第78話 光の大広間に並ぶ名と、始まりの一礼
王の挨拶が静かに幕を閉じた、その時。
玉座の脇に控えていた男――
ライゼル・ヴァン・ルクヴェルが、一歩前へ進み出た。
手にした白金のセプターがかすかに光を返し、
儀式の始まりを告げるように、静かに掲げられる。
「陛下。こちらが、本学院の修了を迎えました
四国よりの若き代表にございます」
その一声で、広間に集う視線が一斉にリリナたちへ向けられた。
金の灯りが床に波のように広がり、
四人の代表と、その傍らに立つレンセリオンの影を静かに縁取る。
ライゼルは淡く頷き、静かな笑みを添えて一礼した。
「光の国より、心よりの歓迎を」
最初に一歩進み出たのは、白銀の礼装を纏うユリウスだった。
「セレリオス王国より参りました、ユリウス・ノア・セレリオスです。
本日、このような晴れの場にお招きいただき、光栄に存じます」
完璧な言葉。
完璧な角度の微笑。
その所作は、大広間の誰もが“王家の正統”として納得するものだった。
続いて、落ち着いた足取りでレヴィアンが進み出る。
「テルメナ王国第一王子、レヴィアン・アード・テルメナと申します。
皆さまと学びを共にできたことを誇りに思います」
誠実な声が、金の壁にやわらかく響く。
彼が言葉を発するだけで、不思議と場の空気が穏やいだ。
三人目は、淡銀の礼装に静かな気配を纏ったエリオンだった。
「アクエリシア王国第二王子、エリオン・シルエル・アクエリシア。
陛下の御前に立てたこと、深く感謝いたします」
簡潔で、礼儀正しい言葉。
その瞳は一瞬だけ、リリナへとやわらかく揺れた。
そして――
胸の前でそっと手を重ね、リリナが一歩進み出る。
その瞬間。
まるで大広間の光そのものをまとったかのように、
場の空気がやわらかく揺れた。
「セレフィア王国の代表として参りました、リリナ・エル・セレフィアと申します。
本日は、陛下の御前に立つ機会を頂戴し……誠にありがとうございます」
その声はやさしく、しかし確かな芯を持っていた。
幼さではなく、“気高さ”を感じさせる響き。
深く一礼し、続ける。
「――皆さまとの学びの時間を、胸に灯してまいりました。
この出会いに、心から感謝しております」
会場に、かすかなざわめきが広がる。
若さを感じさせながらも、整えられた言葉。
その自然な気高さに、王妃が静かに微笑んだ。
その空気を受け止めるように、王妃がゆるやかに立ち上がる。
「ようこそ、わたくしたちの城へ。
皆さまの学びと友情が、これからの世界を照らすことでしょう」
そして、ふわりとリリナへ視線を向けた。
「とても素敵なご挨拶でしたわ、リリナ様」
その声は、春の光のようにやわらかい。
緊張でこわばっていたリリナの肩が、そっとほどけた。
やがて、王がゆるやかに手を広げる。
かすかに、金の音色が鳴った。
「それでは――席へ」
同時に、楽団の弦が静かに流れ出す。
上座から下座へ、波紋のように音が広がり、
給仕たちが一斉に動き始めた。
白いクロスの上に並ぶ皿の蓋が、
ひとつ、またひとつと、金の音を響かせながら開かれていく。
晩餐会が、ついに始まった。




