第50話 紹介状
その後、ローレンの帰りを宿で待っていた一同の前で、ハロルドはすべてを打ち明け、助けを求めた。
最初に応えたのはリーナだった。
「わかったわ、ハロルドさん。私たちが何とかしてあげる。」
サトリがリーナに問いかける。
「でも、どうやって?」
「ローレンの毛皮の時みたいにロトに相談するのよ。そんなに難しいことじゃないわ。」
リーナは自信たっぷりに答えた。だがサトリは、首を横に振った。
「リーナ、今から引き返して、またこの街に戻ってくるとなると……一年はかかっちゃうよ。
僕たちの目的、忘れたの?」
リーナは言い返せず、一歩引いた。だが、黙って引き下がるような彼女ではなかった。
「じゃあサトリ、何かいい考えがあるの?」
「うん。エルべって人に、借金の帳消しとか、返済の猶予とか、直接話してみるのはどう?
もともと三人は兄弟弟子なんでしょ?話くらいは聞いてくれるかもしれない。」
「それは無理だ。」
ローレンが即座に否定した。
「エルべは冷酷なやつだ。しかも契約にはうるさい。交渉の余地なんて、ないだろう。」
サトリは言葉を詰まらせた。するとアモンが口を開く。
「じゃあさ、エルべってやつに詐欺でも仕掛けりゃいいじゃん。
偽の地図を作るなら、おいらに任せな。」
本気とも冗談ともつかない調子だった。ローレンとハロルドは顔を見合わせる。
そして、場に重たい沈黙が落ちた――
……長い沈黙を破ったのは、それまで黙って成り行きを見守っていたミセルだった。
「仕方ないな。あまり気は進まないが……私が一肌脱ぐことにしよう。」
翌日。
ローレンとハロルドの二人は、エルべが滞在する高級宿の応接室にいた。
そこは貴族や大富豪が利用する格式高い宿で、応接室もまた、絢爛たる装飾が施されていた。
豪奢な革張りのソファにゆったりと腰掛け、グラスを傾けるエルべに対し、二人は立ったままだった。
「ローレンか。久しいな。調子はどうだ?……まあ、噂は耳にしているがな。」
エルべは薄く笑う。ローレンは緊張を隠しつつ応じた。
「ああ。まあ、ボチボチやってるさ。今は仲間と旅の途中だ。」
「それも聞いている。ノーマンズランド行きとは、酔狂な真似を。」
「言うな。それが俺の選んだ道だ。」
エルべは鼻で笑い、「それもそうだな」とつぶやいた。そして視線をハロルドに向ける。
「で、ハロルド。返済の目処は立ったのか? 期限まで、そう長くはないぞ。」
ハロルドは緊張しながらも、静かに、そして力強く答えた。
「ああ、何とか目処は立ったよ。今日はその相談に来た。」
エルべは「ほう」と興味深げに二人を見回す。
「で、どういう話だ?」
「これを見てくれ。」
そう言ってハロルドは、蝋で封印された羊皮紙を差し出した。
「……なんだこれは?」
エルべは眉をひそめた。
ハロルドは堂々と胸を張って宣言する。
「それは、ラウドルップ家の領内にある未採掘の金剛石鉱山の――採掘権に関する紹介状だ!」
※蝋で封印された羊皮紙:羊皮紙(動物の皮から作った筆記具)を封蝋で固定し、未開封と送り主の身元を証明した手紙
※金剛石:ダイヤモンド




