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第84話 王命の婚約

王の謁見の間。


高い天井と、冷ややかな光に満たされた空間で――

レンセリオンは玉座の前に片膝をついていた。


父王アウレインの口から告げられた言葉は、

あまりにも唐突だった。


「……婚約、ですか」


思わず顔を上げる。


王は静かに頷いた。


「セレフィアの姫は、“器”の継承者だ。

光の魂を宿し、世界の均衡を担う者――

そなたの“正義の魂”と、最も強く共鳴する存在でもある」


その言葉は重く、広間に響いていく。


「そなたが迷う必要はない。

世界を導く光と、正義を掲げる我らルクヴェルが結ばれる――

これは必然だ」


レンセリオンは、喉が強張るのを感じた。


「ですが……私は、まだセレフィア姫にお会いしたことがなく――」


言い終えるより早く、父王の声がそれを遮る。


「案ずるな。

いずれ姫は、王立学院の講義のためにこちらへ来る。

段取りはすべて整えてある」


(……もう、動かしているのか)


父王の政治の手は、常に速い。


レンセリオンが悩む余地など、

はじめから用意されていない。


拒めば、王族としての誇りを捨てることになる。

だが――胸の奥に、鈍い痛みが残った。


「……王の意に添えるよう、努めます」


絞り出すように告げると、

父王は満足げに頷く。


「よい。

ルクヴェルの“光”は、そなたから始まる。

期待しているぞ……レンセリオン」

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