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戦国乙女ゲーのお市に転生したので、推しの柴田勝家ルートを現実で攻略します  作者: 一月三日 五郎


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6/10

第6話:推しが逃げる間に、浅井長政ルートが始まりました

家康との密談?の後、勝家様に接触しようとするも、なんだかんだと理由をつけて避けられるお市。


そうこうするうちに次の戦が始まってしまう。


次の相手は六角承禎。


史実でいう観音寺城の戦いである。


この戦いには家康と、あの浅井長政が加わっていた。


お市は織田の勝利と勝家の無事を祈りながらも、不安な気持ちを隠し切れない。


半兵衛を補佐につけたので大丈夫だと自分に言い聞かせるものの、心中は穏やかではなかった。


「戦に関しては私にお任せいただければ万事つつがなく差配させていただきます。

 しかし、お市様には他にやるべきことがあるのではないですかな?」


出立前に顔を見せた半兵衛が、意味深なことを口にした。


「そんなこと言ったって、権六は私が近づくだけで逃げちゃうんだもの。

 どうしろっていうのよ」


「勝家殿は、お市様が眩しすぎるのでしょうな。

 己では釣り合わぬ、と。

 無論、勝家殿がそれに見合う男になろうと励むのも一つの道ではありますが……」


「権六が出世するまで待つのではだめということ?」


「果たしてそんな悠長な策ともいえぬ策でよろしいのか、と言っております」


「でも、他に手なんて……」


「私の役目は戦の補佐をすること。

 色恋の指南は管轄外にて……御免」


人の恋路に爆弾だけ置いて、稀代の軍師は去っていった。


だが、お市は後に知ることになる。


――あの忠告は、想像以上に手遅れ寸前だったのだと。


---


お市の心配をよそに、戦はわずか数日で織田の勝利に終わった。


そして、またも戦勝の宴が開かれる。


(ゲームだとイベント消化で済むけど、現実で延々と宴続きは普通にきつい……。

 負けたら死んじゃうから勝ってほしいのは間違いないんだけど。

 どんちゃん騒ぎより勝家様とどこか静かなところでイチャイチャしたい……。

 もうずっとまともに話せてない)


勝家は半兵衛の補佐もあって見事に戦功を挙げ、信長お兄様から称賛を受けていた。


だが、お市が近づこうとすると、相変わらずそそくさと逃げてしまう。


宴の席でも、お市の席は上座。


勝家の席は、はるか下座。


もはや遠距離恋愛である。


(戦国時代の城、広すぎない?)


そんなお市の憂鬱には、もう一つ原因があった。


「どうされましたか、お市様。心ここにあらずといったご様子。

 某でよければ相談に乗りますぞ」


真摯な声音。


邪心のかけらもない、きらきらした瞳。


今回の戦のMVP――浅井長政だった。


白銀の長髪を後ろでまとめた総髪姿は、どこか勝家を思わせる。


「いえ、なんでもありません。少し場の空気にあてられたようです」


(……勝家様もまだ若いけど、長政様はもっと若いな。

 これ完全に戦国アイドル枠じゃん)


長政は勝家より一回りほど若く、お市とも年齢が近い。


家柄も良く、美男美女。


周囲から見れば、誰もが「お似合い」と思う組み合わせだろう。


「左様ですか。それならば、どこか静かな場所でお休みになられてはいかがかな。

 不肖、この長政が付き添わせていただきます」


「いえいえ、本当に大丈夫ですので、お構いなく」


(けっこうぐいぐい来るな、この人。

 悪い人じゃないんだけど、思い込んだら人の話を聞かないタイプなんだよね。

 その辺が史実の裏切りにつながるのかも)


お市が困っていると、信長が面白そうに口を挟んだ。


「くくっ、遠慮するなお市。

 長政に肩を貸してもらうといい。

 長政は浅井の若き当主。お前の婿として申し分ない。

 どこぞの猪武者よりも、はるかにふさわしい」


信長はわざとらしく笑う。


「どうだ、長政。市を嫁にもらってはくれんか?」


「なっ……兄上、その話は……!」


(勝家様の貢献度、十分すぎるくらい高かったよね!?)


お市の胸がざわつく。


嫌な予感しかしなかった。


「何だお市、その顔は。

 しばらく考えてやると言っただけで、白紙にすると言った覚えはないぞ。


 この長政は今回の戦でも、権六などよりはるかに優れた働きを見せた。

 お前の婿として、俺の義弟としてふさわしい傑物よ」


お市が呆然としていると、長政が静かに口を開いた。


「信長殿、お話はありがたいが、家中の者とも相談せねばなりませぬ。

 その件は、また後日改めて場を設けていただきたく」


長政は縁談を即座に受け入れなかった。


その実直さこそ、信長が彼を気に入っている理由でもあった。


「よかろう。婚姻ともなれば慎重になるのも当然。

 だが、良い返事を期待しているぞ、長政」


「はっ。その際は、浅井の名に恥じぬよう務めさせていただきます」


お市は完全に蚊帳の外だった。


(うん、知ってた。

 戦国時代に『本人の意思を尊重します』とかないよね。

 知ってたけど!)


政略結婚は、本人の意思など関係なく進んでいく。


「お市様。

 見知らぬ男に急に嫁げと言われ、困惑なさるお気持ちはお察しいたします。


 ですが、この長政。

 婚姻した暁には、この身命を賭してお市様をお守りするとお約束します」


「長政様……」


(長政様の忠誠イベント……こんなにあっさり!?

 発生条件ぬるくない!?)


勝家の時は、あんなに苦労した。


丁寧にフラグを積み上げた。


なのに長政ルートは、宴で会話しただけで好感度イベントが進行している気がする。


(史実の強制力、強すぎる……。

 勝家様に手柄を立ててもらって満足してたけど、

 そんなんじゃ全然足りなかったんだ)


二人目の忠誠イベント。


それを前に、お市の心は暗く沈んでいた。


長政の曇りない瞳と誠実な言葉が、逆に胸へ突き刺さる。


そして何より――。


(肝心の勝家様が、いまだに私から逃げ回ってるんですが!?)

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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