第79話 光の食卓、宝石のような一皿から
楽団の弦の音が静かに揺れ続ける中、リリナたちは侍女の案内に従い、淡い金の光を帯びた食卓へと歩みを進めた。
席に近づくにつれ――
視界に“光の色”がふわりと広がっていった。
白金の卓布はなめらかに広がり、金縁の皿は、淡い灯りを受けて静かに輝いていた。
そのしつらえのひとつひとつに、光の国の格式と歓迎が表れていた。
(……きれい……こんな食卓、初めて……)
リリナがそっと席に腰を下ろすと、食卓のあちこちで、金の蓋が静かに開かれていった。
澄んだ音が、ひとつ、またひとつと重なる。
その流れに合わせるように、傍らに控えていた給仕が、リリナの前へ深皿を静かに差し出した。
淡い香りが、やわらかく漂う。
金の蓋が、上品な音を立てて開かれた。
その瞬間――
温かな光をまとった澄み汁が姿を現した。
透明に近い琥珀色の汁には、光の粒のような油膜がゆらぎ、中央にはルクヴェル特産の“祝福の香草”が一輪、浮かんでいた。
香りはやさしく、どこか清らかだった。
レヴィアンが、小声で囁く。
「……料理まで、光っているみたいですね……」
その言葉に、場の緊張がわずかにほどけた。
隣にいたエリオンが、周囲に気づかれぬほど小さく微笑む。
その頷きは、まるで「大丈夫です」と告げているようだった。
正面では、レンセリオンが礼儀正しい姿勢のまま、淡く口を開く。
「光の晩餐では、味だけでなく、“美しさ”もまた礼となります」
(……美しさが、礼……)
その言葉を胸の奥で受け止めながら、リリナはそっと匙を手に取った。
澄み汁は驚くほど澄んでいた。
やわらかな温かさが、舌の上に静かに広がっていく。
(……おいしい……)
光の食卓は、ただ豪奢なだけではなかった。
そこには――
他国を迎え入れる、確かな温度があった。




