第66話 アモン、奮闘す
その声は、シレーヌの脳裏にも響いていた。
「な、なんだ……この声は!?」
一瞬たじろぐ彼女。その隙を、アモンは見逃さなかった。全身の力を振り絞り、シレーヌの腕の中からもがき出る。
「石って……このペンダントのことだよな。どうすれば壊せる?」
距離を取りながら、アモンは必死に考える。シレーヌは体勢を立て直し、すぐさま手を伸ばして追ってきた。
「そうだ……!」
荷馬車への道は一直線。アモンは迷わず駆け込むと、荷台に飛び込んでゴソゴソと何かを探り始める。
やがて、シレーヌが追いついた。
「アモン様、手間をかけさせないでください。さあ、ご同行を――」
その時だった。荷台から飛び出したアモンが御者台に飛び乗り、仁王立ちとなる。両の手には、それぞれ何かを握っていた。
「見ろ、これを!」
左手には、彼の首から提げていたグラトスの黒曜石のペンダント。
そして右手には――くるみ割り。
「フフ……何をするおつもりですか? そのペンダントの加護があったからこそ、私の術から逃れられたのに。その加護を捨てるとでも?」
シレーヌはニヤリと笑い、ゆっくりと歩を進める。
アモンは分かっていた。このペンダントが自分を守っていたことも、壊せば術に飲み込まれるかもしれないことも。けれど――
(それでも、おいらは……信じたいんだ。あの声を!)
アモンはくるみ割りにペンダントを挟み、叫んだ。
「えいっ!!」
だが、黒曜石は硬い。彼の小さな手では簡単に割れない。
「えいっ、えいっ……!」何度も力を込め、アモンの顔は真っ赤になっていく。
「それそれ。もっと頑張らないと、割れませんよ?」
シレーヌがあざけるように笑う。
それでもアモンは諦めなかった。震える手に力を込め、声にならぬ叫びとともに祈る。
(神様……おいら、今まで信じてなかった。でも……お願いだ、力を貸して! 罰はあとで受けるから……今だけ!)
その瞬間――
ペンダントにピシッと音が走った。黒曜石に細かな亀裂が走り、アモンは渾身の力を込めて――
「うおおおおおおおっ!!」
――パリーン!
ペンダントはついに砕け散った。
同時に、アモンの胸元からまばゆいばかりの光がほとばしる。闇を裂くようなその光は、あたりを包み、シレーヌの目をくらませた――!




