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第四十二話 リカルドたちとの再開

久々の投稿です。

とりあえず明日も投稿します。

タローの目の前には見慣れた扉がある。リカルドの家の扉だ。すでにノックはしたのだがやはり誰もいないようだ。この時間は皆農地に出て仕事をしている頃だろう。ここで待っていてもリカルドたちが戻ってくるのはおそらく夜になるだろう。ならばこちらから会いに行くしかない。


しかし周辺の農地には誰もいないためどこを探しに行けば良いか見当をつけるのが大変だ。リカルドの農地は広いため間違えた場所を探しに行けば探し出すだけで日が暮れてしまうかもしれない。大声を出したところでしょうがないので、昔を思い出しこの時期にどこへ行っていたか思い出して、思い当たる場所を適当に探すしか方法がない。


「ここにはいないみたいだからまたポチ乗せて行って。」


『自分の足でいくんじゃなかったのか?』


「そうなんだけど今の時期ここから見えるところにいないってことは多分飛び地の農地の方に行っていると思うんだよね。ここから歩いていくと半日以上かかるから。」


『そうかならば乗れ。道案内は頼むぞ。』


結局ポチの背に乗ってリカルドと会うことになりそうだが下手に時間がかかるよりは良い。今までタローは自分の農地を2日以上離れたことはない。今までもヴァンパイア国に行っていた時でさえ間を見て帰れる時に帰っていた。今回はどうせ来るのならやることを全て済ませようと思い長期滞在となっている。


タローは記憶を頼りにポチに指示を出す。この時期に育てているものはいくつかあるが農場付近でないのだとしたらおそらくあそこだろう。仮に違ったとしても今の時期なら誰かしらいるはずだ。その時はいた人物に聞けばいいだけである。


さすがにポチの足の速さだけあってあっという間に目的地に着いた。タローの予想通り大勢の人影が見える。このスピードだと危険だと思われ攻撃される可能性も十分にあるためスピードを落としポチの背から大きく手を振ってアピールをする。


すると数人が気がついたようで手を振り返してくれた。問題なさそうなのでそのまま近くに降り立つ。ここに来るまでは少し気温も高く暑かったがここは気温が低く過ごしやすい。タローたちが辿り着いたのは畑ではなく川である。


ただの川とは違うのだが知らない人から見れば暑さをしのぐため川の中に入っているように見える。しかしここもれっきとした農地である。タローが近づいたことに気がついた数人が笑顔でこちらに駆け寄ってくる。彼らはタローがいた頃からリカルドのところで働いていた面々だ。


「タローじゃねえか!なんか遠くから来ると思って見てたんだぞ。来るなら連絡くらいしろよ。」


「すみませんアボットさん。急に決まったもので。それに驚かせたかったのもありますけど。リカルドさんはどこにいますか?それにイチとウッドさんは?」


「リカルドさんなら今は川の中で収穫中だ。ウッドも川の中にでもいんじゃねえか?イチのことはまあ後でリカルドさんにでも聞きな。もう直ぐ昼飯だから待ってろよ。」


そう言うとアボットは作業に戻った。他にも何人か話しかけてきたが忙しいため少し声をかけるくらいで直ぐに仕事に戻っていった。


今彼らが収穫をしているのは川流芽という珍しい野菜である。

この野菜は流れのそれなりにある川底に生え数十メートルもの長さになる。わかりやすく例えると川の中に柳の枝の一本が生えているような感じである。収穫はいたるところから生えている丸い芽の部分だけを摘み取る。大きさも決まっていて小さくても大きくてもいけない。


この野菜はBランク相当であり人数が多い農家で川の治水がしっかり行われているところ限定の作物である。川の流れが速いと根っこごと抜けてしまいそのまま下流に流されていってしまう。時々流されることもあり自生しているものも多くあるらしいが味はだいぶ劣るらしい。


ちなみに食感がかなり瑞瑞しくはじけるような噛み応えで人気がある。暑いときに食べると体が冷え疲れにくくなる。Bランクではあるが値段は手ごろで庶民にもかなり人気がある。もちろんタローも好きな野菜の一つである。


川の中で絶えず動いている上に川の流れのせいで見えにくいため収穫は大変である。そのため丘の仕事と川の仕事の2つに分かれ交代交代で作業を行っている。川流芽が育つ川は水が澄んでおり魚もよく育つ。今も昼飯のためにと数人が網を使って魚を取っている。これが暑いときの風物詩とも言えるだろう。


ただ待つのもなんだと思い昼飯作りを手伝おうと余っていた網を手に取りフィーにも協力してもらって魚取りを開始する。ポチにも手伝ってもらおうかとも思ったがポチでは下手をすれば川流芽に悪影響を与えかねないと思い待っていてもらうことにした。


本来鳥よけに使っている網を幾つかに切り分けただけの網なので投網のように投げることはできない。二人で両端を持ちうまいこと囲い込むしかできないのだがそれでも何十匹も魚が獲れる。それだけ多くの魚がいるということだ。


川流芽は魚たちの隠れ家にもなるし卵を産み付ける産卵場所でもある。その上微生物が繁殖しやすく、魚にとってこれほどいい環境を作るものはない。そのため山間の漁師の中には魚のためだけに植えることもあるくらいだ。


魚を取り終えたところで他の魚を取っていた人々も集まってきた。全員タローの知らない面々だった。それもそのはずでこの魚を取って昼を用意するのは新人の仕事と決まっているのだ。タローは下手な誤解を生まないようにきちんと説明する。


すると初めは怪しがって目つきが若干怖かった新人達もタローのことを聞いていくにつれてその瞳は憧れと尊敬の眼差しに変わっていった。タローが今までされてこなかったことであるがごく当たり前のことである。なんせタローは彼らが今働いている農地から卒業し自分の農地を持って成功した自分たちの夢を叶えた人物なのだから。


昼飯を作っている間も質問攻めにあったが嫌な気分は全くしなかった。なんせここまで尊敬されたのは生まれて初めてなのだから。


「一品作りたいんだけどいいかな?食材は全部こっちで揃えてあるからさ。」


「もちろんですタロー先輩!自分たちもお手伝いしましょうか?」


「いいや大丈夫。むしろあんまり見ないようにしたほうがいいかも。ちょっと珍しい食材使うから楽しみにするためにさ。」


そう言うと嬉しそうな声で返事をしたのちに自分たちの作業に戻っていった。それを見てタローもあんな時期があったなぁと感慨深くなる。タローの言ったことを聞いてちゃんとこっちを見ないようにしているが気になるらしくソワソワしている。


タローは早速調理に取り掛かる。食材はもちろんトマトである。本当は隠しておくべきなのかもしれないがリカルドには自分の成果を知ってもらいたかったのである。ただしそのまま出すのはさすがにまずいと思いタローの得意料理となったトマト煮である。これならば原型をとどめないのでばれることもないだろう。


タローは収納袋から人が2、3人入りそうな大鍋を取り出し中にポチに魔力水を生成してもらって入れる。それを加熱するのもポチ任せである。しかしポチは全く嫌がらない。むしろ口からよだれがポタリポタリとこぼれ落ちている。それもその筈だこちらに来ている間トマト煮は一度も食べられていないのだ。生のトマトを食べていたがポチはこのトマト煮が大好きなのだ。


お湯を沸かしている間にフィーにも手伝ってもらい収納袋から食材を取り出し切り分けていく。使うのは辛玉と鈴芋とミノタウロスの肉である。辛玉は玉ねぎの剥けないもののようなものであり煮込むと甘みが出る。鈴芋は結婚式の馬車につける鈴のように一度にたくさん取れるからついたものである。煮込むと味がしみホクホクしていてうまいのだ。庶民には欠かせない食材である。


ミノタウロスの肉はポチが撮ってきたもので家畜のミノタウロスの肉よりは若干臭みがあると言われているがしっかりと血抜きをしたためむしろ家畜のものよりも旨味が強いように感じた。これを豪快に切り分け大鍋に入れる。味付けは塩だけだ。そこにメインとも言えるトマトを入れる。


トマトは加熱用のものをすでにペースト状にしたものと加熱をしたトマト缶のように丸の状態が少し残っているものの2種類を入れる。これが一番ポチの評価が高かったため作る時は毎回こうしている。


ちなみにペースト状のものと地球でいうトマト缶のような状態のものは今商品化しようと研究中なのだが出荷量が多くてなかなか研究用には回せていない。この二つはタローがなんとなくで作ったものなのだ。意外とタローには料理の才能もあるのかもしれない。


必要な量を入れたら後は煮込むだけなのだがこのままだと昼飯に間に合いそうにない。そこで最近編み出した方法を使う。それはポチに鍋ごと圧縮魔法をかけてもらう方法だ。こうすることによって早く煮込めるのだ。


ただの圧力鍋なのだがこの世界にはまだ存在しない。そもそもそこまで急いで煮込む人などいないからだ。なぜこの方法を思いついたかといえば前に夕飯を作るのが遅れトマト煮が間に合いそうになかった時にポチが鍋を見続けたことが原因だ。ポチはただ見続けていただけなのだが魔力が放出されそれが鍋に圧力を加えていたのだ。結果として煮込みの甘かったはずのトマト煮がいつもよりも肉に味がしみていた。それからというものトマト煮の際にはポチが嬉々としてこの作業をしてくれる。


それから1時間ほど経った頃に仕事が終わりようやく昼飯の時間となった。食事はそれぞれが器を持参しそれによそってもらうのだが器が足りずなかなかトマト煮を食べようとする人が現れない。確かに見た目は真っ赤なスープである。敬遠するのも無理はないだろう。そんな中でポチとフィーは先に食べている。するとそこに二人の人物がやってきた。


「お久しぶりですリカルドさんウッドさん。」


「タロー生きていたのか!お前から何にも連絡がなくて心配していたんだぞ!全く…。これってお前のとこで育てた野菜を使っているのか?」


「そうですよ。ウッドさんも試しに一杯どうですか?リカルドさんには是非とも自分の成長を見てもらいたいのでお願いします。」


「…もらおうか。」


やっと食べてくれる人が来たとタローは喜びウッドとリカルドの器によそっていく。二人はよそわれると近くの石に腰掛け早速食べる。


リカルドは一口食べたところでスプーンを落とした。その音は騒がしかった他の人々を一斉に黙らせた。毒でも盛ったのか、何を食べさせたんだと一同は一瞬思ったがリカルドの表情を見てすぐに違うのだと理解した。


リカルドは泣いていた。声を出すこともなくただ涙が目から頬を伝い顎の辺りで落ちる。隣にいるウッドは目を見開いていた。そのあまりにも異様な光景に一同は驚きただ見つめる。


「すごい…これはうまいなんてものじゃない。これって一体…」


「こんなものがこの世にあったのか…」


リカルドは落としたスプーンを拾い上げ再び食べる。一口食べたその時にどうしても我慢できず声が漏れてしまう。あまりのうまさに言葉を忘れてしまう。彼らは別に食品レポーターではない。だがその食事風景を見た他の面々はゆっくりとタローの元に近づき空の器を差し出す。


タローは手際よく差し出された器によそっていく。トマト煮をよそられ食べた面々はそれぞれの反応を示す。リカルドのように泣くもの、あまりのうまさにニヤけるもの、思考が停止したように動かなくなるもの、驚愕のあまり頭を掻き毟るもの、スプーンが止まらなくなるもの。


ただ一つだけ同じものは俺にもくれとタローの元へと群がること。食べ終わったものはもっと食べたいとタローの元へと行き、食べ終わっていないものはもっと食べたいと無くなる前に再び並ぶ。


それから30分もしないうちに大鍋は空になった。人々は皆満足そうにしている。ただ満足していないものも数名いた。


『おい…我はまだ2杯しか食べていないぞ。』


「わ、私は1杯しか…」


「フィーもポチも文句言うなよ。俺なんて食べてもいないぞ…」



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