるのは知ってるが、何をしてるかまでは確認していないのですよ。
…鬼気迫る表情で、幾つもの用紙に魔術陣を書いては消し、ダメだと思えば投げ捨て、新しく書き続ける。
所々に転がった、インクの無いボールペンと、無数の紙々。
挙句机にはエナジードリンクが二本。
背後から見えるその姿は、以前見たほんわか天然エルフのソレじゃない。
誰だお前。
…静かに、音も立てずにはしごを下った。
「……うん」
「…どったの?」
「屋根裏はまた今度にしよう」
そら無言で逃げますわ。
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「ただいまぁー」
「ただ今戻りました」
「おきゃーり」
一通り掃除を終え、さぁのんびりしようか、といった所で横槍。
そういうの、あると思います。
そう思いつつ、運動を終え帰って来たテクスとタクトを迎えつつ、そのまま風呂へと向かわせる。
運動しまくったのか、汗だくじゃないですかやだー。
…と、それに合わせるかのように、ガチャリとリビングで繋ぎっぱなしの転移扉が開く。
タイミングよく向こうに行ってた連中も帰って来たようだ。
「おかえりさん、どうだったシャルリア様ー?」
「礼拝や歓迎会に参加しただけですので、そんなに何かあった訳では……」
「まぁ護衛にゴツいのと見えないの居るし、そんなもんか」
「誰の事じゃ」
「誰の事さ」
「おみゃーさん達だよ妖精と酒樽ゥ!」
「…なんで未だに様付けで呼ぶのでしょうか……」
癖です。
許せ。
「…で、なんでアルバート氏はまた精神的に死んでおられるのか」
そんな彼女達を横に、再び沈みながら帰宅した氏を見る。
朝はあんな意気揚々と出て行ったのに……
「ワシの理論学科が…」
「…もしかして、廃科?」
「ぐっふぉぉッ!」
あ、図星。
クリティカルヒットしてもうた。
半ば栽培マンに自爆されたあの人みたいになってる。
どうしてこうなった。
そんな光景を見てあやめが近寄ってくる。
御飯を炊き始めたばかりなのでまだ仕事が無いようで。
「…で、なんで廃科になったのさ?」
「お前結構容赦なく聞くよな」
「褒めんなよ」
褒めてねぇから。
「…まぁ理由なんて、人居ないとか人気無いとか予想はつくけどさ」
「それ以上はやめろ」
そうあやめを止めるが、ソレを他所にゆっくりと立ち上がる氏。
何とか復活したようで…まだ瀕死だけど。
「フフ…フフフフ……
人気が無いこと位分かっておったわ……
じゃがな、こっちの科学理論を加味して研究を続ければ結果は見えておったんじゃ……!
集会でも一定の評価と理解も得られた…!」
「じゃなんでダメになったのかが余計分からんのだけども……」
「ヒント:理科・科学は階段式でしか理解できない」
「…必要な情報量が多すぎるのか」
「……そうじゃ」
そう、氏はうなだれた。
小学校6年、中学校3年の義務教育+高校大学の高等教科。
それを学ぶには時間と資料と知識量が莫大過ぎる。
可能性は理解したんだろう。
けども…ねぇ。
「その量にNG出ちゃった感じかな」
「一部だけ、ってのが無理だもんねぇ……」
「こっちでの研究全部無駄!」
「ごっふェッ!」
「あっまた」
「アルバート氏ぃぃぃ!」
今日、ストレスによる吐血を初めて見た。
「組んでてよかったヒーラー職、治れば血は吐かない!」
「それ以前にまずその口閉じろ」




