第73話 火葬
――戦いは終わった。
ヴァルザークの術が解け、屍の兵士たちは糸が切れたように崩れ落ち、動かなくなった。粉雪混じりの北風だけが、静まり返った戦場を吹き抜けていた。
「ねぇ、この人たち、どうするの?」
リーナが、おそるおそる口を開いた。
「そうだな……普通なら、埋葬してやるのが騎士の情けなんだが……」
ミセルは眉をひそめ、逡巡しながら答えた。
「埋葬しよう」「埋葬だ」
サトリとローレンが、ほとんど同時に声を上げた。
「この人たちは、静かな眠りを無理やり覚まされて、辱めを受けたんだ。僕たちの手で、きちんと葬ってあげよう」
サトリは、涙をこらえるようにして言った。
「きっと、元はどこかの軍隊で勇敢に戦った人たちだ。……葬るべきだ」
ローレンは、いつになく強い調子だった。
ミセルは、感情的な言葉を吐くローレンに一瞬たじろぎながらも、静かにうなずいた。
「……わかった。だが、我々の手でこれだけの数を埋めるのは無理だ。私の剣で火葬にしよう。少しでも、ましな形で弔うにはそれが現実的だ」
「少し手間はかかるが、それで構わないか?」
仲間たちは、うなずいた。
「よし。では今日は体を休め、明日から作業に入ろう」
そうミセルが宣言すると、五人の胸の光は、ひととき静かに消えていった。
――
翌朝。
五人は黙々と、陰惨な作業に取りかかった。ミセルの炎の大剣で焼きやすいよう、屍の兵たちを運び、積み重ねる。その作業を、ひたすら繰り返す。
何体もの兵士を運び、剣で焼き払う。気が滅入る作業にも、次第に身体が慣れていくと、少しずつ会話が戻ってきた。
「なあ、ローレン」
ミセルがぽつりと問いかけた。
「昨日、お前が埋葬に賛成するとは思わなかった。理由を聞かせてくれ」
ローレンは頭をかきながら、少し照れくさそうに言った。
「いやあ、お前さんの一騎打ちを見てたらさ。……騎士道ってやつに、ちょっとあてられたんだよ」
「俺は行商人だし、戦争なんて嫌いだった。商売の邪魔ばかりするからな。でもな、昨日見てて思ったんだ。あんたら兵隊さんにも、信念ってもんがあるって。……俺が商売に誠実であろうとするのと、同じようにな」
ミセルは驚いたように目を見開き、何か言いかけた。
そのとき――
「きゃぁぁぁ!」
リーナの悲鳴が、凍てついた空気を裂いた。




