「それぞれの行く先」(前)
「テンジュ殿。魔王ドゥクェックのバラバラ死体じゃが、切断面が綺麗すぎると思わぬか?」
背中のフーコツが言った。
「うん? そう言えば手足も首も、切断面が美しいが、それが何か?」
と、テンジュ仙人。
「仙人は、僕の超高速打撃を真似て攻撃してたけど、ドゥクェックは衝撃で手足がパコンと千切れてたよ」
と、ロピュコロス。
「むう。真空斬りのような効果が出たのであろうか?」
ぼくの背中で、フーコツが顎を撫でた。
「ギュネーよ。念のため、火球で遺体を攻撃するのじゃ」
「はい、先生!」
迷いなく火球を連射するギュネーさん。
「バラバラの屍が怪しいの?」
と、ミトラ。
「ワシの考え過ぎなら、良いのじゃがな」
と、フーコツ。
火球は寸分違わず六つの遺体に当たり、燃え上がった。
すると頭部、ローブに覆われた胴体、根本から綺麗に切断された手足が跳ね始めた。
それは当然な事ではなかった。
「うわっ、跳ねてやがるぞ?!」
「まだ生きてやがったのか?!」
モヒカンコンビ始め、たくさんの人が驚き叫んだ。
当然、ぼくもビビった。
「たっ、大変だ! 頭に細い脚か生えて逃げて行きやすぜ!」
カメラートさんが腕を突き出して喚いた。
「逃すでない! 剣で地面に止めるのじゃ!」
枯れた声でフーコツが叫んだ。
「承知!」
「任せろ!」
「合点だ!」
黒騎士、ゴルポンドさん、ベホラムさんら大剣持ちや、忍び刀を持つ機動忍者部隊、長剣持ちのモヒカンコンビさんたちが脚を生やして逃げてゆくドゥクェック・ゼロのパーツに走った。
顎から生えた複数の脚で、地面を掻くゼロの頭部。
しかし脚力が足りないようだ。
黒騎士の大剣の切っ先から脱する事は出来なかった。
グサリ! と地面に止め置かれるドゥクェック頭。
ローブに包まれた胴体には、ゴルポンドさんとベホラフさんの大剣が深く刺さり、動きを止めた。
ゼロの手足にも、六人の忍者やモヒカンコンビ、ロウロイドさんの剣がそれぞれ刺さり、地面に固定する事に成功していた。
「サンキュ。今、息の根を止める!」
燃えつつも足掻くゼロの各部位に、ベルベリイさんが電撃を放った。
さらに燃え上がり、破片を散らすゼロたち。
「じゃあ、わたしも」
と、杖を伝説から攻撃用に持ち換え、雷撃に参加するランランカさん。
負けじとさらに火球を放つギュネーさん。
オオールお婆さんが、雷撃竜巻きを発生させ、落雷を行いつつ風で炎を煽った。
「んな、なかなかの惨劇……」
口を押さえてつぶやく、ほぼ一般人のゾイウートさん。
ほどもなく、魔王ドゥクェックの各部位はケシズミ状態となった。
いと長く白き耳毛頭も、黄色いローブも燃え果てている。
「ベルベリイ様、俺の大剣だけが無事です!」
と、歓喜の声を上げるベホラフさん。
「当然よ。柄には強力な護符が入っているし、そもそも絶品の大剣だから」
得意満面で言う聖女ベルベリイさん。
左様。
黒騎士の大剣も、ゴルポンドさんの大剣も、忍者部隊の忍び刀も、さらにはロウロイドさんの魔法剣も、火球と電撃の度重なる攻撃で、折れてしまったのだ。
モヒカンコンビの長剣などは、木っ端微塵になっている。
「く、黒騎士様の大剣が折れるなどと……」
声を震わせるゾイウートさん。
「いや、ゾイウート殿。拙者の得意武器はこのクローでしてな」
手に装着した四本爪を立てる黒騎士バンガウア。
「あの折れた大剣は、黒騎士のイメージに合わせて取り敢えず背負っていたナマクラですよ」
と、笑った。
「ランランカ様に買って頂いた忍び刀が……」
「面目次第も御座いません」
次々と頭を下げる機動忍者部隊。
「値切ったのが悪かったのかも知れない。今度こそ良い忍び刀と護符を買いましょう」
ランランカさんは笑って答えた。
「俺らは審美眼がないからなあ」
シングルモヒカンのザミールさんは、少し凹んでいるようだった。
「いや、兄貴。モグリの中古武器屋で買ったのが悪かったのかも知れねえ。おいら、遠からず折れるのではないかと、覚悟しておりやしたぜ」
ダブルモヒカンのカメラートさんは、納得していた。
「あそこまで砕けるとは、思っていやせんでしたがねえ」
そう言って、深い深い溜め息を吐いた。
「くくく。店一番の傑作と言う触れ込みであったのに、情けなや」
悔しがるのは、ロウロイドさんだ。
「もう、生き返らないでしょうね、ゼロちゃん」
と言いながらケシズミに近づいてゆくミトラ。
怖くないのか、ど根性娘。
「生き返ったのではない。死んだ真似をしていたのじゃ」
と、ぼくの背中のフーコツ。
「ああやって、自分の分身を増やしていたのかもね」
と、ジュテリアン。
「代わりの大剣が必要じゃのう、黒騎士殿。竜の巣の近くに、風のシュクラカンスの大剣を埋めた。アレを掘り出しに行こうか?」
と、言い出すフーコツ。
あーー、そんな話もありましたっけ。
(『ありました!』)と、サブプレイン。
「おお。奴の腕はさほどでもないのに、剣だけは業物であった。それを取りに行くのか? 良い話だが、しかし」
と、兜の顎を撫でる黒騎士。
「大剣は拙者の得意武器ではない。その大剣は、ゴルポンド殿に譲ろう」
「げっ!」
と言わんばかりに大目玉を剥くゴルポンドさん。
「オレ如きが? いや、四天王魔族の使っていた大剣? オーガ族が使って大丈夫なのか?」
大男が、大いに慄いていた。
次回「それぞれの行く先」(後)に続く
「次回、第二百十七話「それぞれの行く先」後編は、近々投稿予定です。




