第51話 驚くべき儲け話
・・・昨晩のこと。ミセルはローレンに、羊皮紙と筆、そして封蝋を用意させた。そして、自らの手で筆を取り、ためらいなくすらすらと書きはじめた。
「ミセル、何を書こうってんだ?」とローレンが声をかける。
「まあ、見ていろ」とミセルは短く答え、筆を走らせ続けた。
やがて書き終えると、ミセルは一枚の文書を掲げ、微笑んだ。
「これは父上――すなわちラウドルップ家当主への紹介状だ。領内に、金剛石が眠っているとされながらも、険しい地形と湧き出る地下水のせいで手つかずのまま放置されている鉱山がある。まさに“宝の持ち腐れ”というやつだ。その開発事業を、エルべに任せてはどうか――そんな内容にしてある。」
ローレンとハロルドは思わず息を呑んだ。
「そりゃ……すげぇ話だ……」
「だが、忘れるな。これはあくまで“紹介状”にすぎん。採掘権を与えるものではない。実際に権利を得るには、エルべが父上を説き伏せる必要がある。――それは、容易いことではないぞ。」
いたずらっぽく笑いながら、ミセルはくるりと羊皮紙を巻いた。そして蝋で封をし、左手の指輪を押し当てる。蝋の上には、ラウドルップ家の象徴――威厳あるライオンの紋章が、鮮やかに刻まれた。
その光景に、ローレンとハロルドは言葉を失ったまま見入っていたが、やがて我に返ると、ローレンが口を開いた。
「ありがとう、ミセル。あとは俺たちに任せてくれ。商人の腕の見せどころってやつさ。」
ハロルドも深くうなずき、二人はすぐに作戦会議を始めた。
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場面は戻り、エルべの高級宿。重厚な応接間にて――
「……なんだと!」エルべは椅子から跳ね起きた。「よく見せてみろ!」
怒鳴りながら、彼はハロルドの手から紹介状を奪い取り、封を開けようとした――その瞬間、ローレンが鋭く叫ぶ。
「おっと、待ちな! 開封したら無効になるぜ? そんな大事なこと、忘れちまったのか?」
エルべは一瞬、怒気をあらわにしたが、かろうじて手を止めた。深く息を吐きながら、唇を噛む。
「なぁ、エルべ。紹介状の真偽は、後でいくらでも確かめてくれ。まずは、俺たちの話を聞いてくれよ」と、ローレンは余裕たっぷりに語った。
しばらく後――
「信じられん……そんなうまい話が、この俺の目の前に転がり込むとはな……」
すべての説明を聞き終えたエルべは、まだ半信半疑といった顔で呟いた。
「……悪いが、今日は帰ってくれ。お前らの話が本物かどうか、裏を取らせてもらう。結果が出たら使いを出そう。また来てくれ。」
それでも、ローレンとハロルドの顔には満足げな色が浮かんでいた。エルべの目に、一瞬だけだが確かな光が宿ったのを、二人は見逃さなかった。
確かな手ごたえを感じながら、彼らは高級宿の扉をくぐり、街へと消えていった。




