第60話 吹雪の来訪者
一同は、無残に砕け散った“闇の石”の周囲に集まっていた。初めて闇の幹部と対峙し、勝利を収めたというのに、胸に湧き上がるものは何もなかった。虚しさ、あるいは哀しさ――そんな言葉すら薄れていくような沈黙が場を包んでいた。
誰も口を開かない中、アモンがふいに地に両膝をついた。胸の前で静かに印を切りながら、小さな声でつぶやく。
「神は与えたもう、奪いたもう。聖なるかな……」
一瞬、虚を突かれたように感じた一同だったが、やがてそれぞれが目を伏せ、彼の祈りに倣った。
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サトリ、リーナ、ローレン、ミセル、そしてアモン――五人の一行は、ノーマンズランドの西方を目指して歩みを進めていた。朽ちかけた街道はすっかり雪に覆われ、その頼りない白の上を、彼らの足跡だけが刻まれていく。
この日は風が強く、ひときわ冷え込んでいた。
「いかんな。夜には吹雪になりそうだ」
ローレンが空を仰ぎ、眉をひそめた。「風を避けられる場所を探そう」
一行はアモンを荷馬車に残し、手分けして洞穴を探すことにした。やがて、リーナが駆け戻ってくる。
「あったわよ! 手ごろな洞穴が!」
リーナに案内されて辿り着いた洞穴は、口が広く、荷馬車ごと入ることができた。奥行きもあり、風をしのぐには申し分ない。
冷え切った身体をようやく休められるとあって、一行はてきぱきと野営の準備に取りかかった。火が焚かれ、簡素な食事が終わる頃には、ようやく洞穴に静けさが戻っていた。
サトリは弓の構えを確認するように練習し、リーナとローレンは馬の世話をしながら談笑していた。アモンは焚火を無言で見つめている。ミセルだけは洞穴の入り口に立ち、外の様子を警戒していた。
すでに外は、吹雪と化していた。
夜が深まり、吹雪はさらに荒れ狂っていた。視界は数歩先さえも危うい。そんな中、ミセルの目が一点に釘付けになる。白の帳を裂くようにして、ひとつの影が現れたのだ。
一歩、また一歩と慎重に歩み寄ってくるその影――やがて、それは女性の姿を取ってはっきりと現れた。
「……エルフ?」
ミセルは眉をひそめる。
女は灰銀の長髪を風にたなびかせ、エルフの尖った耳に凛とした面差しをしていた。背には細身の弓を負い、肩にかけたマントは吹雪と旅路でぼろぼろになっていた。そして、その眼差しには疲弊の色が浮かんでいた。
「私は、エルフのクレア。この吹雪の中、人間の気配を感じてやってまいりました。どうか……助けていただけませんでしょうか?」
名をクレアと名乗った女は、震える声でそう言った。




