0100:電気に気を使う日
「節電です」
翌日の朝、朝食の席でそう宣言する。
が、唐突な発言にポカンとする連中ばかり。
流石に理解してもらう為に、ちょっと時間を使わせてもらおう。
「えー知っての通り、昨晩は家電の多用によるブレーカーのダウンがありました。
コレの改善の為に色々と考えておりまして……」
「醤油とってー」
「はい、代わりにコショウを…」
「む、コショウはここじゃ」
「マヨはー?」
「今取ってくるね」
「聞けぃ」
流石にスルーは酷くありませんかね。
あとあやめは、マヨ取りに行くなや。
まだ、私が、話してるでしょぉー!
「いや、でもブレーカーがどうとか言ってもさ?」
「何さ」
「理解できる人が居るのかという話で……」
その一言に、一瞬固まる。
そのまま、油の切れたようにギギギ、と首を動かして視線を向けるが……
「申し訳無いが…」
「聞いた事がありませんので…」
dsyn。
そういや異世界人でしたもんね。
テクスとシャルリア様の一言に、いっぱいの悲しみを抑えきれない。
じゃなくて。
「とりあえずまずは節電です」
「話が戻った…?」
「無限ループって怖くね?」
怖くない。
合わせ鏡でもなければ怖くない。
「ブレーカーは、電気の通電が一定量を超えると、安全の為に通電を止めるんです。
一種の安全装置なんですが…それが昨日の原因です」
「…つまり?」
「電気使いすぎ」
主に己等じゃ猫と子供ォ!
ビシィ!なんて指差しながら、そう言い切る。
ま、他にも原因はあるけども。
たこ足配線で一定量以上を動かしていたとか…
全力稼動ではない物の、常時稼動型が複数あったりとか…
…後は構造上、リビングとダイニングのブレーカーが一括されてたのもあるかね。
旧家からのリフォーム故、致し方なし。
てかここまで動かすこと事態、想定の範囲外だよぉ!アハッ!アハハッ!
…はぁ……
「…まぁ?事前に考えて無かったこっちにも落ち度はありますがね?
暫くはブレーカー対策に、家電の過剰使用は厳禁です」
そう言うと、全員の動きがピタリと止まる。
そして先程の俺をコピーしたかのように、全員揃って首をギギギ、と向けてきた。
やっと理解していただけたようで……
「…エアコンも?」
「駄目です」
「扇風機もですか?」
「駄目です」
「ゲームやテレビも!?」
「一応様子見ながらだけども、駄目です」
「突然のご連絡申し訳ございません。
お話を伺いたいので、よろしければDMにてご連絡をさせていただければ幸いです」
「ぶっころがすぞ」
「駄目ですって返せよ!」
駄猫兄にターボスマッシャーパンチ!
魔人皇帝の拳を喰らえ!
「鼻が…」
「…という事で、しばらくは我慢していただきたいです」
「暫くってどれ位ですか?」
「改修工事次第かなぁ?見積もりは後でするつもりだけど……」
「ねぇ鼻が…」
「どれ位かかるかね?」
「まぁ2、30万はかかるかもね」
「鼻が……」
とりあえず、横で鼻押さえてる駄猫は置いておいて。
どれ位かかるか、なんてあやめと話しつつ、スマホで近所の電気店をチェックしよう。
…その間、異世界組みどうすっかねー……
「あぁ鼻血が……」
「あぁもう世話の焼ける猫だ!」
「鼻血の原因が何を言うか」
知らんな。
~~~
「…はい…はい……ありがとうございます」
とりあえず、朝食後の出発前。
先程言った通りに、近所の電気店へ電話確認である。
ただ、一通り電話での会話を終え、切ってからまた悩む事になった。
料金はまぁ問題ない、どうせ増やせる。
距離も近場で、作業も1日から半日あれば十分みたいだそうで。
因みに、よくあるチェーン店ではない。
所謂、近所にある昔ながらの個人店舗のような感じの店。
当然、大手と違って小規模なら格安で、しかも近場で気軽なのもあって人気。
それこそお年寄りの家の、電球交換とかならタダでやったりとか……
昔ながらの人気の秘訣だね。
…ま、中規模程度だからそれなりに値は張るが。
それでも10万ちょっとなら安いほうかしら。
「はぁ……」
ただ、問題はねぇ……
「…どったの?」
背後から、あやめがそう聞いてくる。
聞いてくれよ……
「あんな?個人経営だけども、それなりに人気みたいでな?」
「うん」
「お年寄りの集まりとか、話し相手とかで、意外と予定が埋まってるみたいでな?」
「うん…うん?」
「できそうなのが来週以降だって……」
「ちょっと待って」
待たない。
いや、近所で有名なのもあって、すこぶる評価が良いらしいの。
それもあって、近所のじっちゃんばっちゃんからの御呼ばれの予定で埋まってるらしいの。
「どうしてそうなった…!」
「そらブレーカー増設とか、即時対応するべき内容じゃないですしおすし」
ブラックな対応やクレーマーな対応はいかんですよ。
身に染みてるしな!
…おかしいな、涙が止まらない。
「…まぁ、予定があるなら仕方が無いでしょ」
「何か釈然としないけども…まぁ致し方なし」
暫くは節電で対応しましょうか。
電気を大切にね!




