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ママ友に夫も居場所も奪われるまで  作者: 熊猫ぱんだ


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仕掛けられた罠

 昼前、教室の前がざわついていた。

 普段より人が多い。

 空気が落ち着かない。


 真央が近づくと、何人かの視線が一斉に向いた。

 すぐに逸らされる。

 でも、分かる。

 何かが起きている。


 「どうしたの?」


 近くにいた母親に声をかける。

 一瞬だけ迷った顔。

 それから、小さく言う。


 「先生に呼ばれてる人がいて」


 胸がざわつく。


 「誰?」


 聞いた瞬間、答えは分かっていた。


 「……真央さん」


 やっぱりだった。


 「理由、聞いてる?」


 「ちょっとだけ」


 視線を下げる。


 「トラブルの件でって」


 トラブル。

 その言葉が重く響く。


 (来た)


 そう思った。

 園側を巻き込む。

 一番やられたくない形。

 逃げ場がなくなる。


 「ありがとう」


 短く言って、職員室へ向かう。

 足取りは重い。

 でも、止まらない。

 ドアの前で一度深呼吸する。

 ノック。


 「失礼します」


 中に入る。

 担任と、もう一人。

 主任らしき先生が座っていた。

 表情が固い。


 「お時間大丈夫ですか」


 形式的な言い方。


 「はい」


 椅子に座る。

 空気が張り詰める。


 「最近、少しご相談がありまして」


 主任が口を開く。

 言葉を選んでいるのが分かる。


 「保護者間でのトラブルについてです」


 視線が向けられる。

 逃げられない。


 「具体的には」


 一瞬、間があった。


 「無断での撮影や、つきまといといったお話が出ています」


 心臓が強く打つ。


 (やっぱりそれ)


 あの写真。

 あの流れ。

 全部繋がる。


 「何か思い当たることはありますか」


 静かな声。

 でも、圧がある。

 真央は一度だけ目を閉じた。


 (ここでどうする)


 否定するだけでは弱い。

 でも、全部を話すタイミングでもない。

 ゆっくりと口を開く。


 「写真の件だと思います」


 はっきり言う。

 先生たちの表情が動く。


 「ただ、あれは私が撮ったものではありません」


 続ける。

 嘘は言っていない。

 あの写真は、自分が撮ったものじゃない。


 「そうなんですね」


 主任がうなずく。

 でも、完全には信じていない顔。


 「ただ、外で撮影している姿が確認されていて」


 言葉が続く。


 (そこを使うんだ)


 冷静に理解する。


 「それについては」


 ゆっくりと話す。


 「事実です」


 あえて認める。

 空気が変わる。

 先生たちが顔を上げる。


 「理由があります」


 そこまで言って、止める。

 全部は言わない。

 まだ。


 「どのような理由ですか」


 当然の質問。

 数秒、考える。


 (ここは)


 「個人的なトラブルに関わるため、ここで詳細は控えたいです」


 静かに答える。

 先生たちが視線を交わす。

 迷っているのが分かる。

 完全には踏み込めない。

 でも、放置もできない。


 「ただ」


 続ける。


 「誤解されている部分が多いと思います」


 はっきり言う。


 「今後は、園に迷惑をかけない形で対応します」


 それだけ伝える。

 嘘ではない。

 でも、全部でもない。

 数秒の沈黙。

 主任が小さく息を吐いた。


 「分かりました」


 完全な納得ではない。

 でも、強く踏み込めない。

 その判断。


 「ただし」


 続ける。


 「今後同様のことがあれば、こちらとしても対応を検討します」


 牽制。

 当然だった。


 「はい」


 短く答える。

 話はそこで終わった。

 職員室を出る。

 ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。

 廊下に出た瞬間、空気が軽くなる。

 でも。


 (完全に仕掛けてきた)


 園を巻き込む。

 公式な場に引きずり出す。

 これが狙い。

 ここで崩せば、全部終わる。

 でも。

 ゆっくりと息を吐く。


 (耐えた)


 今回は。

 ギリギリで。

 そのとき、遠くに美月の姿が見えた。

 こちらを見ている。

 笑っている。

 何もなかったように。


 でも。

 その目の奥。

 はっきりと分かる。


 (次はもっと来る)


 静かな確信。

 スマホを握る。

 証拠。

 味方。

 まだ足りない。

 でも、崩れ始めている。

 だから。


 (ここで止まらない)


 次は、こっちが仕掛ける。

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