第46話 傭兵
私の小説に目を留めていただきありがとうございます。第53話までの”旅の道中編”の続きです。どうぞ楽しんでください!
冷たい風が、色づいた森を抜けて吹き寄せる。
街道沿いのオークやカエデの並木は、燃えるような赤、金色、そして深い琥珀色に染まり、落ち葉が地面に触れてはカサカサと音を立てていた。村の近くでは、村人たちが最後の収穫に追われ、鎌を手に小麦や大麦を刈り取っている。
空気には土と熟したリンゴの香りが漂い、遠くの丘では羊飼いが羊の群れを導いていた。秋は、実りと備えの季節。自然と人々がともに冬へと歩みを進めていた。
荷馬車に揺られながら、アモンは物思いにふけっていた。
「あれは何だったんだろう……」
タカナミたちと別れたすぐ後のことだった。アモンは、仲間たちの胸に一瞬だけ光る宝珠を見た。
それはすぐに消えてしまったが、はっきりと目に焼きついている。
(あれはなんだ。なぜ、おいらの胸だけ光らなかったんだろう……やっぱり、闇の王と関係があるのか? もしそうなら、みんなは……)
怖かったのだ。仲間に自分も知らない真実を知られるのが。
そんなアモンの思いも知らず、荷馬車は静かに進む。
ふと、荷馬車の前を進んでいたミセルが手ぶりで道を譲るよう指示を出した。どうやら、大きな隊商がこちらへ向かってきているようだ。ローレンはエイミーをなだめながら、荷馬車を街道脇の空き地へ寄せた。
やがて現れた隊商は、かなりの規模だった。荷馬車が何台も連なり、その横を多くの傭兵たちが、商人や積み荷を守っている。
一同がその隊列を眺めていると、突然ひとりの傭兵が馬上から声をかけてきた。
「ミセル隊長! お元気でしたか!」
屈託のない笑顔で駆け寄ってきたその男は、こう名乗った。
「黒騎士隊のロッドです。お忘れでしょうか?」
「おお、ロッドか! 久しぶりだな。元気そうだな。」
「ええ。隊長こそ、こんな道ばたで何してるんです? 白騎士隊が全滅してから、裏切り者のエクを追って旅に出たって聞いてましたよ。」
「……ああ。いろいろあってな。今はこの荷馬車の護衛……いや、仲間たちと西へ向かって旅をしている。」
ロッドは一瞬だけ怪訝そうな顔をしたが、すぐにまた笑みを浮かべた。
「そうそう。こないだの仕事で知り合った商人が、東の町でエクに似た人を見たって言ってましたよ。」
「なにっ!」
ミセルの瞳が鋭く光る。
「よければ、その商人の居場所を教えましょうか?」
ミセルは即座に動く女だ。だが、このときばかりは珍しく腕を組んで考え込んだ。
(仇討ちは私の使命……今すぐでも情報が欲しい。でも、それは仲間を置き去りにすることになる。あの子たちに背を向けることは、もうできない……)
そのとき、ローレンののんびりとした声が背後から届いた。
「おーい、ミセル。せっかく荷馬車止めたんだ。焼きリンゴでもどうだ? 一服しようぜ。」
ミセルは苦笑した。そしてロッドに向き直る。
「ありがとう。でも、仲間が待ってるんだ。じゃあな。」
それだけ言うと、彼女は仲間たちのもとへ戻っていった。
ぽかんとした表情でロッドはつぶやいた。
(隊長って……あんなだったっけ?)
首をかしげながら、彼は隊商の列へと戻っていった。




