0065:作れ
悠馬達がランニングに出かけたので、私達もとキッチンへと赴いた。
用意する物はまずキッチン用品。
小麦粉や砂糖、卵等々の材料。
「今回のアシスタントはシャルリアさんにお越しいただきました!」
「あの…えっと……?」
スイマセンいつものノリです。
そう言って謝りながら、菓子作りの準備を開始する。
とりあえずボウルやミキサーやらを手にしつつ、スマホのレシピを元に始める。
菓子作り自体はちょくちょくやってたけど、今回のは初めてだし、仕方ないね。
とりあえず諸々を混ぜる。
電動でも手回しでもないミキサーをシャルリアさんに渡しつつ、自分も油の用意。
揚げる際の油跳ねに気をつけな。
「菓子料理なのに油を使うのかの?」
「ん? あぁうん、揚げるヤツだからねー」
リビングのキッチンで、未だに黙々とクラフトを続けるドランにそう返しつつ温度計を用意。
強すぎても弱すぎてもダメだからね。
菓子作りは料理にあらず、科学と思え……!
「…そういや、他の連中は?」
「わぷっ…皆さん、自由に行動してるようですよ」
跳ねる泡にアップアップしてる彼女の返答に、ちょっとばかし思考を飛ばす。
まずテクス、タクト、悠馬の三人はランニングで今居ない。
アルバート先生は二階のキッチンを自室として、ナイア嬢は三階の屋根裏倉庫を自室として、研究と勉強続けてるし。
ドランはリビングの机でクラフト…アイエッ。
「気にしてなかったけど、何それ」
「帆船」
「その帆船のどの部分よ、大皿みたいに広げちゃって……」
「船底の竜骨部分じゃ」
…ペーパークラフトって、もっとこう角ばってるもんだと……
しかも2ℓペットボトルを横にしたみたいなサイズの船体とか。
「…でかくね?」
「小さいのは小さいのでいいがの、細々としてると逆に難しくてな」
そう黙々と作業を続けるドランであった。
作った物、向こうで売ったら一儲けできそうね、なんて。
「…で、イーリスは今日もゲームかー……」
その船の陰から見えるテレビでは、彼女が黙々とゲームを続けてる。
黒ハードの初期のゲーム、3Dの配管工のヤツである。
因みに一つ目が昔の、二つ目がタクト、三つ目が彼女のセーブデータになってる。
水の張った高低差のあるマップを走りながらジャンプするその様は、見覚えのあるマップ。
「にゅー…わからんー……」
「どったの」
「水が全然足りないー…」
「そこね、絵に入る高さで水嵩変わって……」
「そっか!よーし……」
…テクスさん居ないとかなりフランクで何とも言えない今日この頃。
そして驚く位にササッと画面内の赤い配管工が動いていく。
子供の慣れって怖いわー。
「ゲームもいいけど、今度の連休中にでも外に遊びに行く?」
「あっいきたーい!」
「よっしゃ!じゃ予定決めとか無いと……」
「アヤメさん、混ぜ終わりました」
「あんがとー、じゃ今度はこっち」
「ま、また……」
「今度は生地の分なー」
そう辛くないから頑張れ、と言いつつ、混ざったクリームを指で掬って一口、うんOK。
そして視線を離し、即座にボールに戻して手を制す!
ぺしり、とぶつかって落下する。
「摘み食いはゆるさんでぇ!」
そう一括しつつ、伝説のあの一言…とはちょっと違うか。
お残しは許しまへんでぇ!なんて…
それはそれとして。
生クリームの香りに引き付けられて、飛んでくるだろうと準備して正解だった。
油断もすきも無…あら。
「にゅぃー……」
「ノびてらぁ」
制す程度だったんだけども、普通に接触事故で目を回すテレーザの姿がそこに!
油はね危ないから向こうに行ってなさい。
カウンターから、物が跳ねない位置に彼女を置いて、再度油を見る。
180℃、揚げ物に最適な温度である。
一度加熱を止め、さらに生クリームにラップをかけ冷蔵庫に。
さらにこっちは別のトッピングであるアイシングを作る。
「猫共はまだ昼寝?」
「大福と一緒に日向ぼっこみたいです」
生地を混ぜるシャルリアの横で、砂糖と牛乳を混ぜながらそんな一言。
何とも猫同然で困る。
…猫は猫だけど、食べたらまずい物ってあったっけ?
アレルギーとか……
「…まぁ亜人…人だし大丈夫か」
「どうしました?」
「んやー、一人言ー」
そう言っていい感じに混ざったそれと、シャルリアの手元の生地に視線を移す。
おおいい感じいい感じ。
「じゃそれを輪の形にしましょうか」
「あっドーナツですね!」
「そー、前回買って来たアレなー」
「御家で作れるんですねぇ…」
まぁあんまり凝った物は無理だけどな。
今回はアイシングのかかった、シンプルな揚げドーナツ。
ついでに何もかけてない物も用意して、切ったそれに生クリームを点けるディップタイプの2つ。
砂糖の甘味に酔いしれろ、ふはは。
じゃ揚げていきまーす。
ちゅわわっ、といい音を上げながら揚がる生地。
最近揚げ物多いけど、まぁ人気だしいいかと思ってたけども…動かないしなぁ……
少し自重するようにしますか。
そう思いつつ次々に揚げ、揚げ終わったソレにシャルリアさんがアイシングをかける。
共同作業で作業が早い。
作業が早くて飯がうまい!
「メシウマ状態!」
「あの…えっと?」
スイマセンまたいつものノリです。
そう謝りながら、どんどん作っていく。
楽しそうに作る彼女を見ると、また一緒に作りたいな何て思えてきた。
「たでぇまぁー…」
「腕痛ぇー」
「戻りました」
おっちょうどよく帰ってきたな!
「お帰りさん!ちょうど菓子出来たよぉー!」
そんな、昼前の静かな光景。
「ほーら揚げ物だぞぉ!高カロリーだぞぉ!」
「あの運動全部無駄!」




