第59話 再戦
アモンは、風に舞う灰の向こうから姿を現した。意気揚々と。
「すごいわ、アモン!」
「よくやった!」
「ハラハラしたよ。」
「まったく、無茶しやがって……」
仲間たちは次々に声をかけた。アモンはおどけたように肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「さぁ、あとはみんなの仕事だよ。」
「――ああ、任せておけ。」ミセルが力強く答えると、すぐさま地面に棒で線を引き作戦を伝え始めた。
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・・・狂戦士グレイムは、ライオンのたてがみのような乱れた髪を振り、腕組みをして待ち構えていた。
三度目の対戦――決着の刻である。
「ふん、懲りずに来たか。その愚かさ――いや、勇気だけは認めてやろう。」
グレイムの声には傲慢さと狂気が滲んでいる。
「貴殿の寛大なお言葉、感謝する。」ミセルは冷静に応じた。「だが、今回はこちらも手加減はしない。」
「四の五の言わず、かかって来い!」
グレイムが咆哮し、地面を揺らしながら突進してきた。
ミセルが前に出て剣を構える。その背後では、リーナが音もなく回り込む。正面にはサトリが弓を構えていた――
だが、今回は違う。サトリは初戦よりもずっと前方から矢を放ったのだ。
「ほう……その矢で“闇の石”を狙うか。面白いじゃねぇか。」
グレイムは笑いながら、左手で顔を庇う。右手には、あの巨大な斧。隙を突くには、まさに今しかない。
ミセルはグレイムの顔から意識を離すよう、剣撃を繰り出した。
続いて、リーナも小刀で太ももを狙う。彼女の攻撃は最初、鱗のような皮膚に弾かれた。だが、迷いはなかった。執拗に、正確に――繰り返された連撃の末、一枚の鱗がはがれ落ちる。
「今だ!」
リーナは空いた隙間に小刀を突き立てた。
「痛っ……小癪な小娘め!」
怒号と共に、グレイムの意識がリーナに向いた――その刹那。
ミセルの剣が閃いた。
グレイムの右腕――斧を握る手を、深く斬り裂いた。
「いまだ!」
「サトリ、お願い!」
ミセルとリーナが声を重ねる。
サトリは静かに息を整えた。まるで、笛を吹くときのように。
弓を引き絞り、放つ。矢は鋭く空を裂き、グレイムの顔へ――
「ギャアアアッ!!」
悲鳴が辺りに響き渡る。
矢は、グレイムの左目に命中していた。
彼は両肘を地面に突き、天を仰いで叫び続ける。
「――そこだっ!」
ミセルが馬上から飛び降り、最後の一撃を放つ。
その剣は、迷いなくグレイムの額の中心に突き立てられた。
何かが――砕けた。
ミセルの腕に、その手応えが伝わる。
「グ、グワァァァァ……ッ!!」
断末魔の叫びと共に、グレイムの身体はどす黒い霧となり、空へと溶けていった。
「おのれ……この俺を……倒すとは……だが、この先には……まだ“地獄”が待っているぞ……」
その声だけが、空間に染み入るように響いた。
そしてすべてが消えたあと。
その場には、砕けた灰色のダイヤ型の石が、ひっそりと転がっていた――




