↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話:辺境村(1)


 太陽の位置からして、時間は正午過ぎ。

 さっき助けた少年―リト曰く、歩いて村までだと夕方辺りだそうだ。


「色々と聞きたいこともありますが、ひとまずこれで村まで戻りましょう」


 そう言ってリトは腰カバンから取り出したものを見せる。

 赤く輝く小さな石だ。

 幻がそれに興味を示す。


「綺麗な石ね、それ何かしら?」


「帰還石(アンリステル)の子石です。これに魔力を込めて力を入れると……」


 そう言ってリトは石を砕いた。

 赤い欠片はより輝きを増し、粉が軌道を描いて回転する。

 視界が光に包まれ、目を開けると景色は変わっていた。


「このとおり。ようこそ、辺境村へ」


 転移した場所は村の入り口と思われる所だ。

 丸太のアーチの隣には、赤く輝く半透明の岩が置かれている。


「これは…、さっきの帰還石か?」


「の、親石ですね。子石を砕くとこの親石へと転移できるんです」


 転移装置自体は何度か見たが、砕くだけで転移できる石はみたことが無い。

 

「ささ、ひとまず僕の家に案内しますよ」


「感謝する。ところでリト、敬語は不要だ。楽な口調で構わないぞ」


「分かり…、じゃなかった。分かった。じゃあ着いてきて」


 そう言ってリトは先頭を歩き、俺達もそれについて行った。入り口を通り、村の景色がより鮮明に映る。

 石垣の土台に建つ木造の民家や畑は、中世チックな趣があり、中世時代の田舎の村そのものだ。

 

(不思議と落ち着くな)


 そう思いながら辺りを見渡していると、向こうの道から誰かが走って来る。


「リトーー!!」


 少年の名前を叫びながら、手を振って走って来たのは、リトと同じくらいの少女だ。

 ぱっつんの蒼いボブヘアーに、緑色の垂れ目が特徴的で、小麦色に焼けた肌とワンピースは活発な印象を受ける。


「あの子、リト君のお友達?」


 幻がそう尋ね、リトは頷いた。

 

「うん、ノーチェっていって、僕の幼馴染なんだ」


 リトが手を振り返した頃、ノーチェがリトに抱きついた。リトはよろめきながらも受け止める。


「今日早かったね、もしかして魔物倒せたの?」


「いや…、今日も無理だったよ」


「本当に一人で大丈夫なの? やっぱり次はアタシもついていくよ」


「草原は危険だからダメ」


 そう言ってリトはノーチェの額を小突く。

 やり取りから、付き合いの深さが容易に想像できる。


「ところでリト、後ろの2人は?」


「魔物に襲われたのを2人が助けてくれたんだ」


 軽く自己紹介でもしよう。


「俺は流離、旅人だ」


「私(わたくし)は幻、よろしくね」


「リトを助けてくれてありがと! ねぇねぇ、2人って何処から来たの?」


 ノーチェがそう尋ねる。

 さて、どう説明したものか。


「ノーチェ、まずは2人が休めるところに案内するのが先だよ」


「ねぇ、アタシもついて行って良い?」


 そう言って目を輝かせている。

 リトは軽く俺達の方を見た。


「俺は構わないが、幻はどうだ?」


「私も良いわよ、人は多い方が楽しいわ」


 その様なやり取りをした後、しばらく歩く。

 そして、小さな民家に着いた。


「ここがお前の家なのか?」


「師匠の家だよ、今は用事でしばらく帰ってこれないから僕一人だけど。さ、とりあえず入って」


 そう言ってリトは扉を開ける。

 部屋の真ん中には木造のテーブルに、椅子が4つ並んでいる。他にはタンスや炊事場があるくらい。

 内装は質素だが、清掃の行き届いている良い部屋だ。

 そして案内されるまま、俺と幻は椅子に腰掛ける。


「それにしても、なんで子供一人であんな草原に一人でいたの?」


 茶を入れているリトに、幻がそう質問した。


「修行の一環で魔物と戦ってたんだ。でも結果は見ての通りで……」


「修行か、若いのに偉いな」


 思わず言葉が出る。

 年も14歳辺りだろう、その年で鍛錬とは良い心がけだ。


「そんなことないよ、今まであの魔物に勝てたことないし」


「でもあの魔物って、ここだと強い部類なんじゃないの?」


「あの魔物は草原だと弱い部類なんだよね、危険度は2だし」


 危険度、おそらく魔物の強さを示す規準なんだろう。2というと大した強さではないことが想像できる。


「ねぇねぇ! それより2人はどこ出身なの? もしかして東方の出身!?」


 ノーチェが足をバタつかせてそう聞く。

 元気なのはいいことだ、幻はその様子をみて微笑んでいる。


「東方、というのは?」


「大陸東側のことだよ。そこの人たちは流離みたいな黒髪が多いから、てっきりそこから来たのかなって」


「いや、というより俺達はこの大陸の人間ではない。別の星から来た」


 それを聞いた2人は、目を点にしている。


「別の……星…、?」


 それから2人に、どうやって俺達がここに来たのかを話した。


「え〜とつまり、空の上から来たってこと?」


「な、なんか凄い!」


 こうして話してみると、お互いの常識に大きな乖離(かいり)を感じる。やはりここは異世界の様だ。

 

「まぁ、とにかくこの世界の人間ではないとだけ分かってくれたらいい」


「だから、この世界のことについて教えくれたら嬉しいわ」


 幻がそういうと、リトとノーチェはしばらく考え込んだ。


「ねぇリト、何から話す?」


「とりあえず、この辺りの地形について話そうか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。