213 皇帝自ら出陣し、一番前の真ん中の席を占領したぞっ!w
さすがのエリスにして二人分の「チョコがけポップコーン」おかわりを開演前に食べ終わることは出来ず(というか普通一杯目から食べ終わらないのだが)、入れ物を抱え込んだまま堂々の入場。
そして、中に入るとダッシュ。へ?
「ははは。見たか? オキムネ! 皇帝自ら出陣し、一番前の真ん中の席を占領したぞっ! 苦しゅうない。ここに地球=ケンタウリ帝国の国旗を掲げよっ!」
えっ、えーと。いつもながら何からツッコんだらいいのだか状態だけれど、とりあえず地球=ケンタウリ帝国の国旗ってどこにあるんだ? どういうデザインのやつだ?
「……」
何なの? その沈黙。
「国旗のデザインはこれから考える。国民に大々的に募集する」
国民に大々的に募集するったって、今のところその国民は皇帝のエリスと参謀総長の僕と護衛アンドロイドのR-1号とR-2号しかいないじゃん。
「ぬかしおったなっ! オキムネッ!」
え? そこでエキサイトします? エリスさん?
「あーあー」
エリス。スクリーンの前に仁王立ち。あわわわ。まだ予告編も始まっていないからいいようなものを。
「地球=ケンタウリ帝国の全国民に告ぐ。あたしは皇帝のエリス一世であーる。このたびこの参謀総長のオキムネの奴がだな。我が国に国旗がないとか生意気なことをぬかしよるのでな。我が国の国旗を大ぼしゅむぐぐぐ」
僕はエリスの口を塞ぐとスクリーンの前から引きずり下ろした。
あのねえエリス。映画見るときはライブコンサートとかと違って、一番前に座ればいいってものじゃないのよ。一番前だと見づらかったりするから普通は最後まで埋まらないの。ちゃんと真ん中よりちょっと上の見やすい席を取ったから、そこで映画を見よう。
「むぐぐぐ。そんなことより栄光ある我が国の国旗の制定がだなあ」
それはまた後で考えようよ。何でわざわざシネマコンプレックスまで来て、国旗制定会議をせにゃならんのよ。
◇◇◇
「むうう。こんな後ろの席では何かあった時、突撃できないぞ。オキムネ」
何で突撃するのが前提なのよ。映画ってもんは落ち着いてストーリーを楽しむもんなの。それに突撃するったって、普通皇帝は先頭に立って突撃しないでしょ。後方で前線の戦いぶりを見守るもんでしょう。
「いやオキムネ。そうとばかりは言えんぞ。老谷が置いていった資料にはビキニアーマー着て先頭に立って戦う女皇帝がいたぞ」
いやあのね。そこは老谷のじいちゃんの常識は世間の非常識というやつで……
「くそー、ずっと仲良さそうに話してやがって。リア充め」
ん? 誰だ? 今のセリフ?
「ニャー」
待て待て待て。ここはシネマコンプレックス内部だぞ。こんなところに猫がいるわけない……
「オキムネ」
む。何だ? エリス。
「まあ落ち着け。この映画とやらをまずは見るとしたそう。ほれ。この『ちょこがけぽっぷこーん』を食え。皇帝陛下のお手製だぞ」
いやこれは売店で買ってきたもんだから、エリスのお手製じゃないし。もともと二人分ということで買ってきたものをエリスが独占的に食べていたしとか考えているうちに何だか妙に気持ちが落ち着いてきちゃったなあ。
「まあオキムネ。ここに座れ。『ちょこがけぽっぷこーん』を食え」
さっきまでエリスの方がエキサイトしていたような気がしたが、なんでここへ来て僕の方がなだめられているんだろ。ま、いいか。
◇◇◇
そして始まった予告編。
「オキムネ。あいつは何だ? 妙に人気者ぶって気に食わんぞ」
そうは言っても本当に子どもたちに人気のアニメキャラだからねえ。突撃してぶちのめしたりすると子どもたち悲しむよ。それは皇帝としてどうかな?
「う、うーむ。あ、何だあの宇宙船は? あれならケンタウリ帝国の方がもっといいのを作れるぞ」
あれは地球のメカニックデザイナーさんの空想の産物だからねえ。実際に宇宙船作っているならそりゃあケンタウリ帝国の方が凄いよね。
「くー。いちゃついてからに」
む? 今の声は?
「ニャー」




