234 どこのコンサート。いや歌謡ショーだ? 紙吹雪だあ?w
防火用ホースの放水の直撃を受けたにもかかわらず、悠々と痛車トラクターの水滴をふき取る父さん。もう帰りません? またインフォメーションのお姉さん、涙目になるよ。
「まあまあ、オキムネ。手が止まっているぞ。こういう時に隅っこの方まできれいにするんだ」
あーあ、洗車に、はまっちゃっているよ。
「お父上っ!」
おっ?
◇◇◇
「遊んでいたおまわりちゃんが帰ったと思ったら、今度は車と遊んでいるのか? あたしのパレードはどうなったのだ?」
待て待て待て、エリス。父さんがいつまでも水滴のふき取りに熱中しているのを止めるのはいいが、どこからエリスのパレードの話が出てきた?
「何を言うか。オキムネ。皇帝たるこのあたしがその姿を国民に見せずにどうするというのだ。大体だな。お父上とおまわりちゃんばかり、目立って、キャーキャー言われて、ズルイズルイ」
エリス。セリフの後半部分の方が本音だね。
◇◇◇
「分かった。他ならぬ俺がお腹を痛めた可愛い娘絵栗鼠ちゃんの頼みだ。ここはパレードをやろう」
「うむ。お父上。大儀である」
どこからツッコんだらいいものやら状態ですが、順を追ってツッコみますね。まず、エリスは父さんの娘じゃないですよね。次に父さん、エリスを産んでないですよね。最後に父さん、さっき女性巡査の高さんに無届けのイベントはいけませんよと注意されたばっかりですよね。
「おい、オキムネーッ! 参謀総長―っ! 何をぼうっとしとるかっ? 置いていくぞーっ!」
ぶっ! ちょっと目を離した隙に痛車トラクターの屋根の上に看板が張り巡らされている。しかも縦横4枚の看板に「地球=ケンタウリ帝国初代皇帝エリス一世陛下」と書かれているし。選挙にでも出る気か。
「安心シロ。オキムネ」
またそのフレーズか。R-1号。一応、その理由を聞こう。
「コノ看板ハ公職選挙法ノ規定ヲ遵守シタ看板ダ」
そういう問題じゃないと思うぞ。うー、うまく説明できないが。こんな時に「公共」の先生である担任の鵜鷺先生がいてくれたら、何がまずいか言ってくれそうなのに。
「何をしているのだ。オキムネ。おーい、R-1号さん。オキムネを連れて来るのだ」
「ハッ」
僕はあっという間にR-1号に背負われ、R-1号は両足の力だけで父さんの痛車トラクターの屋根まで駆け上った。怖いってもう。
「よーしオキムネも乗ったな。行くぞっ! お父上っ! パンツァーフォーッ!」
ガガガガガ
父さんの駆るボルポルギーニのトラクターワッハ250馬力はその咆哮を上げた。こう見えて父さんはそれなりの農業経営者だから、堅実な一面もあるが、物によっては金を惜しまない。ボルポルギーニのトラクターも何種類かあるが、ワッハはフラッグシップモデルだ。
などと解説している場合ではない。さすがに痛車トラクターが動き出したから、みなさん轢かれないように避けてくれているし、父さんもその辺は慎重だ。
だけどそれを差し引いても注目度は父さんと足利さんが「スター〇ォーズごっこ」をやっている時より更に増した。これは恥ずかしい。
「うわははは。国民たちよ。あたしをあがめよ。あたしが地球=ケンタウリ帝国初代皇帝エリス一世であーる」
うう、恥ずかしいなあ。
「何ヲシテオルカ。オキムネ。コレヲ撒カンカ」
R-1号が僕に渡したのはカゴに入ったたくさんの紙切れ。これをどうしろってのよ?
「コウヤッテ撒クノダ」
かーっ、もうっ! どこのコンサート。いや歌謡ショーだ? 紙吹雪だあ?
「乗ってきたぞー。お父上。ミュージックスタートッ!」
「おうよっ! 絵栗鼠ちゃんっ!」
たちまち流れる「魔法少女ラブラブ愛凛」のオープニングテーマ。
そして、エリスが歌うのは「♪そーわん。かうるくわん。のべでんべーん」
地球=ケンタウリ帝国国歌。例によってメロディーと歌詞が全く合わないことは全然気にしていない。
いやそれよりも問題なのはだ。
ふぁおんふぁおんふぁおんふぁおん
ほーら来た。おまわりさんが。




