第47話 親友
・・・荷馬車を御しているローレンの横顔がニヤニヤしているのが、隣に座っているリーナには分かった。リーナはその理由をたずねた。
「なにか、いいことでもあるの?」
「ああ、次の街にはハロルドっていう行商の兄弟子がいてさ――いや、今じゃ親友って呼ぶほうがしっくりくるな。そいつが店を構えてるんだ。久しぶりに飲めると思うと、どうしても顔が緩むのさ。」
ローレンは楽しげな声でそう言った。リーナはふと目を伏せ、ほんの少し、寂しげに笑った。
「そう……あなたの夢を、先に叶えたのね。私にも会わせて。どんな人か、知りたいから。」
そう言って、リーナは無理に元気な声を作った。
---
次の街が近づくにつれて、街道は荷馬車や旅人で賑わい始めた。この街が大きいということもあるが、収穫の秋を迎え、様々な物資が行き交っているせいでもあった。
街に入り、宿を取った一行に対して、ローレンが開口一番こう言い放った。
「今日は自由行動!冬の準備は明日でいい。悪い、俺はこれから大事な用があるんでな!」
そう言うが早いか、彼はぱたぱたと荷物をまとめ、宿の玄関を飛び出して行ってしまった。
置いてきぼりを食らったリーナはむっとしたが、すぐに自分に言い聞かせる。
(「今夜は水入らずで、ってことね……」)
そして気を取り直して、サトリとアモンを街歩きに誘った。一人残ったミセルは、ため息まじりにつぶやいた。
「まったく、子どもみたいにはしゃぎおって……」
それでもどこか楽しげに、彼女もまた酒場へと足を向けていった。
---
ローレンが見覚えのある角を曲がると、そこには素朴ながらも立派な商店があった。木造の看板には金色の文字で「ハロルド商店」と書かれている。
その前で、茶色の前掛けを締めた、ローレンと同じ年頃の男が威勢よく呼び込みをしていた。
「おい、ハロルド!」ローレンの声が、自然と大きくなった。
「おお、ローレンか!」
二人は笑顔で駆け寄り、力強く抱き合った。
「相変わらず元気そうだな、ハロルド。」
「久しぶりだな、ローレン。お前も元気そうで何よりだ。――まあ、中に入れよ、話をしようぜ!」
ハロルドは手伝いの小僧に店を任せると、住宅を兼ねた店内にローレンを招き入れた。
---
「へぇ、それゃ大変な経験だったな。」
ローレンから、サトリたちと旅をすることになった経緯と、道中の出来事を一通り聞き終えたハロルドは、心底感心したようにうなずいた。
「でもその経験は、お前さんの商売の腕をずいぶん上げたと思うぞ。それに、その仲間たちってのも宝だ。師匠も、きっと喜んでることだろうさ。」
「ああ、わかってるさ。」
ローレンは少し酔ったような口調でそう答えた。
短い沈黙のあと、ハロルドがジョッキを揺らしながら、やや遠慮がちに言った。
「……ノーマンズランドに行く前にさ、一発、大勝負してみないか?」
※小僧:商店などで雑用や使い走りをする年少の男の子




