表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/89

第51話 驚くべき儲け話

・・・昨晩(さくばん)のこと。ミセルはローレンに、羊皮紙(ようひし)(ふで)、そして封蝋(ふうろう)を用意させた。そして、自らの手で筆を取り、ためらいなくすらすらと書きはじめた。


「ミセル、何を書こうってんだ?」とローレンが声をかける。


「まあ、見ていろ」とミセルは短く答え、筆を走らせ続けた。


やがて書き終えると、ミセルは一枚の文書を(かか)げ、微笑(ほほえ)んだ。


「これは父上――すなわちラウドルップ家当主(とうしゅ)への紹介状だ。領内に、金剛石(こんごうせき)が眠っているとされながらも、(けわ)しい地形と()き出る地下水のせいで手つかずのまま放置されている鉱山がある。まさに“宝の持ち(ぐさ)れ”というやつだ。その開発事業を、エルべに(まか)せてはどうか――そんな内容にしてある。」


ローレンとハロルドは思わず息を()んだ。


「そりゃ……すげぇ話だ……」


「だが、忘れるな。これはあくまで“紹介状”にすぎん。採掘権(さいくつけん)を与えるものではない。実際に権利を得るには、エルべが父上を()()せる必要がある。――それは、容易(たやす)いことではないぞ。」


いたずらっぽく笑いながら、ミセルはくるりと羊皮紙(ようひし)を巻いた。そして(ろう)(ふう)をし、左手の指輪を押し当てる。(ろう)の上には、ラウドルップ家の象徴――威厳(いげん)あるライオンの紋章(もんしょう)が、(あざ)やかに(きざ)まれた。


その光景に、ローレンとハロルドは言葉を失ったまま見入っていたが、やがて我に返ると、ローレンが口を開いた。


「ありがとう、ミセル。あとは俺たちに任せてくれ。商人の腕の見せどころってやつさ。」


ハロルドも深くうなずき、二人はすぐに作戦会議を始めた。


---


場面は戻り、エルべの高級宿。重厚(じゅうこう)な応接間にて――


「……なんだと!」エルべは椅子から跳ね起きた。「よく見せてみろ!」


怒鳴りながら、彼はハロルドの手から紹介状を奪い取り、封を開けようとした――その瞬間、ローレンが(するど)く叫ぶ。


「おっと、待ちな! 開封したら無効になるぜ? そんな大事なこと、忘れちまったのか?」


エルべは一瞬、怒気(どき)をあらわにしたが、かろうじて手を止めた。深く息を()きながら、唇を()む。


「なぁ、エルべ。紹介状の真偽(しんぎ)は、後でいくらでも確かめてくれ。まずは、俺たちの話を聞いてくれよ」と、ローレンは余裕たっぷりに(かた)った。


しばらく(のち)――


「信じられん……そんなうまい話が、この俺の目の前に(ころ)がり込むとはな……」


すべての説明を聞き終えたエルべは、まだ半信半疑(はんしんはんぎ)といった顔で(つぶや)いた。


「……悪いが、今日は帰ってくれ。お前らの話が本物かどうか、裏を取らせてもらう。結果が出たら使いを出そう。また来てくれ。」


それでも、ローレンとハロルドの顔には満足げな色が浮かんでいた。エルべの目に、一瞬だけだが確かな光が宿(やど)ったのを、二人は見逃さなかった。


確かな手ごたえを感じながら、彼らは高級宿の(とびら)をくぐり、街へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ