藤宮町 封魔の鍵と青い毛の血族
それから、叶さんと別れた私達は、電車に乗って、藤宮町に向かった。
H県A市藤宮町、そこは田園風景が残る長閑な町だ。『封魔の鍵』の伝説が残っている。
町に着くと、子供達が待っていた。瑠維君と璃羽君の友達の巻向奈美君と風雅君、月島碧君と須郷彼方君だ。彼らは、藍本姉妹と共に、金の目の男こと白を封印したそうだ。
「あなたが、闇先生ですか!よろしくお願いします!」
奈美君は私に握手を求めてきた。
「ああ、こちらこそよろしく」
私は奈美君と握手を交わした。
すると、誰かが勢いよく走って来た。
「彼方!会いにきたよ!」
「その声は、姉さん?!」
姉さんと呼ばれた女子高生は、背が高く、私と同じ位だった。
彼方君の姉の十明君は、現役高校生カリスマモデルのTOAとして活動している。私が短編小説を掲載する女性向けファッション雑誌の表紙に彼女の写真が載っていたはずだ。
「仕事早く終わったから、来ちゃった!」
「また会いに来たの?学校とか仕事は大丈夫?」
「今日は休日だから、私もゆっくりしたいの」
十明君は後ろから彼方君を抱き締めた。
すると、私達の前に小柄な少女が現れた。彼女は銀髪で、赤いメッシュが入っていた。目も赤色で、人間ではない気配を感じる。
「みんな、久々だな」
「ルベライトさん…?」
奈美君がそう呟いた。だが、皆はその少女を知らないようだった。
「奈美、この人は誰なの?」
「やっぱり思い出せないのか…」
ルベライトと呼ばれたその少女は、赤い石のブローチを握った。すると、皆の鞄やアクセサリーに赤い光が宿る。その光を取り出すと、彼女と同じ赤い石が光を放っていた。
その光で、皆の記憶が戻ったようだ。十明君は、少女に抱きついた。
「ルベライトちゃん!会いたかった!私が選んだ服着てくれてるんだね!」
「十明、それからみんな、思い出してくれたんだな」
少女は一体何者なのだろうか。尋ねてみる事にした。
「君は何者なんだ?」
「私はルベライト、紅電気石の死神です。あなたは茂さんでしたっけ?廉さんから話を聞いています」
ルベライト君は、皆の前に立った。
「『封魔の鍵』がどうなったのか気になってな。だが、死神の掟に従って皆の記憶を奪ってしまった。だが、奈美と再会した時に、記憶を思い出しても私を拒まずに受け入れてくれてな。だから皆の記憶も返すよ」
「そうだったのか…」
「ルベライトさん、一緒に神社に行きましょう!」
私達は『魔封神社』に向かった。
それから、神主さんに『封魔の鍵』を見せてもらった。今は平和な藤宮町だが、かつては白や死者の被害を受けていた。
それを止めたのが『封魔の鍵』だった。だが、鍵だけでは白を止められなかった。ルベライトさんの死神と死魔の力、それから瑠維君と璃羽君に宿っていた猫又の蒼の力が無ければ、白を倒す事は出来なかった。
私は、皆の話をメモに書いた。それから、お礼を言って、藤宮町から離れた。
別れる直前に、ルベライトさんは私にこう言った。
「記憶を返したのは特例です。あなたは、いずれ私や廉さんの事を忘れてしまいます。けれど、私も廉さんも、あなたの事はずっと覚えていますからね」
いつか今日の事を忘れてしまうのだろうか。私は優太の手を握りながら、ずっと考えていた。




