第58話 驕れるものは・・・
次の朝。
グレイムは、焼け野原の中心に悠然と立っていた。焦げた空気がまだ漂う中、突如として一つの影が現れる――アモンだった。
「やぁやぁ、グレイム様。いやあ、まったくお見事! 火に包まれても眉ひとつ動かさない胆力、さすがの一言だねぇ」
グレイムが怪訝そうにアモンを睨みつける。
「……なんだ、小僧。死にに来たのか?」
アモンはおどけたように手をひらひらと振り、笑って見せた。
「いやいや。おいらね、強い者が大好きでさ。ああも見事に炎の中から無傷で現れるなんて……感動しちゃったよ」
グレイムは鼻で笑った。
「ふん、当然だ。俺の鱗は、ただの火ごときで焼けるほど柔くはない」
アモンは目を輝かせ、大げさに拍手する。
「おおお! やっぱり鱗かぁ! そりゃあ効かないはずだ! ……でも、逆に気になっちゃうよねぇ。そんな無敵のグレイム様にも、苦手なものって……あるのかなぁって」
グレイムは片眉をわずかに吊り上げた。
「……苦手? 馬鹿を言うな。俺に──」
「いやいや、もちろん、ないに決まってる!」アモンは食い気味に割って入り、にこやかに続けた。「でも、ほら。強い者ほど、自分の弱点を笑って語れる余裕があるって言うじゃない? まさか、“それすら”言えないなんてこと……ないよね?」
その口調は賞賛とも挑発ともつかず、どこか底の知れない笑みが浮かんでいた。
グレイムの顔がわずかに引きつる。
「……ふん、よかろう。教えてやる」彼は誇らしげに顎を上げた。「俺の額には、グラトス様より授かった“闇の石”が埋め込まれている。それが御力を吸い上げ、俺を無敵たらしめているのだ」
アモンは満面の笑みを浮かべ、深く頷いた。
「なるほどなるほど! これはこれは、実に貴重なお話をいただきました〜。ではでは、これにて」
彼はまた手をひらひらと振りながら、くるりと身を翻し、軽やかに走り去る。
その背に、グレイムがふと声をかけた。
「……お前、どこかで会ったことがあるか?」
アモンは振り返らず、肩越しにひとことだけ返した。
「知らないよ」




