第86話 脱出
ミセルを先頭に、仲間たちは一斉に駆け出した――その瞬間、ゴゴゴゴゴと地鳴りが響き、城全体が激しく揺れだした!
「いかん! 急げ!」ミセルが叫ぶ。
あわてて本丸を飛び出した一行の目に映ったのは、三の丸が音を立てて崩れ落ちていく光景だった。
とっさにミセルは正面以外の脱出口を思い描くが、探す余裕はないと即座に判断する。危険を承知で、来た道を引き返すことにした。
揺れる地面、頭上から降り注ぐ瓦礫、燃え盛る炎と渦巻く煙――城はすでに地獄絵図と化していた。
それでも五人は怯むことなく駆け抜ける。手を取り合い、声を掛け合いながら…。
――
仲間たちには永遠にも思える時間を経て、ようやく城門が見えた。
馬留にはルドルフとエイミーが、振動と轟音に耐えながら待っていた。
「急げ! 城が崩れる! 少しでも遠くへ!」
ミセルはルドルフに飛び乗りざま怒鳴り、サトリ、リーナ、アモンは荷馬車に飛び込む。
「よく耐えたな、エイミー。もう少しだけ頼むぞ!」
ローレンはエイミーをなだめながら、一気に駆け出した。
背後で轟音とともに城全体が崩れ落ちる。巨大な砂ぼこりが天を覆い、一行の姿はその中に呑み込まれた。
――
どれほどの時間が経っただろう。
砂ぼこりが静まると、そこにはサトリ、リーナ、ローレン、ミセル、アモンの五人が立っていた。
互いに顔を見合わせた瞬間、誰からともなく笑いがこぼれる。
「ははは、リーナ。可愛い顔が台無しだね!」
「うふふ、サトリだって煙突掃除したみたいよ。」
「あはは、騎士様、さすが“ホコリ”まみれだね。」
「ふふふ、行商人、ホコリで商売してみるか?」
そして最後には皆で大笑いした。その笑い声は、まるで天にも届くかのようだった…。




