第48話 古地図
ハロルドは話をつづけた。
「実は北のほうに、未採掘の金山があるらしいんだ。確かな筋から得た情報だから、間違いない。それに、ほら――秘密の古地図に、ちゃんと場所が記されている。」
ハロルドは一枚の古地図を取り出した。黄ばんだ紙にはあちこちにシミや汚れがあり、時代の風雪を物語っていた。ローレンはその地図をまじまじと見つめ、改めて確認する。
「どうだ、ローレン。一緒にその金山を掘り当てようぜ。……できれば、その資金を出してもらえると助かるんだ。」
ローレンは腕を組み、黙り込んだ。
(ハロルドは嘘をつくような奴じゃない。だが、こんな博打を打つタイプでもない。……何があった?)
ローレンはその違和感を口にした。
「なぁ、ハロルド。一体どうした? こんな話は、師匠に止められてただろ。何か事情があるのか?」
ハロルドの顔に陰が差した。しばらく黙ったあと、静かに打ち明けた。
「……すまん、話しておくべきだったな。実は、積み荷を積んだ船が沈んじまって、大きな借金を抱えることになったんだ。借金の相手は――お前も知ってる、エルべさ。」
「エルべだと!」ローレンは驚きの声を上げた。
エルべは、ハロルドよりさらに上の兄弟子だった。だが師匠と仲たがいし、ローレンたちとは決別してしまった。その後、強引な手口で商売を広げ、商人なら誰もがその名を知る剛腕の実業家となっていた。
「店を担保にしてしまってな。だから、早く返済の目処を立てる必要があるんだよ。」
ハロルドは自嘲気味に笑いながら言った。
「エルべは今、この街にいる。俺から借金を取り立てるためにな。」
ローレンは頭を抱えた。親友の苦境を何とかしてやりたい。だが、自分には仲間とともにノーマンズランドへ向かうという使命がある。
感情の板挟みに苦しみながら、ローレンは言った。
「……ハロルド、少し考える時間をくれ。仲間たちとも相談したい。」
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宿に戻ったローレンは仲間たちを集め、ハロルドからの申し出と古地図のことを説明した。
「俺はハロルドを助けてやりたい。親友だからな。
だけど、この話に乗るとなると、少なくとも来年の春まではノーマンズランドへは出発できなくなるだろう。でも、考えようによっちゃ、期限のある旅じゃない。少し寄り道するのも、悪くないんじゃないかって……」
サトリは真っ先に反対した。
「僕はニンフと“すぐに行く”って約束したんだ。もし方向が西だったらまだしも、北はまったく逆方向じゃないか!」
いつもは明快な意見をすぐに言うリーナが、珍しく黙っている。
(サトリの言っていることは正しい……でも、私はローレンの気持ちも叶えてあげたい。どうすればいいの?)
ミセルとアモンも、関心がなさそうに沈黙を保っていた。だが、リーナの苦悩に満ちた顔を見たアモンが、ふと顔を上げてつぶやいた。
「その古地図……偽物だよ。」
※担保:借金が払えなくなったときに代わりに差し出すもの




