私の人生は波乱万丈だ。狂気から目覚めても、この世界は私の平穏な日々を許さなかった。
犯した罪は永遠に消えない。どれだけ謝罪しようと、償おうと、その罪が許される日は来ないだろう。
私と志保は対の魂だ。かつて、私は圭ノ助、志保はお初と呼ばれていた。二人が人ならざるもの、妖になったせいで私達は罪を背負う事になった。
その圭ノ助が書いた『本』のせいで、私は狂気に陥った。
私達が死んだとしても、新たな命がその罪を背負う。
生まれ変わり続けるというのが、世界が私達に与えた罰だ。
私は、その罪に向き合う為に、今も小説を書き続けている。その中で沢山の人と出会った。故郷の志手山に住んでいた瞬君、晴人君、由香君と真海君。それから、旅で出会った人々だ。彼らとの出会いがあったからこそ、今の私が居る。
狂気から目覚めてから、本当に色々な事があった。
百鬼夜行で聖都祭が中止になった翌年、私は改めて聖都を訪れた。そこで、蝶野家当主の翔さんと、翔さんの従兄弟の舞君と共に聖都祭を楽しんだ。
それから、『月刊怪奇』という雑誌の企画で、怪しい古本屋『一服堂』の店主の小条信さんと、ライトノベルである『翡翠の君』の作者の『みなと』さんこと湊川亜衣さんと対談した。
あの店主は表紙を見せずに本を売っていた。だからこそ、普段読まない本と出会い、作者の方とも出会えた。
それから、DJ宮本こと宮本周さんのラジオに何度も出演した。夏には怪談の朗読をした。それは子供達に好評で、SNSや手紙で沢山の感想を頂いた。
私を取り巻いているのは、仕事だけではない。家族である志保、そして息子の優太の存在も大きい。
あれから、優太は保育園を卒園し、小学生になった。私は、志保と共に何度も小学校を訪ねた。優太は真っ直ぐで、思慮深い子に育った。私の本も読んでいるそうで、感想を言ってくれた。
そんな優太が、小学五年生になった。それは、瞬君が『風見の少年』として私を助けてくれた学年であり、小学生の私が『本』を拾った学年でもある。
優太の身の回りでは、今の所何も起きていない。
だが、油断してはならない。小学五年生の年は、何が起こるか分からないからだ。
私は優太には平穏無事な人生を送ってほしい。だからこそ、出来る事は全てやるつもりだ。
私には、怪奇小説家『闇深太郎』としても、渡辺茂としても、やりたい事が山程ある。今、ここで命を落とす訳にはいかない。家族の為にも、出会った人々の為にも、私はこれからも生き続ける。