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第六感の魅力

 みすずとデイブは探偵事務所で向かい合っていた。


「どうした? みすずの番だぞ」


「くっ」


 それぞれの手に握るのは、数枚のトランプカード。二人は今、ババ抜きの真っ最中だった。


「みすずが欲しいのはこのカードだ」


 そう言ってデイブは手札の一枚をみすずに近づける。


「揺さぶろうったってそうは行きませんよ」


「とんでもない。……でも選ぶのは自由だよ」


「私に第六感があれば……!」


 呻き、デイブが差し出していない方のカードを引いたみすずは、見事に勝負に負けた。


「だから言ったのに」


「この程度の真偽も見抜けないなんて……!」


「少なくともみすずに第六感は無いみたいだな」


「ぐぬぅ……でも第六感って、具体的になんでしょう?」


「ぐたいてき?」


「ほら、未来予知とかテレパシーとか色々あるじゃないですか。例えばさっきのババ抜きでテレパシーができればデイブが嘘をついているかわかったはず。どれかひとつくらい習得してみたいじゃないですか」


「たしかにな。どんな能力かで話は変わってきそうだ」


「でも勝負ごとで片方だけ第六感を持っていたらフェアじゃありませんよね。勝負はフェアでこそスリルがある」


「本当か? 分の悪い賭けでもみすずなら楽しんでいそうなものだが」


「へぇ。私をわかってるじゃないですか。……でもその通り。第六感を持っている人に勝つなんて、できたら相当楽しそうではありますね」


 ニヤリと笑うみすずに、デイブは言った。


「しかし、全員に第六感があれば勝負にすらならないだろうな」


「それはイヤだなぁ。……じゃあ霊能力とか占星術はどうです? 第六感と何が違うんでしょうか」


「霊感は第六感と同じ意味じゃないか?」


「目に見えないものを見るという意味では、同じかもしれません」


「占星術は、五感の延長線というより、学問的なものだろう」


「なるほど。この二つは第六感を解りやすくしただけなのかもしれないし、後天的に第六感のようなものを得る手段なのかもしれませんね。どちらにせよ、第六感を持っていない人間でも、その診断を受けることによって、疑似的に第六感の効果を得られるのはそそられますね」


「みすずは超常が絡むと早口になるよな」


「仕方ないでしょう? 言いたいことが頭からこぼれ落ちそうなんだから」


「どんな力が一番第六感らしく、使いやすいだろうか」


「まずは細分化して考えてみましょう。第六感と言えば、五感以外でモノを知覚すること。これだと霊感や未来予知も第六感に含まれますが、どちらも視覚に頼っているイメージですね」


「まるで見たことがあるような口ぶりだな」


「ふふん。これでも予知くらいしたことありますよ」


「本当か?」


「ええ。遅刻する夢を見て、実際に遅刻したことがあります」


 ドヤ顔で言うみすずに、デイブはため息をついた。


「未来を見ても回避できないんじゃ役に立たないなぁ」


「夢のおかげで心の準備はできましたよ」


「じゃあサイコキネシスはどうだ?」


「それは第六感ではないでしょう。サイキックの分野ですね」


「違いがよくわからんな」


「平たく言えば第六感は見たり聞いたりする受け身な能力で、サイキックは物を動かすような働きかける能力のことを言います」


「ふうん?」


 首を傾げたデイブは、トランプカードをいじりながら続けた。


「未来を予知した結果変えることに成功しても、他人からは予知が外れただけってことにならないか?」


「んん……? まぁ他人からしてみれば気付きようはありませんね。その理屈で言えば霊感も同じです。街中で幽霊を見かけても人間と見間違えて気付かない場合があるかもしれません」


「というか結構ありそうだよな。俺たちだって幽霊を見ているかもしれない」


「ソレと気付かないうちに実は――!? ありそうですね」


「それが当然の感覚的すぎるんだろう。生まれつき持っているのなら尚更ね」


「つまり……能力を自分で発揮した感覚がないだけ……?」


「よかったじゃないか。誰でも能力者の可能性があって」


 冗談めかして言うデイブに、みすずは眉間に皺を寄せた。


「実感が無いんじゃ面白くありませんね。それに、似たようなことなら素質が無くてもできそうですし」


「というと?」


「わざわざ未来なんて見なくても意識的に危険は避けられるはずなんです。たとえば山に行かなければ遭難はしません。家に引きこもっていれば、そもそも危険が少ないんですから」


「ううむ。たしかに……交通事故には遭ったことないな」


「もし第六感所持者以外、入山禁止の山とかあったら非難殺到するでしょうね」


 みすずの例えに、デイブは苦笑交じりに口を開いた。。


「なんだそりゃ。即死トラップ満載のアスレチックかよ」


「でも残念です。第六感は日常生活では意味がないなんて」


「さすがに言いすぎだろう」


 デイブは一度言葉を区切ると、ふとみすずを見て言った。


「しかし、どうしてそんなに第六感を欲しがるんだ? テレパシーが無くても携帯があるし、遺物だって色々持っているじゃないか」


 何がそこまで人を惹きつけるのか。デイブの疑問にみすずは得意げに笑った。


「ふふ。簡単なことですよ……」


「な、なんだよ」


 わざとらしく言葉を溜めたみすずに、デイブは怪訝な瞳を向ける。


「第六感に覚醒する瞬間が楽しそうだからです!」


 ビシッとポーズを決めるみすずを、デイブは幽霊でも見たかのように眺めていた。


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