第76話 光の王城、その扉が開く時
星灯りの道を進んできた馬車が、ゆっくりと減速していく。
窓の外に姿を現したのは――
光の国の象徴、ルクヴェル王城だった。
雪のような白亜の外壁は夜光石で縁取られ、
塔から塔へと渡る回廊には淡い金の灯りが連なっている。
それはまるで、夜空に浮かぶ一本の光の大河のようだった。
やがて馬車は城門前で静かに止まる。
重厚な扉の前に整列した近衛たちが、同時に槍を掲げて敬礼した。
静かに、しかし圧倒的な“正義の秩序”が場を満たしていく。
御者が扉を開いた。
「――お待ちしておりました」
その声とともに、ひときわ強い光が差し込む。
その中央に立っていたのは――
白金の礼装に身を包んだレンセリオン・レオ・ルクヴェルだった。
普段の軍装とは異なる、王族としての正装。
肩には薄金のマント、胸には王家の紋章が静かに輝いている。
髪は柔らかな光を受け、淡く銀に見えた。
そして――その佇まいだけで、
“次の王”であることが分かるほどの威厳を帯びていた。
レンセリオンは一度、静かに場を見渡す。
それから階段を数段降り、馬車へと歩み寄った。
リリナたちを迎えるために。
堂々とした姿勢のまま、胸へ手を添え、深く一礼する。
「ルクヴェル王家を代表し、皆さまを歓迎いたします」
エリオンたちの視線がわずかに揺れた。
ユリウスはすぐに外交官の顔へと切り替え礼を返し、
レヴィアンは息を呑んだまま、その場に立ち尽くしている。
そして――
レンセリオンの、内に金の光を宿した琥珀の瞳が、ふとリリナへ向いた。
その瞬間。
王城の荘厳な空気の中で、
リリナだけが、ふわりと春の光に包まれたように感じられた。
レンセリオンは一歩近づき、
手袋越しにそっと手を差し出す。
「リリナ姫様……城へようこそ」
夜光石の灯りが、二人の影を長く伸ばしていた。
馬車を降りた瞬間に感じた王城の荘厳さは、
そのまま真っ直ぐ、晩餐会の大広間へと続いていく。
レンセリオンの先導で、大扉が開かれた。
まばゆい光が溢れ出す。
白金の柱。
星々を象ったシャンデリア。
その輝きが、空間全体を満たしていた。
そして――その最奥。
光の玉座に座す男。
アウレイン・ヴァル=ルクヴェル国王。
隣には、熾天の輝きを纏う王妃セラフィーネ。
その背後には、学院副院長シリウス。
さらに、レンセリオンの叔父ライゼルの姿もあった。
光の国の象徴たちが、静かに並ぶ。
まるで――未来を測る秤のように。




