第四十三話 新たな始まり
今日の投稿でまた少し時間が空きます。
できるだけ早く投稿します。
ある程度予想はできたがまさか自分たちの食べる分までなくなるとは考えてもいなかったタローたちはリカルドたちがもともと用意していたものを食べることにしたのだが、ポチだけはわがままを言ったため仕方なくポチの分だけ新しいものを用意した。とは言ってもトマト煮を作る時間はないのでただのトマトサラダである。具材はカットされたトマトだけなのでサラダというのもおかしい気はするが…
しかしポチは何の文句も言わず、というよりむしろ喜んでいた。その様子を見ていた先ほどまでトマト煮を食べていた面々はその様子を羨ましそうに眺めていた。一度でもトマトを食べてしまえばその魅力にとりつかれてしまう。なんせタローもその一人だからその気持ちがよくわかる。
タローとフィーは地べたに座り食事をしていたその時、リカルドとウッドがタローたちの前に腰掛けた。
「まさかここまでのものを作り上げていたとはな……私を超える才能ということか。」
「さっきまでは成功したというのも信じられなかったけど、あれを食べたら納得だよ!あれは一体どこで見つけたんだい!」
リカルドはただ感心していたがウッドはトマトについて詳しく知りたいようだ。タローは話すか話さないか悩むが今ギルドの規約違反をしているのにここで話すのはまずいと思った。おそらく正直に話してもきっと黙ってくれるだろう。しかしそれでは万が一バレた時に彼らにも責任が及んでしまう。そうなったらまずいと思い誤魔化すことにした。
「企業秘密ですよ。それよりもイチはどうしたんです?さっきから探しているんですが姿が見えないんですけど…」
「まぁそういった秘密を離さない農家も多いから仕方ないのかな……イチならもうここにはいないぜ。かれこれ一年前に農地を買ってここを卒業したよ。」
「そうだったんですか!あいつの予定だともう少しかかるようなことを言っていたと思ったんですけど。」
「共同出資ってやつだよ。何人かの農家が集まって一つの土地を金を出し合って買ったんだ。それなりに良い土地だったらしいからきっと成功するんじゃないかな。」
このイチのとったこの方法は良い点もあるのだがいずれ農地のことで揉め事が起こりやすいためあまりやろうとする人間が集まらない。だがその時に限っては上手く集まったようだった。本当は会えるんじゃないかと楽しみにしていたのだが人づてにこうして順調にやっていることを聞けただけでも嬉しくなる。
「場所はここから随分離れてたな。移動するだけで時間がかかってしょうがないってぼやいてたな。俺の部屋に住所をメモした紙があるから仕事が終わったら後で教えるよ。」
「あー…すみませんウッドさん。俺も今日までに自分の農地に戻りたいんでいずれ時間のあるときにまた来ます。」
「…もう行くのか?」
「すみませんリカルドさん。本当はゆっくりしたいんですがやらなきゃいけないことも多くて。また今度来る予定なのでその時は是非ともよろしくお願いします。」
本当にゆっくりとここに残って昔の思い出話などしたいタローであるが、農地を増やしトマトの作付け面積をかなり大規模に増やしたため苗もどんどん育てる必要がある。それに新しく別の農地も買っている。それにも手をつけなければならないのでやることだらけなのだ。
「忙しそうだな……だが忙しいことは良いことだ…」
「ありがとうございます。じゃあすみませんがもう行きます。今から出れば今日中に帰れるらしいので。ではまた。」
そう言ってリカルドたちの元を離れポチの元へ寄っていく。ポチの背中にはすでにフィーが乗っており準備は完了しているようだ。
『もう良いのか?』
「おう!元気にやっていることも報告できたからな。今から気持ちを切り替えて仕事に集中しないとな。」
『ではさっさと乗れ。行きは人目を気にしてゆっくり行ったが帰りは人のいないところを少し飛ばしていくからな。落ちるんじゃないぞ。』
「へいへい。じゃあお願いするわ。」
行きはタローが道を確かめながら移動したため随分と時間がかかったが帰りは問題ない。ポチも従魔契約を済ませてあるので人目についてもなんとかなる。なので、帰りは行きの倍以上のスピードで帰る。半日で帰ることができるのはポチにしかできないことだろう。
辺りが薄暗くなり始めた頃タローたちは家へとたどり着いた。スピードも普段ヴァンパイア王国に行く時とあまり変わりがなかったので特に振り落とされるなどの問題もなかった。ただタローたちの帰還に気がついた他のヴァンパイアの子供達に囲まれて色々質問攻めに会い、夕飯が遅れてポチが不機嫌になったくらいが問題だったと言えるだろう。
翌日、タローとポチは早速新しい農地の開墾に取り掛かった。とは言ってもその開墾の風景はなんとも異様な開墾だった。
「あーもう少し右のほう…そうそうその辺だわ。深さは50cmくらいかな?いつも通り粗めの土の塊になるように頼むな。それと…」
『わかっておる。火力を上げすぎて土をガラス化させないようにだろ?そのくらい慣れておるわ。ふん!』
ポチの体から溢れ出た魔力がタローの指定通りの場所の大地を穿ち、火炎が巻き起こりさながら世界の終わりとも言えるような風景が数分続いた。その光景は唐突に終わりを告げ舞い上がっていた土があるべき場所に帰る。砂埃までもが生きているかのごとく蠢き大地へと戻っていく。そんななんとも幻想的な風景の後には一つの綺麗に耕され均された畑があった。
「うん!さすがはポチだ。完璧な農地だよ。土には多く魔力が含まれているけど栄養素はほぼない。これほどトマト栽培に適した土地はないね。よっ世界一のトマト農地づくり!」
『ふん!褒めても何もでんぞ。いいから残りの畑も耕すぞ。』
颯爽と移動するポチであったがその尻尾はブンブンと音が出るほど激しく振られている。ポチは
かなり感情が外へ出やすいので意外と扱いは簡単だ。褒めるだけ褒めて、怒った時にはトマトをあげる。これさえ覚えておけば誰でもポチが飼えそうだ。
その後も地響きを起こしながら開墾していく。その光景に始めは驚いていたヴァンパイアの子供達も次第に慣れてしまい普通に作業をこなしていた。
「これでラストだな。これが終わったらそろそろ昼時だし飯の準備でもするか。」
『そうだな。それにしても今耕した農地全てにトマトを植えるとなるとものすごい量が収穫できそうだな。あまり作りすぎても価値がなくなるのではないか?』
「う〜ん…今トマトの生産量が少なすぎてこのままだとストックがなくなりそうだったくらいだしな。それにこれだけ多く作れば価値を下げてみんなに食べてもらうこともできるようになるしな。田中一郎だってみんなに食べてもらった方が嬉しいに決まっているさ。」
『ふむ。一郎ならばきっとそれを願うだろう。それがいいな』
尻尾を見るまでもなくわかるポチの上機嫌ぶり。田中一郎のことを考えるといつもこうなる。そんな様子にタローは若干の嫉妬を覚えるようになった。
そんなことがありながらも最後の一つの畑を仕上げたタローたちは家へと戻り食事の準備をする。食事の支度をしながらタローは今後の計画を立てていく。考え事をしながらでもその手の動きは止まることなく機械のように作業を続けていく。
食事を完成させたタローは全員を集合させる。そしていつも通り食事を始める。そして食事の終わりにいつもと違って食器を片付けようとした全員を呼び止める。
「大事な話があるから聞いてほしい。実はこれから何日に渡るかわからないけど日中俺はここにいなくなることが多くなる。だから何か起こった時はフィーの指示に従ってほしい。」
「どういうことですか?フィー姉の指示に従うのは問題ないんですけど理由が知りたいです。」
フィーを除いた全員が理由を聞きたそうにしている。実はフィーには昨日の帰り道の途中で全て説明してあるため何の疑問も抱いていないのだ。
「みんな今日までよく働いてくれたからな。今まで秘密にしていたことを教える。実は今育てているトマトはおそらく一度はこの世界から消えた作物のひとつなんだ。俺はそれを発見しこうして育て上げた。」
全員が薄々感づいていたようだが改まってこう言われるとやはり驚く。そして自分達が育て食べているものの凄さを実感する。
「トマトはこれまで俺にしか育てることができなかった。だけど今ではその方法をここにいるみんなが理解してくれている。まだまだ細かいところは難しいかもしれないけど問題が起こらない限りみんなは対処できるはずだ。」
タローからの言葉にここにいる全員が素直に喜ぶ。今まで孤児として人からさげすまされていたのが今ではこうして立派なトマト農家になっている。今では貴族たちにも注目され、街を歩けば人が集まるのだ。誰がこんなことを予想しただろうか。
「今ならみんなに任せても心配はない。だから俺はまた次のこの世界から消えてしまった野菜を復活させる。それにはそのこと一つだけに集中しなくちゃいけない。だからトマトはみんなに任せたい。」
新たにこの世から消えてしまった野菜の復活。一体どれほどの偉業か計り知れない。だがもしかしたらその野菜はトマトのように国を驚かすようなものすごくうまいものなのかもしれない。そうなると途端に興味が湧いてくる。
「そ、その復活させる野菜はなんていうんですか?」
「その野菜の名は…キュウリという。」
ということで次回から新章開始です。
頑張って面白い話にしたいと思います。




