0066:旧家の代償
朝、日の光とかけた覚えの無い目覚ましの音に叩き起こされる。
いつものように惰眠を貪りたい。
それ以前に、前日の運動のせいもあって、腕がパンパンに張って痛い。
筋肉痛で辛いのに、この仕打ちは何だ。
そう思いつつ、薄目を開けてみると見覚えのある顔。
「おはよう、早速だが地獄に付き合ってもらう」
「…寝起き早々にむせるんだけど」
ココはウドか。
~~~
「と言う訳なんだけども」
「説明しろ」
唐突にそうあやめに起こされ午前10時。
朝食も終わり、いつものような平穏な日常が、と思った矢先である。
彼女の両手には掃除機と叩きの姿。
エプロンつけて準備万端な状態。
対する俺は新品の白い前掛け装備。
ラーメン屋でも始めんのかと。
「いや、人増えたのもあって最近ちゃんと掃除できてなかったのよね」
「成程サボっていたと」
「手間隙かけなきゃ全部手抜きか」
ロボット掃除機が掃除しとったわダラズ。
そうチョップを受ける。
…まぁ、人が増えて汚れも増えたしね。
幸い、今日は人も少ないし……
そう向こうに開いて出したままの扉に視線を向ける。
シャルリア様は教会からの呼び出しがあって、テレーザと一緒に現地教会へと出向いている。
一応は教会の第三位神官という身なのもあるので、ドランを護衛に一日出張である。
何故タクトじゃないかというと、本日タクトはテクスと共に訓練ついでに近所の公園へ走りこみ。
現在筋肉痛でアカン俺と、何故かそう大差が無かった事に危機感を覚えたんだとか。
「素人に負けるとか本気でヤバイ」と感じてくれたようで何よりである。
ハッハッハ泣くぞ。
で、更に間が悪く、賢者達による教育集会があると、アルバート氏は朝食後に向こうへと発った。
内容は昨今の教育内容と、成長度合いに伴う必要教育についてだとか。
つまりは職員会議ですね判ります。
…こうして現在家に残ってるのが、縁側でのんびりしているイーリスと大福コンビ。
そしてその横で日向ぼっこ中の猫兄妹。
今も魔術陣研究と称して、自室となった屋根裏で延々と研究中のナイア嬢。
そして現代組みの俺達だけとなったワケである。
その為、ロボット掃除機による自動清掃だけじゃ足りない部分を掃除していくことに。
とりあえずは高所の埃と、四隅の埃、後フローリングの汚れ。
それ以外だと転移扉前のマットか。
「ソレ位で十分かなー」
「じゃあ俺不要やん」
「いいから手伝えデブ筆頭」
「デデデデブちゃうわ!」
そう言って掃除を手伝うことにする。
少しは動けと言う事か。
…この家は屋根裏ありの2階構造。
内装は元屋敷であった名残はあるが、リフォームによって現代的に変わっている。
玄関入ってすぐ左手、扉を開けてすぐにリビングがある。
いつも何人かが屯しつつ、全員揃って食事しても十分余裕あるスペースが確保されている。
で、ココからカウンターを挟む形でダイニング。
冷蔵庫2つにトースターやら炊飯器やらが増えたキッチン。
そのすぐそばのドアからは、玄関からの廊下に出れるようになっており、さらにその廊下側のドアの間に転移扉用のスペースがある。
廊下を出てダイニングの隣。
2階に続くコの字型の階段があり、更に隣に洗面所と風呂場がある。
廊下を挟んで反対側は和室が三室。
元婆ちゃんの部屋、爺ちゃんの予定たっだ部屋、客間と並んでいる。
今ではテクスの部屋、シャルリア様とテレーザ、タクトの三人の部屋、猫'sの私室となっている。
間は襖で区切られ、その部屋の先に縁側がある。
さらに縁側の先、玄関側にトイレ。
縁側は更にコの字型でリビング側の廊下に続くと、実に旧家らしい構造である。
2階の構造は近代的。
リフォームで増築したのもあってそれなりに真新しい。
…とは言え、実際は二世帯住宅。
1階が広いのは旧家由来の広さとバリアフリー化であり、2階は俺と両親の暮らしの為と増築したのもあってそれなりに小さい。
コの字に上がってすぐに、廊下が横に通っている。
玄関側に進んだドアの先には、現在アルバート氏の実験室。
リビング側にある屋根裏用の開閉式のはしごの先に、ナイア嬢の研究室。
揃いも揃って研究組みのラボと化したリビング・ダイニングと屋根裏倉庫である。
その前の廊下、階段側にあるドアは元俺の部屋。
今はイーリスと大福の部屋になっている子供部屋。
反対側に元両親の寝室で、今の俺とあやめの寝室と、縁側方向にあるベランダ。
その寝室隣にはトイレ、洗面所、シャワー室となっている。
さらに玄関とは反対側に進むと、階段を挟んで客間が1つと小さめな倉庫部屋。
因みに、ドランの希望により(窓が無く音の漏れない)この倉庫部屋が彼の私室となっている。
一体何するつもりなんですかねぇ……
…後は庭に蔵がある、それなりに広い庭。
さらに部屋の大部分を、リフォームの際にひとまとめにした関係で大部屋ばかり。
つまり何が言いたいかというと……
「辛すぎワロタに園」
「黙ってハタけや」
広大な家の全部を掃除するには、筋肉痛な俺にとって非常に重労働な訳で……
「あまりに過酷な仕事、労働基準法はどこ行った」
「残念だったな、ヤツはハワイにバカンスさ」
「あまりに過酷、なんという残酷、こんな仕事をさせるなんて、この世に神はいないのか」
「その残酷な労働を私一人にやらせる気?」
「…………」
「ぐぅの音も出ない?」
「ぐぅ」
その反論に、ただ黙々と掃除を続ける俺だった。
「…てか私、掃除に合わせて買い物・料理・洗濯を一手にやっt」
「さぁーて次は何処掃除すればいい?」
「逃げんな」




