青波台 猛暑の夏休み
書斎に籠って来月分の原稿を書いていた。今日は暑く、家の中に居ても汗が止まらない。私は扇風機の風を浴びながら、麦茶を飲んでいた。
それから、仕事が一段落すると、私は居間へ向かった。そこには息子の優太が居る。今日の分の宿題を終わらせた優太は、エアコンがが効いた部屋でゲームをしていた。最近はオンラインの対戦ゲームをしているそうで、夏休みが終わるまでにレートSまで行きたいと言っていた。
「お父さん、仕事終わったんだ」
「ああ、これから鬼門さんが原稿を取りに来るよ」
優太は丸いクッションに座ってゲームの続きをしていた。
すると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「闇先生、原稿を取りに来ました!」
戸を開けると、そこには鞄を持った鬼門君さんが立っていた。私は、彼を居間に招き入れた。
「いらっしゃい、良かったらお茶をどうぞ」
私は鬼門さんに冷えた麦茶を手渡した。鬼門さんはそれを飲み干した。それから、今月分の原稿に目を通す。
「ありがとうございます」
鬼門さんは原稿を鞄に仕舞った。
すると、優太がタブレット端末を持って来て私達に近付いた。
「お父さんと鬼門さんに質問があります。二人は小学生の頃、どんな夏休みを過ごしてましたか?」
「夏休みか…」
私は、小学生の頃を思い出していた。
「朝は公園で体操、昼は川遊びや蝉取り、夜はお祖母ちゃんの怪談話を聞きながら涼んでいたよ」
「田舎の夏休みって感じで良いですね!僕は都会っ子だったので公園でゲームやったり、ゲームセンターで遊んでました。それから、オカルト雑誌をクラスメートと回し読みしてましたね!」
優太は、それをタブレット端末にメモしていた。
「ありがとうございます。それから、昔は今みたいに暑くなったというけれど、それは本当なんですか?」
鬼門さんは自分のスマートフォンを取り出した。
「そういえば息子の懇談に行った時、教室にエアコンがあって驚きました。僕が小学生の頃はエアコンは無かったです」
「そうなんですか?当たり前にあるものと思ってましたけど…」
「ああ、私が通う小学校にも無かったよ」
優太は過去の天気を調べていた。
「夏休みの朝は涼しい風で目が覚めて、散歩に行ってたんだ」
「僕の家にはクーラーがあったのですが、風邪引くからと母親に言われて余程暑い日にしか付けてもらえませんでした」
「信じられない、今は朝も夜も暑いのに」
優太は私達に気温の変化のグラフを見せた。十年前に比べると、気温は明らかに上がっている。
「そういえば、忍もずっと家で過ごしてますよ。学校のプールも暑くて入れないみたいです」
忍君は、鬼門さんの息子さんで、小学一年生だ。会った事は無いが、大人しい子供だそうだ。
鬼門さんは優太のゲーム機の画面を見ていた。
「そのゲーム、忍にねだられて買いましたよ。家でずっとやってます」
優太は夏休みの過ごし方と気温の変化の関係を調べて自由研究にするそうだ。
「ありがとうございました。また色々聞かせてくださいね」
優太はクッションに座ってタブレットで操作していた。
優太によると、この宿題はAIを使って調べ物をし、それをデジタルでまとめてオンラインで提出するらしい。難しくて、私には理解できない世界だ。
「闇先生、ありがとうございました。それでは僕はここで失礼しますね」
「ああ、またおいで」
鬼門さんは編集室に帰ってしまった。
それから、優太はしばらくタブレットで宿題をしていたが、一段落したのかゲーム機に持ち替えていた。ゲームをテレビに繋ぐと、ゲーム画面が映る。
それから、ケースからヘッドフォンを取り出し、私にこう言った。
「これから友達と通話するから、静かにして」
それから、優太はオンラインで友達と対戦をしていた。
私は書斎に戻って本を読んていた。戸は閉めていたが、優太の声がずっと聞こえた。




