「それぞれの行く先」(後)
「大丈夫だよ。獣人族から奪った大剣だと言ってたし」
と、口を挟むロピュコロス。
「獣人族も、地下迷宮から盗んだと言ってたそうだ」
「えっ? 地下迷宮? あんなの討伐団たちのホラ話じゃなかったの?」
少し戸惑うミトラ。
「宝物ザクザクと言うの、本当だったの?!」
「そういう話なら、そのうちにチャレンジしましょう」
と、迷宮への欲望を剥き出しにして語る、「蛮行の雨」の金庫番ジュテリアン。
「ではゴルポンド殿。大剣の埋葬場所に、ワシが案内しよう」
と、宣言するフーコツ。
「うむ。貴殿はもう少し上等な武器を持った方がよい。さすれば不覚を取る事も減るであろう」
黒騎士が助言した。
「じゃあ、先生とまた一緒に旅が出来るんですね」
と、喜ぶアマゾネスのギュネーさん。
「おう。竜の巣まで道行きじゃ、ギュネー」
フーコツも嬉しそうに応じた。
「あたいたちはこの地方に残る。この際、悪党組織を根絶やしにしたい」
と、ベルベリイさん。
「それが終わったら……」
「残党どもがまた、新しい悪の組織を作るんでしょうね」
と、苦く笑う斧使いのオークスさん。
「自分らは、どこまでも聖女様に付いてゆくだけですが」
「人間の寿命は短い。お二人が引退してからも、僕なら手助け出来るよ」
と、ロピュコロス。
それはベルベリイさんとの約束であったし、その善行の間は、フーコツもランランカさんも彼の存在を大目に見るだろう。
「この地方のローカル魔王、ロピュコロス、スハイガーン、ドゥクェックの軍団は壊滅したので、拙者は南に向かおうと思う」
と、黒騎士さんが言った。
「南には女魔王のグウクレッドとウハンマウトがいるからな。今度は自分で倒してみせるぞ」
その女魔王の討伐旅には、妖魔ディンディン、くノ一アヤメさん、回復役のサイゾーさん、偽獣人のムンヌルさんも同行するのだろう。
「お供いたしますわ」
黒騎士ファンを公言するランランカさんが手を上げた。
堂々たるストーキング宣言に聞こえなくもないが、この場合は
世の平穏を守るためであるから、問題はないのだろう。
「ソレガシらは、ランランカ様に従うのみ」
と、ゲンヨーサイさん。
こちら、起動忍者部隊は付き人みたいなもんだから、やはり問題はない。
「拙僧らは、東にあるナーファ古戦場の見物に行こうと思っております」
とは、「黄昏れの砦」のエルビーロさん。
「確か、パレルレさんの生まれ故郷なんですよね?」
と、マークンドラおばさん。
「壊れた古代武器が転がっているばかりの、寂しい場所ですよ」
と、ぼく。
「望むところじゃ。『侘び寂びは人の心を豊かにする』と、かの大勇者サブロー様がおっしゃっておられる」
と、オオールお婆さん。
「メリオーレスはどうするの?」
と、ジュテリアン。
「もちろん、特別特捜官として『蛮行の雨』と行動を共にする。あなたたち、またすぐにナニかやらかすから」
メリオーレスさんは、自信たっぷりに放言した。
「一緒にいたら、何かあっても特捜官としてすぐに対処出来るじゃない? これは大変にありがたいわ」
「パルウーガの遺跡はこれで解放されたと思いますが、ゾイウートさんはこの先、どうされるのですか?」
ジュテリアンは矛先を一般人に向けた。
「ワタクシは、聞いてはならぬモノを沢山聞き、知ってはならぬコトを沢山知ってしまいました」
と言って頭を下げるゾイウートさん。
「一旦、バタガピーンに戻りますが、御者を辞して冒険者に戻ろうかと思います」
あっ。もう老齢だと言うのに、巨神像やパルウーガの戦いで、自信を持ってしまったのかも知れない。
「『年寄りの死に水』」とつぶやき、フーコツに頭を叩かれるミトラ。
「ゾイウートさん、一人は危険ですよ」
と、ザミールさん。
「おいらたちでよければ、同行しやすぜ」
と、カメラートさん。
冒険者の経験値たぶんゾイウートさんの方が長いだろうが、モヒカンコンビの若さは武器になる。と思う。
「貴方たち三人では回復役もおらず、危なっかしい」
テンジュ仙人が発言した。
「僕もアテのない旅です。同伴しましょう」
凛凛しく妖艶に笑み、可愛らしく頭を下げた。
「げっ? 貴女のような美人の仙人様が俺たちに同伴?!」
声を裏返して驚くザミールさん。
「気にする事はありません。人間は短命だ。ほんの気まぐれであります。皆さん、天寿を全うしたとしても、あと百年も生きられないでしょう?」
と、応じるテンジュ仙人。
「そ、それはそうでやすが」
カメラートさんは短命と言われ、複雑な心境に陥ったようだった。
「願ってもない!」
と、声を高くしたのはゾイウートさんだった。
「若い女性がいるだけで、全身に元気がみなぎりますぞ!」
(この間までお爺さんだった事は、永遠の秘密だな)
(『御意!』)サブブレインが同意した。
「こちらの気分も若返ります。倒せぬ魔物も倒せましょうぞ!」
ゾイウートさんは握り拳を見せた。
テンジュ仙人の気まぐれで、ここにいるチームのどこよりも、モヒカンコンビ班は強くなったのではないだろうか?
ザミール&カメラートさんの、なんという悪運であろう。
ぼくの背中でフーコツが、
「物好きじゃのう、テンジュ殿も」
と、細く笑った。
目指している仙人が目の前にいる。
すこし変人気味だが。
後で感想を聞きたい所だが、たぶんフーコツは教えてくれないだろうなあ。
ぼくたちのこれからの行き先が決まったのはいいが、案外、バラバラなのが分かった。
まあこれからも、ひょんな所でバッタリ会っちゃうんだろうけど。
それから、ケシズミ状態になった魔王ドゥクェックを、
「念のために、呪いで消そう」
と、フーコツが言いだした。
「万物反骨の呪い」とやらで、この世界から消滅させるのだそうだ。
掻き集めてきたドゥクェック・ゼロの亡骸を前に、
「どういう呪術なのだ?」
と、興味津々の様子のテンジュ仙人。
仙人も知らない光呪術の呪いなのか?
さすがは攻撃杖フーコツ。
人外な能力だ。
次回「討伐隊の帰還」(前)に続く
次回、「討伐隊の帰還」前編は、近々投稿予定です。
「年寄りの死に水」と言う多少危ないコトワザのパロディは、「魔人ビキラ」で使ったモノです。
「魔人ビキラ」や「のほほん」で使ったアイデア(?)を、惜しげもなく再利用しております。そしてこれからも。




