第2話:逆徒と夢幻、果て無き世界へ
遡ること、十数分前
大空の中央に昇る太陽、湿った風をその身に受ける。見渡す限り大草原が広がっていた。
「さて…。ここがどこか見覚えるあるか? 幻」
隣に佇む白髪の少女―幻にそう聞く。
「私も見たことがないわ。それにしても綺麗な星ね、こんなに自然が豊かな星は中々見ないわ」
幻の言うとおり、確かに綺麗な星だ。
辺りを見渡すと、奇妙な生物を見かけた。
(あれらは……、魔物か?)
牛やトカゲなど、既存の生物を歪め、組み合わせ、巨大化させた様な生物が、草原のあちこちにいる。
こちらに気づいているようだが、襲ってくる様子は無い。ここにいる殆どは大人しい気質の様だ。
幻もそれをわかってか、足元に生えた花を眺めている。
「流離見て、この花初めて見るわ。何の花か分かるかしら?」
「いや、花に興味がないから分からないな」
景色は綺麗だが、空気が異質だ。
空気中に混じって、何か妙なエネルギーじみた何かが漂っている。
(別の星……では無さそうだ。世界そのものが違うというべきか)
「それにしても、お前を妙なことに巻き込んでしまった。俺が『反逆』の力を使って、世界そのものへと反逆したばかりに、すまない」
星間旅団と別れてから、別の星を目指した時。俺は能力であらゆる物に反逆することができ、それを星にめがけて使えば別の星へと移動することも出来た。しかしうっかり世界そのものを対象にしてしまい、今に至る。
「謝らないでちょうだい、ミスは誰だってあるわ。それに異世界転移だなんて、面白そうじゃない」
そう話していたその時だった。
―ドスン,ドスン
巨大な何かが、草を踏みつけ、地面を揺らしている。
振り返る先にいたのは、二足歩行の巨大な爬虫類だった。
土色の鱗に歪んだ黒い角、発達した後脚と細い前腕を持つ形状は、ティラノサウルスを彷彿とさせる。
唸り声をあげて、俺と幻を睨んでいる。
「……魔物か」
「手伝いましょうか?」
「必要ない」
刀を抜き、魔物へと構える。
一緒、萎縮している様に見えたが、それを隠すように咆哮を上げている。
(少し殺気を向けただけでビビるか。まずは、小手調べからだな)
赤黒い刀身は血を滲ませ、棘々しさと凶暴さが増す。
その異様な光景に魔物は少し後退するが、もう遅い。血刃が魔物の首へと狙いを定めた。
―ザシュンッ
斬撃は驚くほど簡単に魔物の頭を消し飛んだ。
さながら糸の切れた人形の如く、地に伏せる。
「この程度か」
「さすが流離、強いわね」
「これくらい大したことではない」
魔物だった物に近づく。
試しに触れてみると、僅かに温かい。
心臓も次第に弱っているが、鼓動している。
(間違いない、生き物だ)
魔物は、生き物の死体に魔力が宿って生まれる存在。しかしこの魔物らしきモノは、元から生きている。これが、この世界の原生生物なだけかもしれないが。
「さて、これからどうするか」
「近くに村や街があればいいのだけれど、流石に野宿するには暑すぎるわ」
確かに蒸し暑い。
出来れば人の多い場所は避けたいが、未知の世界で情報収集をしないわけには行かないだろう。
(しかし集落らしき影が見当たらない。さて、どこを目指すべきか)
そう考えていた時だ。
「だ、誰かぁ!!」
草原に人の声が響いた。
「誰か助けを求めているみたい、行きましょう」
「あぁ」
声の方向へと駆ける。
そのには剣を無造作に振るう少女と、ゆっくりと迫っている大蜥蜴がいた。
距離がかなりある、急がなければ。
少年を巻き込まない様に、威力を抑えた斬撃を放つ。大蜥蜴が少女を食らわんとしたその時、斬撃が蜥蜴の首を断ち切る。
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「本当に、ありがとうございます!!」
やや凛々しい声で、少女が何度もそう頭を下げている。いや、声色的に少年か?
白メッシュの青いポニーテールが激しくなびくほどの深いお辞儀だ。太陽を思わせるオレンジ色の瞳はまだ潤んでおり、眼下が赤く腫れている。
よほど怖かったのだろう。
「気にするな、本当にたまたま通りかかっただけだ」
「良かった、助かったみたいね」
後から幻が走ってきた。
「ねぇ君、怪我はないかしら?」
幻が優しく、少年に語りかける。
「だ、大丈夫です。その、流離さんが、助けてくれましたから。その、貴方は?」
「私は幻、流離の仲間よ。貴方の名前は?」
「僕はリト―リト・アベンチュラです」
「リト君ね。この近くに、村や街はあるかしら? 私達、旅の途中で宿を探しているの」
「村ですか……。でしたら僕の村に案内します、ここから近いので」
◉流離
片目が隠れるほど長い黒髪に緋色の目が特徴的な青年。
堅物な雰囲気だが、方向音痴だったりやたらと団子を推していたりと、天然な一面を持つ。
人間だが逸脱した力を持ち合わせており、その起源は過去に由来するらしいが、本人はそれを話したがらない。
〇能力
⦿血
血液を操作することができる。汎用性が高いが、主に斬撃などの攻撃手段として使っている。
⦿反逆
あらゆる事象に反逆することができる。この能力によって2人は別世界へと飛ばされた。
◉幻
長く美しい白髪を携えた少女。
争い事を好まない穏やかな性格であり、面倒見がよく世話焼き。
概念種と呼ばれる、概念そのものを司る上位種族であり、幻は夢を司る。
〇権能
⦿夢
夢を通して他人の過去や記憶を見れたり、夢そのものを具現化させて異空間を作り出すことができる。




