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ママ友に夫も居場所も奪われるまで  作者: 熊猫ぱんだ


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消される証拠

 帰宅してすぐ、真央はスマホを開いた。

 さっき撮った写真を確認する。


 確かに、撮ったはずだった。

 健太と美月。

 同じテーブル。

 同じ時間。

 はっきりと写っていた。

 それなのに。


 「……ない」


 思わず声が漏れた。

 スクロールする。

 もう一度、上から確認する。


 何度も。

 何度も。

 でも、ない。

 

 さっき撮ったはずの写真だけが、消えている。

 昨日の分は残っている。

 今日の分だけが、きれいに。


 「なんで……」


 手が震える。

 削除した覚えはない。

 消した記憶もない。

 それなのに、なくなっている。


 (ありえない)


 ありえないはずなのに、現実だった。

 頭の中が一気に冷える。

 さっきの言葉が、よみがえる。

 困ること、何もない。


 「……まさか」


 スマホを握りしめる。

 誰かが触った?

 そんなはずはない。

 ずっと自分が持っていた。

 でも。


 (じゃあ、どうやって)


 考えれば考えるほど、分からなくなる。

 そのとき、通知が鳴った。

 メッセージ。

 美月だった。


 『今日は寒かったですね』


 何事もなかったような一文。

 背筋がぞくりとする。


 『風邪ひかないようにしてくださいね』


 優しい言葉。

 でも、タイミングが異常だった。


 (知ってる)


 さっきのことを。

 全部。


 スマホを持つ手が震える。

 返信できない。

 何も打てない。

 ただ、画面を見つめる。

 

 そのとき、もう一件通知が来た。

 グループLINE。

 嫌な予感がして、開く。

 そこにあったのは

 さっきの店の写真だった。


 でも、違う。

 写っているのは

 自分だった。

 店の外から中を見ている姿。

 スマホを構えている。

 完全に、不審者のように。


 「……嘘でしょ」


 声が震える。

 どうやって撮ったのか分からない。

 いつの間に

 どこから

 考える余裕もない。

 メッセージが流れる。


 『え、これ誰?』

 『やばくない?』

 『盗撮してる?』

 『ちょっと怖いんだけど』


 息が苦しくなる。


 『もしかして同じ園の人?』

 『見たことあるかも』

 『あの人じゃない?』


 名前は出ていない。

 でも、時間の問題だった。


 「違う……」


 小さく呟く。

 でも、その声は誰にも届かない。

 スマホを握りしめる。

 震えが止まらない。


 (やられた)


 はっきり分かる。

 写真を消されて

 代わりに、自分の姿をばらまかれた。

 完全に逆転されている。


 そのとき、個別メッセージが来た。

 また、美月。


 『さっきの、大丈夫ですか?』


 息が止まる。


 『誤解されてるみたいで心配です』


 指が止まる。

 優しさの形をしているその文章。


 (全部、あんたがやったくせに)


 頭の中で、はっきりと言葉になる。


 『何かあったら、私も説明しますよ』


 その一文で、背筋が凍った。

 説明する側に回るつもりだ。

 自分を守るために。

 そして

 私を潰すために。


 スマホを強く握る。

 悔しさで、涙が滲む。


 でも

 そこで止まった。

 ゆっくりと息を吐く。


 (まだ終わってない)


 そう思えた。

 昨日の写真は残っている。

 今日の分は消された。

 つまり


 (触れられてる)


 私の行動も。

 証拠も。

 全部。

 見られている。

 でも、それは逆に


 (見てるってこと)


 相手も、動いている。

 隠れているつもりで。

 でも、確実に痕跡がある。

 涙を拭う。

 スマホの画面を見つめる。


 さっきのメッセージ。

 さっきの写真。

 全部。

 今度は、こっちが残す。

 消される前に。

 確実に。

 ゆっくりと指を動かす。

 

 スクリーンショット。

 保存。

 もう一度。

 保存。


 震えは止まらない。

 でも、止めなかった。


 (次は負けない)


 静かに、そう思った。

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