第52話 取引の行方
エルべの使いを待つ間、ローレンとハロルドはそれぞれの仕事に戻っていた。ハロルドは商店を再開し、ローレンは冬の旅に備えて準備に取りかかった。ローレンにとって、この街より西へ向かうのは初めてのことだったため、まずは情報収集に努めた。保存のきく食料や防寒着、防寒具といった冬装備の調達は、サトリ、リーナ、そしてミセルに任せた。
だが、ここで少し問題が起きた。
「私のルドルフに、荷馬のような真似をさせられるか!」
ミセルが怒鳴る。
「それはごもっとも」と、やれやれといった顔でローレンが応じた。「だが、そのルドルフに食わせる干し草が重いんだ。少しでもエイミーの負担を減らさなきゃ、ノーマンズランドにたどり着く前に、旅が終わっちまう」
「お前、紹介状の恩を忘れたか?」
痛いところを突かれ、ローレンは黙り込んだ。
慌ててサトリとリーナが取りなすと、ミセルはしぶしぶ承諾したが、ぶつぶつと文句を言い続けていた。
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やがて、ローレンとハロルドのもとに使いが現れた。二人は連れ立って、緊張しながらエルべの滞在する高級宿へ向かった。
応接室では、この間と同じく、エルべが豪華なソファに腰かけていた。ただし、今回は酒のグラスは手にしていなかった。
「よく来たな。まあ、座れ」
エルべは落ち着いた口調で言った。二人が腰を下ろすと、しばらく沈黙の後、彼は静かに言葉を継いだ。
「裏は取れた。ラウドルップ家の未開発鉱山は、その筋ではわりと知られた話だった。封印の紋章も、三人の鑑定士が本物と認めた。そしてローレン、お前の仲間というあの女騎士、ミセルについても――人相、風体、お前の話、すべて一致している。お前たちの話は、信じるに足ると判断した」
「じゃあ!」
ハロルドが立ち上がりかけた。が、エルべは片手で制しながら、冷ややかに笑った。
「落ち着け。まだ決めたわけじゃない。お前たちの条件とやらを、もう少し詰めないとな」
三人はテーブルを挟んで、熱のこもった議論を交わした。時には声を荒げ、言い争いになりかける場面もあったが、話は概ね順調に進んでいるようだった。
そのやり取りは、まるで彼らが若き日、師匠とともに行商の修行をしていた頃――深い森の中で焚き火を囲み、夜通し語り合っていた日々に戻ったかのようだった。
そして、ひときわ大きな笑い声が三人からこぼれた後、エルべは立ち上がり、満足そうに言った。
「よし、諸君。取引きは成立だ。俺が鉱山開発の全責任を負う。ハロルド、お前の借金は帳消し。そしてローレン、お前は――取り分なしでいいんだな?」
「ああ、それでいい」




