第三十八話 才能
すみません昨日は完全に投稿するのを忘れてました…
「うあぁぁぁ…俺なんて……俺なんてただのチキンの馬鹿野郎だ……」
「そんなことないですよ。いいとこもありますよ。」
「フィー……もしかして…俺のこと…」
「あ、それはないです。」
「うあぁぁぁぁぁぁ」
『まったくいい加減にせんか。それよりこの黒いのと赤いのはどっちが良いと思う?』
「うあぁぁぁぁぁぁ……赤。」
失恋による傷心中のタローは無理やり連れてこられポチの首輪探しをしていた。なかなかいい店がなかったのだが途中でポチがいい店を見つけ黒か赤で悩んでいたようだ。タローは赤を選んだがポチもそう思っていたようで満足げな表情である。フィーに会計を任せ店の前でうずくまっているタローは軽くあしらわれている。
「もういい加減にしてください。もう直ぐギルドマスター達と食事ですよ。いい加減気を取り直してください。元々脈なんてなかったんですから。」
「うあぁぁぁぁぁぁ。フィーが傷口に塩を塗りたくってくるよぉぉ。助けてよ〜ポチえもん。」
『前にも言ったがその呼び方はやめよ。まあフィーの言う通りだ。他にいい女を探せ。』
「味方がいねぇよぉぉ。世知辛えよぉぉ。」
『そんなことより首輪を買ったのだから早くやることをすませんか。』
「そんなことって言われたぁぁ。やればいいんだろぉぉ」
「……人間の男ってめんどくさいですね」
半泣き状態のタローはポチの首輪にギルドで預かった登録用の魔法石をかざす。すると首輪が発光しだし文字が浮かび上がる。本来これをつければ街中での暴走などを簡単に止められるのだがポチの場合効果がないのでただそういう風に見えるだけになっている。
一般の人が見分けるにはその登録証となっている部分を見るだけでいい。見ればかすかに発光しているのがわかる。発光していれば登録した従魔で発光していないと登録していないという風になっている。
これで登録を終えたので問題なく街中を歩くことができる。今まではタローがつきっきりでいたため問題はなかったがそれでも時々衛兵が来て事情聴取を軽く行われた。
「あらかた買い物は終わりましたね。他に何かないでしょうか?まだ約束の時間にはだいぶあるんですが。」
「うあぁぁぁぁぁぁ…本でも買いに行くか。みんなに教養をつけるためにも重要だし。」
「それはいいですね。でもいい加減そのうああやめてください。ひっぱたきますよ。」
「あい…」
「返事ははいです。」
「…はい」
この会話だけ聞いているとどちらが偉いかわからなくなる。一応言っておくがタローの方が圧倒的に偉い。
そのままタロー一行は裏路地の怪しげな店に来ていた。ポチが入るのには狭すぎるので外で待ってもらうことにした。
「おばば〜久しぶり〜〜生きてるか〜〜〜?」
「なんだいその生意気な口調は……おや?久しぶりじゃないかい。遠くの農地に行ったと聞いてたけど生きて帰ってこれたかい。だけどうちでは雇えないからね。諦めて帰んな。」
「甘いなおばば。俺は成功して帰ってきたんだ。」
「おやおやそうだったかい。じゃあ今までの付け替えしてもらおうか。金貨18枚。耳をそろえてきっちり返してもらうよ。」
「はははは!問題ない!!それどころか何冊か本を買っていくぞ!!!というわけで少し見させてもらうわ。あ、この後ろのはうちの従業員。」
「お、お邪魔します。」
怒涛の勢いにフィーはついていけない。ただタローとここの店主はずいぶん仲が良いと思えるくらいだ。タローが本を買うというのに目を丸くして驚いている店主は魔女と呼ぶような格好でずいぶんとしわくちゃなおばあちゃんである。従業員と紹介されたフィーを見て驚きが止まらないようだ。
そんなことも御構い無しにタローは本を物色していく。フィーも続こうとしたのだが店主がフィーに近づいてくる。
「お前さんは…ヴァンパイアだね?それも混ざりっ気がない。それに従業員って話だけどちょっと話を聞かせちゃあもらえないかい?」
「は、はい…」
なんとも言えぬ雰囲気にフィーは思わず頷いてしまう。その様子を見てヒッヒッヒと笑う様子を見てさらに緊張で固まってしまう。
「そんなに固まる必要はないよ。私のことは…あの小僧と同じようにおばばと呼んでおくれ。そんなことよりあの小僧との話をしておくれ。」
「わかりました。では…」
フィーはトマトのことを隠しつつ今までの経緯を説明する。なかなかトマトのことを隠すのは難しかったが途中でおばばが察して隠したままでいいよと言ってもらってからは楽に話が進んだ。
「なるほどねぇ…小僧がそんなになっているとは驚きだよ。このおばばでも読み間違えることがあるんだねぇ。」
「読み間違えるとは?」
「あの子は農業に関する才能がなかったからすぐに諦めて帰ってくると思ったんだよ。そうしたらうちで雇おうと思っていたんだが残念だったねぇ。」
ヒッヒッヒと笑いながらその表情は本当に残念そうである。そんなにも気に入っているのかと思ったがそういうことではないらしい。
「あの子はねぇ。一種の天才なんだよ。ありとあらゆる言葉がわかる。それは失われた過去を解き明かすことができるんだがあの子は全く興味を持たなかった。だからうちに来ても農業に関する最新の本なんかを読み漁って帰るもんだから…はぁそうかいあの子は農業で成功したのかい。」
フィーもタローからタローのスキルについて聞いたことがある。最初は便利だなくらいで考えていたが、今おばばの話を聞いてその解釈を改めた。タローは考古学者にでもなればおそらく世界一になれるだろう。それには勉強が必要なのだがきっとタローはそういうことには手を出さない。そう考えるとなんとももったいないことをしている。
「確かにもったいないですね。私からもうまいこと興味を持たせるようにはしてみます。」
「おやおやそうかい。わかってくれて嬉しいよ。」
嬉しそうに微笑むおばばを見てフィーも微笑む。フィーは孤児だったためおばばのことをおばあちゃんのように思えるのかもしれない。フィーはタローに古い文献を読ませる方法を考えるがなかなか思いつかない。下手なことをすれば二度と呼んでくれないかもしれない。そう思うといい方法がなかなか思い浮かばない。
「お〜いおばば。この本もらってもいいか?」
そんな話をしているとはつゆ知らずタローは何冊か本を持ってくる。持ってきた本を見ておばばは再び驚く。
「その本は…ど、どうしてその本を?」
「どうしてって…子供たちに読ませるから物語とかそういう方がいいかなって思ったんだけど。もしかして売り物じゃないとか?」
「…その本なんて書いてあるんですか?見たことも無い字なんですけど。」
タローが持ってきた本はどれもフィーが今まで見たことも無いような文字であった。確かにフィーはちゃんと勉強をしたわけでは無いが孤児院にいた頃に多少は学んでいる。だから多少はわかるのだがこの文字は一切わからなかった。
「あ、そっか。こっちの方の文字で探さないといけないのか。面白そうなタイトルだったから持ってきたんだけど考え直しだな。」
「ま、待つのじゃ。その下から3番目の本も読めるのか?」
おばばは驚愕の表情でタローに聞いている。タローはそれを聞いて上の本をどかしおばばが言った本を入る。
「ああ、この本か。獣神伝説だろ?ポチもいるしちょうどいいかなって思ったんだけどまあみんなが読めないならいいや。」
「お、お主は……それがどういう意味かわかっておるのか?」
おばばは震える声で何とか話した。タローはその様子を見て何だよと言わんばかりの表情である。フィーはどういうことか分からずオロオロしている。
「お主が読んだその題名を書かれている文字は今は失われた王国のものじゃ。学者たちが日夜解読を進めているその文字をあっさりと…」
「へぇ〜〜…そうなんだ。」
「……軽すぎません?」
「だってそうは言われても普通に読めるから感動も何もないんだけど。それにポチから聞いたら読まなくてもある程度わかるだろうし。」
それはそうなのかもしれないが今起きたことは世紀の大発見とも言えることである。この世界においては第一次産業以外は軽んじられているが考古学は重要な分野の一つである。それをうまく理解していないタローはどれだけ凄いことなのかをまるで理解していない。
「先ほどから言っているポチとはなんなのじゃ?」
「ポチはポチだよ。今外いるから顔だけ出すように言うよ。おーいポチ!ちょっと顔だけ出して!」
『なんだ急に?荷物持ちなら必要ないだろう?むっ!ずいぶんと埃っぽいな。』
器用に前足で扉を開けて顔だけ突っ込んだポチの顔を見ておばばは卒倒しそうになる。タローはどうしたのと言いたげな表情だが本来おばばくらいの反応は当たり前なのである。とは言ってもそれは相手が獣神であるということを理解していたらという話なのだが。
その後倒れそうなおばばをフィーが受け止め軽い騒ぎが起きるのだがタローとポチは何処吹く風で眺めていた。




