暑い日の日常
タツキ「あっっつぅぅぅぃ」
扇風機を回しアイスを齧る。ああ旨い、これに煙草を咥えるとすごくすっきりするんだ、火を付け煙草をゆっくりと吸う。メンソールのスーッとする味が口の中に広がる。うん最高
タツキ「ふー・・」
私は良く冷えた缶コーヒーを額に当てる、あー冷たい、ウチのアパートにはクーラーなんで上等なもんないからこーやって涼むのが一番だ、服装?そんなもんタンクトップとパンツ一丁に決まってる
またアイスを齧り煙草を吸う、うんこれが一番旨い、流石ガリガリ君、いつもお世話になってます
私は缶コーヒーの蓋を開けて一気に飲み干す
タツキ「くはーーーー!!これが・・イイ!!」
アイスの冷たさ+よく冷えた缶コーヒー+メンソール煙草=最強、私の考えた一番の涼み方だ、ビールという手もあるが、酒の力は時々借りるだけでいい
タツキ「あ~~、幸せ、それに今日は冷やし中華買ってきたからな、食欲対策も万全だ」
冷蔵庫にチラリと目をやる、あの中にはキンキンに冷えた冷やし中華が入っている。お昼が楽しみだ
そう思いながら煙草をふかす。静かなひと時、バイトが無い時はこんな時間が心地いい、汗臭い現場も変に絡んでくる同僚もいない、最高だ
タツキ「まあ最近は美煙のおかげでちょっと騒がしいけど」
少し笑いながら美煙の事を思い浮かべる。煙草を吸っているときのあの白い髪、人間じゃない事を証明するかのように燃える青い火に青い目、私はあの光景を見た瞬間不思議な高揚感に襲われた
退屈な日常に突然現れた非日常、人知の外の存在、妖怪・・あの時の感覚は忘れない
タツキ「良い意味で騒がしくなったよなぁ・・」
煙を吐く、今日はけむりがまっすぐ天井に上り、消えていく、どうやら美煙は今日まだ寝ているようだ
あれから雨の日は私が送り迎えをしている。私のバイトが入った時はやむなくタクシーでいってるらしい
ま、私も生活があるから毎回とはいかないしね、そこは気合で頑張ってもらおう
残り少ないアイスを齧る。そのとき反対側の部分が崩れ、床に向かって落ちていく、世界がスローモーションになる。私はなんとか受け止めようとしたが間に合わない、無残にもアイスは床に・・・床に突然開いた口に吸い込まれていった
タツキ「は?」
シャグシャグシャグとアイスを咀嚼する床?
「ごっくん」
あ、飲み込んだ、
美煙「エモい雰囲気に浸るのもいいけどぉ~、アイスのこと忘れると大変なことになっちゃうよ~?タツキちゃん」
そう言いながら美煙が床から体を生やしてきた、コイツ・・聞いてたのか
タツキ「人が気持ちよく涼んでるところに不法侵入は感心しないなぁ?美煙ちゃん?」
煙草を咥えながら両手を握り、両側から美煙のこめかみをグリグリする
美煙「あひぃぃぃ!?痛い痛い~!!ごめんなさぁ~い!!」
可愛い声で悲鳴を上げる美煙、だが許さん、アイス半分とて喰い物の恨みは恐ろしいぞ
美煙「へにょああああ~~」
ヘンな声を上げて床にへちょぉ・・と崩れる美煙、そんなに強くしてないんだけどね
美煙「うっ、うっ、なんか覗いたらタツキちゃんが黄昏ててエモい雰囲気になってたから邪魔しちゃ悪いなぁって床になってたのに・・煙も我慢してたのに・・」
ペソペソと泣きながら自分の無実を訴える美煙
タツキ「いや・・アイス喰ったじゃん」
半分も
美煙「それはたつきちゃんが落としたからじゃぁああん!」
こめかみを抑えながら半泣きで抗議する美煙、ま、まあ確かに?それはそうである
タツキ「まあ機嫌直せって、ほら、煙食っていいから」
ふー、と美煙に向かって煙を吐き出す
美煙「・・・ぷい!」
あら珍しい、食いつかない
美煙がこちらを恨ましげに見つめて・・もっかいぷいされた、これは今回手強いか?
私は美煙に詰め寄り、長く煙草の煙を口の中に蓄える、そしてゆっくりと少しずつ煙を吐く、
美煙を焦らすように・・・おいしい餌をぶら下げるように、すると美煙の口が少しずつ煙を吸い始める
掛かった.私はそのままゆっくりと煙を吐き出す。吐き出した煙が美煙の口に次々と吸い込まれていく
タツキ「機嫌・・・治った?」
私は優しく笑いながら美煙に語り掛ける
美煙「まあ・・・少しは」
口で相変わらず煙を吸いながらすこし不満そうに美煙が答える。まずまずだ
私は自分で煙草を吸いながら一本美煙に渡す
タツキ「美煙の吸ってる姿私見たいなぁ、あの真っ白な姿私好きなんだよね」
本心だ、あの白い髪と青い瞳を早く見たい、すると美煙が少し戸惑った後煙草を咥えて火を付けて吸う
美煙の髪が徐々に毛先から白く染まっていく、幾度となく見た何とも不思議な光景が浮かぶ、彼女は青い瞳を光らせながらこの世のものではない炎を灯す、開けた窓から風が吹き彼女の白い髪がなびいた、私はその光景を目に焼き付ける。なんて儚げに煙草を吸うのだろうと思う、私は妖怪ではないが、いや・・だからこそこの姿に惹かれる。
美煙「そんなに見られるとなんか恥ずかしいな・・」
目線に気づいたのか、美煙が照れくさそうに膝を抱える。不覚にもなんかこう・・ときめいてしまった
どちらも何も言わず肩を寄せ合う、静かな時間が続いた、私と美煙は黙々と煙草をふかした。外を見ればいつの間にか夕暮れだ、夕暮れの窓から煙が逃げる。蝉が少し静かに鳴く、ふとこの時間がずっと続けばいい・・なんて思ってしまった
美煙「あっ!もうこんな時間!?ヤバい!!仕事に遅れちゃう!?」
美煙の間の抜けた叫びで残念ながらこの時間は終わってしまった。じゃ!またね!と壁に消えていく美煙
私は軽く片手を上げる。やれやれ、あの子はもう少しあわただしくしないように行動できないのか・・と思ってしまう。美煙がバタバタとアパートを出ていく音が聞こえる。私はその音を聞きながら目を瞑り、さっきまでの綺麗な美煙を思い出しながら煙草の煙を吐いた、と同時にお腹がぐぅとなる
タツキ「あ・・冷やし中華忘れてた」




