第1話:異界人との邂逅
「く、来るぁ!!」
巨大な蜥蜴が牙を舌舐めずり、ゆっくりと迫ってくる。
「だ、誰かぁ!」
声は大草原に、ただ無情に響くだけだった。
手に伝わる土の感触がやけに冷たく、肌に感じる大気は蒸し暑い。
「ハァ、ハァ、ハァ」
心臓が激しく鼓動し、過呼吸が止まらない。
恐怖で腰が抜けたまま、剣を無造作に振るうが当たらない。
―キュルルル
緑色の大蜥蜴は喉を鳴らし、嘲笑うかの様にゆっくりと迫る。
もう目と鼻の先まで近づかれたその時、飛び掛り、前足で僕の両腕を押さえ込んだ。剣は向こう側、何も出来ない。
「い、嫌だ、嫌だ!」
必死の抵抗も虚しく、大蜥蜴はその牙を見せる。
迫りくる死に、鼓動と過呼吸が酷くなり、反射的に目を瞑る。
その時だった。
―ザザザン!
激しい斬撃が聞こえ目を開けると、大蜥蜴は姿を消していた。代わりに大蜥蜴が居た大地が赤黒く染まっている。
「ハァ…ヒィ…。だ、誰……?」
嗚咽混じりに、僕は言葉を出す。
「おい、大丈夫か?」
いつの間にか、僕の側に青年が立っていた。
片目が隠れるほどの長い黒髪、目は見惚れるほど美しい緋色が特徴的で、東洋の剣を携えている。
「た、助けてくれて、ありがとうございます…!その……貴方は……?」
「俺か? 通りすがりの旅人だ。それより怪我はないか?」
「だ、大丈夫です。その、助けてくれてありがとうございますっ! その、名前は…、?」
青年は刀に付いた血を払い、少し考え込んだ。
「名前は……そうだな、『流離』とでも呼んでくれ」




