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ママ友に夫も居場所も奪われるまで  作者: 熊猫ぱんだ


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壊された側の証言

 知らない番号からの電話は、それきりかかってこなかった。

 けれど、頭の中からは消えない。

 前にも同じことをされた人がいる。

 その事実だけが、何度も繰り返される。

 園にいても、家にいても、ずっとつきまとっていた。


 「ママ?」


 呼ばれて、はっとする。

 子どもが不安そうに見ていた。


 「大丈夫だよ」


 そう答えるしかなかった。


 昼過ぎ、スマホが震えた。

 メッセージだった。

 知らない番号。

 昨日の人だとすぐに分かった。


 『突然すみません』


 短い一文。

 しばらく画面を見つめてから、返信した。


 『あなたは誰ですか?』


 すぐに既読がつく。

 少し間があってから、返信が来た。


 『名前はどうでもいいです』


 その一文に、少しだけ警戒が強くなる。


 『本当にあなたのことが心配で連絡しました』


 迷いながらも、指が動く。


 『何を知ってるんですか?』


 既読がつくまでの数秒が、やけに長く感じた。


 『あの人は、同じことを繰り返します』


 その一文に、息が止まる。


 『最初は必ずターゲットを一人決める』

 『近づいて、信用させて、全部知る』

 『それから、周りを固めていく』


 文字を追うごとに、手が震える。

 全部、当てはまっている。


 『気づいたときには、もう遅いです』


 その言葉が刺さる。


 『あなたも、もうかなり進んでます』


 思わずスマホを握りしめた。

 否定したいのに、否定できない。


 『どうしてそんなことをするんですか』


 送ってから、少し後悔した。

 それでも、返事は来た。


 『理由は分かりません』

 『でも、一つだけ確かなことがあります』


 指が止まる。


 『奪うのが目的です』


 背筋が冷えた。


 『家庭も、立場も、人間関係も』

 『全部、入れ替わるみたいに』


 息が苦しくなる。


 『私のときもそうでした』


 その言葉に、現実味が増す。


 『気づいたときには、私の居場所はなくなってました』


 胸が締めつけられる。


 『旦那も、友達も、周りの人も』

 『全部、あの人の方に行きました』


 呼吸が浅くなる。


 『そして最後に、私が悪いことになってました』


 スマホを持つ手が震えた。

 まるで今の自分の状況をなぞっているみたいだった。

 しばらく何も打てなかった。

 やっとの思いで送る。


 『どうすればいいですか』


 既読がつく。

 やがて返信が来た。


 『証拠を残してください』


 短い一文。


 『全部、記録しておいた方がいいです』

 『後で必要になります』


 現実的な言葉だった。


 『それと』


 続きが表示される。


 『絶対に一人で戦わないでください』


 その言葉で、指が止まった。

 もう一人だと、思っていた。


 『信じられる人を一人でも見つけてください』


 画面を見つめたまま、何も言えなかった。

 そのとき、背後で声がした。


 「真央さん」


 振り向くと、美月が立っていた。

 いつの間にか、すぐ近くにいる。


 「スマホ、見てました?」


 穏やかな声。


 「……ちょっとだけ」


 とっさに画面を伏せる。


 「最近、ずっと誰かとやり取りしてますよね」


 その一言で、心臓が跳ねた。


 「気のせいじゃないですか」


 できるだけ平静に返す。


 「そうですか」


 少しだけ間があった。


 「何か困ってること、ありますか?」


 またその言葉。

 今は違って聞こえる。


 「別にないよ」


 短く答える。

 それ以上、話したくなかった。


 「無理しないでくださいね」


 それだけ言って、美月は離れていった。

 背中に視線を感じる。

 スマホを握りしめる。

 さっきの言葉が、頭の中で繰り返される。


 証拠を残す。


 ゆっくりと息を吐いた。

 やるしかない。

 怖い。

 でも、それ以上に。

 このまま終わりたくない。

 初めてはっきりと決めた。

 自分で、確かめる。

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