第77話 光の王の声が響く時 ― 晩餐会開宴
広間に流れていた音が、ひとつ、またひとつと静まっていく。
白金の柱が月光のように輝き、
星を象った巨大なシャンデリアが、
静寂の海へ光の粒を落としていた。
そして――
その中心、光の玉座。
ゆるやかに、しかし揺るぎない威厳をまといながら、
ルクヴェル王アウレイン・ヴァル=ルクヴェルが立ち上がる。
その瞬間。
広間全体に、“光が息を潜める”ような静寂が落ちた。
レンセリオンでさえ、わずかに背筋を正す。
侍女も騎士も、高官たちも、動きを止める。
王が一歩、前へ進んだ。
淡い金の灯りが王冠の縁を照らし、
その姿はまるで――秩序そのものが形を持ったかのようだった。
やがて、アウレイン王の声が広間に響く。
「遠く七国より集いし若き光たちよ。
ルクヴェルの名において、心より歓迎する」
その声は深く澄み、
言葉そのものが空気を整えるようだった。
「王立学院における学び、そして本日の修了――
それは、世界に新たな希望が芽吹いた証でもある」
リリナの胸が、かすかに震える。
エリオン、ユリウス、レヴィアンも、自然と姿勢を正した。
王は、まっすぐに四人へ視線を向ける。
「セレリオス、テルメナ、アクエリシア。
そして――セレフィアの姫君」
名は呼ばれない。
だが、“姫君”という一語に込められた温度は、
この場にいる誰もが感じ取っていた。
その視線が、静かにリリナへと落ちる。
それは期待か。
見定めか。
あるいは――未来への布石か。
「遠方よりこの国に学びを求め、
よくぞ光を胸に刻み、今日の日を迎えた」
そして、言葉がわずかに柔らぐ。
「若き皆の歩みは、やがて七国の未来を照らすだろう。
この晩餐会は、その門出を祝福するためのものだ」
王は一度、静かに息を置き――
リリナへだけ、わずかに深い光を向けた。
「セレフィアの光よ。
……その輝き、いずれこの国とも強く結ばれんことを」
その眼差しが、静かにリリナを捉える。
レンセリオンの横顔が、わずかに強張る。
エリオンの胸の奥で、何かが小さく軋んだ。
誰も言葉にはしない。
だが確かに――
未来の予兆が、その場に落ちていた。
アウレイン王は手を広げ、静かに宣言する。
「若き諸君の修了を称え、ここに――晩餐会の開宴を告げる」
その言葉とともに、
光の大広間が再び息を吹き返した。




